和田誠氏が「話の特集」に1970年から1977年まで断続的に掲載した、「雪国」の偽作シリーズがある(「倫敦巴里」所収)。川端康成の「雪国」の冒頭部分を、当時の人気作家の文体を模して描くという試みであった。
この遊びは、本好きの心をいたく刺戟した。あれから20年以上が過ぎ、新しい作家が続々と世に出ている。今なら、今の作家で「雪国」が書けるのではないか。そう思ったのが、この企画の出発点である。
尚、文責は無論、大矢にある。これを読まれて決して嬉しくはない作家及びファンもいるとは思うが、それだけ人気があるのだということでご容赦下さい。
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国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
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雪国よネェ……。
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ガタン、と音がした。汽車が信号所に止まったのである。外は白い。島村の向かい側に座っていた一人の女が、立ち上がった。禿に切り揃えた髪。暗黒の眸に吸い込まれそうだ。
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上越新幹線は、長いトンネルを抜けて群馬から新潟へ入った。新幹線の切符は自販機で買ったのだが、最近導入されたこのマシン、なかなかの優れものだと島村は思っている。
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二月五日、午後九時四十八分。
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はふ。
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国境の長いトンネルを抜けると、そこはもう雪国なのである。
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