お厚いのがお好き?


堕天使殺人事件・二階堂黎人(他)(角川書店)

 二階堂黎人→柴田よしき→北森鴻→篠田真由美→村瀬継弥→歌野晶午→西澤保彦→小森健太朗→谺健二→愛川晶→芦辺拓、という順で書かれたリレー小説である。いやぁ、面白い試みだあ。こういうの、ワクワクするぞ。
 まずは二階堂黎人氏が、北海道を舞台に起こった猟奇殺人事件をぶちあげる。よくよく読めば、かなり後の人のことを考えて作ってるのがわかるのよね。このあたりは伏線に使えるな、この人を後々こう利用できないかな、などと、読みながら自分で展開を考えてしまうほど。つまりそれだけ《出題編》は懐が深いものになっている。
 2番手の柴田よしき氏から4番手の篠田真由美氏あたりまでは、伏線(になりそうなもの)を張る作業、同時に手がかり(になりそうなもの)もばらまき、6番手の歌野氏あたりから手がかりを巻くのと回収するのと両方が見られる。すごいなぁ、さすがに考えてるなぁ。こういうの、無責任に後のこと考えずに書けば何とでもできそうだけど、さすがにそうはなってない。おまけに自分のシリーズキャラを登場させるひとも多く、そうなると後の人は他人のキャラを使って描くわけで、このあたりも面白い。
 最後の謎解きは芦辺拓氏で、そこは彼らしく纏めてるんだけど、どっちかってーと謎解きの醍醐味は最後から二番目の愛川晶氏のパートで堪能してしまった。そうか、なるほどなるほど、おおおお、美しい!……てなふうに、マジで感心したわ。他人が作ったネタを、よくここまで……ふぅ。
 こうしてみると、自分のフィールドに話を持っていくひとと、前の人のを継承して書く人の二通りに分かれるのがよく分かる。自分のフィールドに囲い込み過ぎると、あとで繋げようがないってのも分かるし(笑)。これ、遊びの要素が強いように見えるけど、これほどはっきりと作家の力量を比較されるものもないぞ。読者にとっては楽しい企画だけど、作家にとっては結構怖い企画になり得るのではないか。
 尚、「私はこう予想した」のコーナーでは、西澤氏の言葉で爆笑できます(笑)。 (00.6.25)      

依頼人は死んだ・若竹七海(文藝春秋)

 「プレゼント」の続編という形をとっており、一部「プレゼント」のネタに関わる記述もあるので、まずは「プレゼント」を読んでから、こちらを読まれることをお薦めします。形としては連作短編だけど、全編を通してのテーマもあるし登場人物同士の関係も変わるので、拾い読みするよりは順番に読んだ方がいいかも。総じて《悪意》を描く若竹七海ならではの佳作が多い。では個別に。
【濃紺の悪魔】これだけ読むと、ものすごく中途半端でものすごく不完全燃焼なのよね。でも、雑誌発表時は単体で掲載されてるんだよなぁ……うーむ。
【詩人の死】この真相はかなり悲しいなあ。「詩人」が死んでから、後追いで事実を見つけるというのがかなり悲しい。
【たぶん、暑かったから】手がかりが一つに結びつく過程にワクワクし、最後の最後でどきりとさせられる。若竹マジック。
【鉄格子の女】ワンアイディアものなんだけど、そこへたどり着くまでの雰囲気作りが抜群。
【アヴェ・マリア】なんか釈然としない話だなぁ──と思って読んでたら……そう来たか!
【依頼人は死んだ】最後に明かされる真相に拍手。だけど謎解きより、カエデのキャラが最高!
【女探偵の夏休み】わぁ、これは気付かなかったぞ。やられたあ。この手のも書くんだあ。
【わたしの調査に手加減はない】イチオシ! 爽やかさのベールをちらりとめくって、ふか〜いところにある人間の嫌な面を強烈に見せつけるという、若竹七海ならではの作品。これはいいっ!
【都合のいい地獄】最後の一文で、鳥肌が立った。ここここ、怖い〜〜! でも、いきなりホラーなの? それともあたしが気付いてないだけで、これで落着してるの? なんかスッキリしないんだけど……。 (00.6.28)      

美食探偵・火坂雅志(講談社)

 明治時代、「食道楽」という小説を大ヒットさせ、一大ブームを巻き起こした作家・中村弦斎。彼のもうひとつの特技は、なんと探偵だった! 土佐の後藤象二郎伯爵の姪・多嘉子とともに、人間消失やら誘拐やらの事件に挑む。
 山県有朋とか大隈重信とか伊藤博文とかのお歴々も登場し、その前での謎解き披露。時代は明治だけど、謎に対するアプローチは今風の本格モノに近い。でも贅沢を言わせて貰えれば、これがあの中村弦斎である必然性が全然ないのよね。一応、料理の話やシーンは出てくるんだけど、謎や謎解きと食い道楽は全然関係ない。ここはやはり、食い道楽あるいは料理をヒントに謎を解く、ってくらいのリンクを張って欲しかったなぁ(笑)。でないと、せっかくのキャラがもったいないもの。では個別に。
【海から来た女】海辺に出るという外国人の女の幽霊。その正体を村井弦斎は見極めようとするが……論理より体当たりの推理。しかしこの犯人は、もうちょっと伏線が欲しかったなあ。
【薄荷屋敷】薬を飲んで死んだ被害者。しかし、いつ毒が入れられたのか? 典型的且つ使い古されたネタではあるけれど、きれいにまとめてる。
【消えた大隈】大隈重信が温室から忽然と消え失せた! しかし事件はそれだけでは終わらず……ただ、政党や内閣の転覆を謀って大隈公を誘拐するようなヤツが、この程度で逃げるかなぁと思うのだけど……。
【冬の鶉】永倉新八の甥がコックだってのはホントなんだろうか(笑)。基本的な「消失」もの。トリックとしてはよくあるけど、消失しなくてはならなかった理由が面白い。
【滄浪閣異聞】滄浪閣ってのは伊藤博文の別荘の名前。そこで、伊藤公お手つきの芸妓が殺された。その犯人も分からぬうちに、次の事件が──悲しい物語。でも伊藤公ってホントに、あまり品のある人じゃなかったらしいし、こういうことを言ってくれる側近がホントにいればよかったのになあ。
(00.6.29)      

第4の神話・篠田節子(角川書店)

 バブルの頃、オシャレでハイソな不倫を描いた小説を多作し、人気絶頂の折りに病死した女流作家・夏木柚香。ライターの小山田万智子は、夏木柚香をテーマにしたノンフィクションの執筆依頼を受ける。自分自身もハイソでオシャレだった夏木柚香とは、どんな人物だったのか──調べていくうちに、夏木柚香像は二転三転する。
 さすがの筆力でぐいぐい読ませる。ボーイフレンド達とともに派手で鮮やかな毎日を送りながらも、家族に恵まれ完璧な主婦だったとされる夏木柚香と、三十代後半になって全く目のでない独身ライターの万智子。ともに書くことを仕事にしているとは言え、まったく自分とはかけ離れた存在──それもやっかみ半分で、決していい作家とは認めたくない存在の持ち上げ記事を書かされる万智子の、歯がみするような心情がよく伝わってくる。
 しかし、夏木柚香を知る様々な人から話を聞く内に、彼女の本当の姿をだんだん掴み始める万智子。普通のミステリなら「バブル作家・夏木柚香の意外な素顔」という風に持っていくのだろうが、これはむしろ、貧乏ライター万智子の変化の方を見ていくと面白い。記事の対象にいつのまにか飲み込まれ、巻き込まれていく万智子。そして、彼女は自分の生き方すら変えようとする。
 他人に影響を与えるとは、他人から影響されるとは、どういうことなのだろう。それも相手は既に故人である。会ったこともない故人を調べるうちに、万智子が手にした数々の経験が、あきらかに万智子を変えてゆく。無論、生きている人々との交流も新しく生まれるのだが、そういう人と人との関わりが一人の人間を変えていく様がつぶさに描かれている。
 帯には「人の心が一番ミステリ」とある。これは素顔が二転三転する夏木柚香のことを指して言っているのだろうけれど、あたしには万智子のことを言っているように思えるのである。 (00.7.1)      

牛乳配達退場・シャーロット・マクラウド著・高田恵子訳(創元推理文庫)

 シャンディ教授シリーズ10作目にして最新作。シャンディ夫妻の隣に住むのは、《牛乳配達》というあだ名のジム・フェルドスター教授と、その妻で町の嫌われ者であるミレール。ある日教授はサークルの会合に出かけると言ったまま、姿を消してしまった。悪妻に嫌気がさしての家出か、はたまた事故か事件か?
 ミレールの方はシリーズ第1作の
「にぎやかな眠り」から登場していて、その「イヤな奴ぶり」を思う存分発揮していた、いわばレギュラーなので、「ああ、あの人ね」と思い出す読者も多いだろう。で、今回も思いきりイヤな奴である。マクラウドの話ってのは、善玉悪玉がだんだんハッキリしてきて、分かりやすすぎる。今回なんか過去の例を考えながら登場人物一覧を見るだけで、「犯人はコイツかコイツのどっちか。もしくは共犯」と断言できるくらいだ──と思ってたら、おおお、そう来たか。それは絶対にやらないだろうと思っていただけに、ちょっとビックリ。
 マクラウドのこのシリーズってのは、総じて「終わりよければ全てよし」的な要素が強く、おとぎ話っつーか、大人向けの童話のような雰囲気がある。でも、登場人物達が実に生き生きしてるから、読んでて楽しいし読後感がいいんだよね。今回の白眉は何と言ってもカトリオーナ・マクボーグルだ。「風見大追跡」に登場した作家のカトリオーナがとても大事な役回りをするのだけれど、そのきっかけが彼女の方向音痴に起因するのである。あたし自身がかなりの方向音痴なので、彼女の描写はもう、涙と笑いなしでは読めないわ(笑)。  (00.7.5)   

凶笑面〜蓮丈那智フィールドファイルI・北森鴻(新潮社)

 大学で民俗学を教える美貌の教授・蓮丈那智。彼女の研究室にいる内藤三國をワトソン役に、蓮丈那智がフィールドワークの最中に巻き込まれたミステリを解く連作短編集。実は「謎解きやトリック」はメチャクチャ本格である。それなのにパズラーという感じはあまりしない。それは、民俗学という素材を利用して、筆者独特の雰囲気を作り上げることにちゃんと成功しているからに他ならない、
【鬼封会】小さい手がかりから事実をひっくり返す醍醐味が味わえる。それとは別に、大分の「修正鬼会」に言及してくれたのがメチャクチャ嬉しかった(笑)。あれ、あたしの生まれ育った市でやってますのよ。
【凶笑面】このトリック──というか、仕掛けも好きだなぁ。ものすごくシンプルなのに、気付かないってあたりが。この人の文章の巧さは伏線を伏線として見せないのに、それがきちんと機能するってところだ。
【不帰屋】これ、イチオシ! 密室トリックなんだけども、巧いなー。これも伏線が伏線としてキチンと機能してる。密室トリックだけではなく、人の心の綾や歴史というものにも心が震える。特に、その歴史的背景は悲しい。
【双死神】こ、これは──わははは、ファンへのボーナストラック的存在か。だってこのビアバーはどう考えたって
あれの店だし、《狐》を名乗る謎の女ってのはあれに登場した彼女だもの。これは北森ファンにはタマラナイぜっ!
【邪宗仏】これは──全体の設定にはちょっと無理があるかな。でも、犯人を特定する手がかりのあたりは《本格の基本》という感じで、けっこう好きな手法。
(00.7.7)      

茨姫はたたかう・近藤史恵(祥伝社ノンポシェット)

 「カナリヤは眠れない」に続く、癒し系整体師探偵(ってな言い方でホントにいいのか?)シリーズ第2弾。主役の女性の章と、雑誌編集者の小松崎の章が交互に語られるのも、前回と同じ。
 正直言って、序盤はかなり読むのが辛かったのよね。いや、作品のせいじゃなくて、単にあたしの好悪の問題なんだけど。なんとなれば、今回の主人公である梨花子ってのが、どうにもあたしの嫌いなタイプで(笑)。なんかもう、イライラしてしまうのだ。彼女の新しい隣人となった女性二人もかなりエキセントリックで、特に早苗の方なんかは、いかに小説のキャラとは言え、まだ全然知り合ってない、ほぼ初対面に近い相手で、特に相手が何を言ったわけでもないのにいきなり「あんたみたいなタイプ、大嫌い」なんて言うか普通。35年生きてきて、そんな人には会ったことないぞあたしは(笑)。まぁ絶対にいないとは言えないし、これは小説のキャラだし、おまけに早苗のキャラは結構好きなのでいいのだ(いいんなら文句言うなって)。
 問題は梨花子の方なのである。どうにもイライラする。ところが、どこが嫌いなのか、自分でよく分からないのだ。なんか、嫌い。こういう人、けっこう居そうだけど、実際に近くにいるとマジでイライラしそう──そんな気がしてならなかった。でも、早苗や礼子のように個性は強くないし、普通のお嬢さんの筈だし、どうしてあたしはイライラしてるんだ? 例えば早苗に対して抱いた違和感は、出所がはっきり分かっている違和感なのだ。だから自分で納得できるし、物語が進むに従って消化でき、半ばあたりでは結構好きになった。ところが梨花子に対するイライラは増すばかり。
 一人称主人公に感情移入できない、一人称主人公が好きになれない、ってのは結構辛い。嫌いな人の視点でなんか、話を見たくないもの。ところが。ところが、である。後半に入って、物語が急展開した途端に、自分のイライラの原因が分かったのである。むしろ、その「イライラ」が物語のテーマに深く関わっていたのだ。ああ、だからあたしは梨花子を好きになれなかったんだ、それでよかったんだ──なんだか、整体師探偵によって、あたしのモヤモヤまで治療された気分である。まさしく、癒し系ミステリだ。 (00.7.7)      

名古屋学・岩中祥史(新潮文庫)

 文庫化を機に、最新情報をふんだんに取り入れてパワーアップした名古屋学。似たような主旨の本は多いけれど、これはその中でも群を抜いてる。体系だった論旨と、贔屓の引き倒しにならない程度の冷静さ、でも、そこかしこに筆者の名古屋気質が出てたりして(笑)。こういうのは身内での自虐的笑い話に終始する傾向があるんだけど、これは他県人にお薦めできる本である。
 「社会学」の項では、中日ドラゴンズはアンチ東京の象徴であることを論証。「歴史・地理学」の項では、文化不毛の地と言われても気にしない理由が語られる。「経済学」では、よく言われる「名古屋の嫁入り」について、非常に納得できる由来とケーススタディが紹介される。それに代表される名古屋気質が、「夜が早い繁華街」「過剰なモーニングサービス」へと繋がるわけだ。初めて、それらの「名古屋の特徴」が一本の糸で繋がった機がする。「経営学」ではバブル倒産が抽んでて少なかったワケを明かす。しかし、名古屋圏にこれだけ《無借金企業》が多いとは知らなかったぞ。銀行融資なんて当たり前のことかと思ってたのに。おお、トヨタもカゴメもそうなんですか。
 もちろん、方言を紹介した「言語学」、きしめんや味噌カツを説明した「栄養学」の項もある。巻末対談の相手は名古屋が産んだ大女優・竹下景子だ。上京した時に「東京のは地下街だにゃあて、地下道だがね」と言い捨てたという伝説を持つ、竹下景子なのだ!
 これを読んで一番びっくりしたのは、信長・秀吉・家康の三英傑だけでなく、有名どころの大名はほとんど尾張・三河の出だったってこと。加賀百万国の前田利家は中川区荒子だし(いや、当時は中川区じゃなかったろうけどさ)、妻の方が有名になってしまった山内一豊は中島郡木曽川、福島正則や蜂須賀小六は海部郡だし、加藤清正は中村区中村(ひえー、熊本じゃなかったのか)、おまけに柴田勝家なんてウチから歩いていける名東区猪高! うわぁ、あたしって柴田勝家と同じ区民だったのかあ(だから当時は名東区はないって)。幕末283藩のうち、152藩の藩主が尾張・三河出身者なんだってさ。
 もうひとつびっくりしたのは──大沢在昌が名古屋人だったってことだな(笑)。 (00.7.8)  

予知夢・東野圭吾(文藝春秋)

 「探偵ガリレオ」シリーズ第2弾。前作では理系知識が謎解きのポイントになっていたため、どうも理解しづらい(ええ、あたしがバカなんです)箇所が多々あったのだが、今回はそういうものなく、非常にすんなり楽しめる。総じて、由緒正しき(?)本格モノの王道トリックを巧く利用した(というか逆手にとったというか)処理の仕方で、とても新鮮に楽しめた。久しぶりに《東野圭吾の本格》を読めて、すごく嬉しいぞ。
【夢想る〜ゆめみる〜】これ好きっ! 何故、彼女が生まれる前から、彼女の名前を知っていたのかという不可思議興味に、とても合理的な解決が用意されてて、なおかつ読者を引きつけるだけの物語の雰囲気作りに成功している。佳作。
【霊視る〜みえる〜】これぞまさに、本格モノにはよくある基本的なトリックを巧く逆手にとったな、という物語。犯人はちょっと安易に思えなくもないけど、大きな瑕疵にはならない。
【騒霊ぐ〜さわぐ〜】へーっ、こんなことがあるんだあ。ビックリ。古い木造家屋だと、湿気で……ってのは聞いたことがあるけど。巻き込まれた被害者は可哀想だが、ラストで救われるので読後感がいい。
【絞殺る〜しめる〜】アリバイの使い方に脱帽。そうか、こういう方法があるのか。アリバイトリックとして、かなり優れた一編。
【予知る〜しる〜】これは何と言っても、ラストシーンでしょう! 人によっては《作りすぎ》と思うかもしれないが、このラストはものすごく引き締まる。
(00.7.11)      

続・垂里冴子のお見合いと推理・山口雅也(講談社)

 山口雅也の作品と言えば、推理作家協会賞を受賞した「日本殺人事件」とか、「このミステリーがすごい!」で1位をとった「生ける屍の死」とか、或いは人気シリーズのキッド・ピストルズだとかが真っ先に挙げられることが多いけれど、実はあたしは、この垂里冴子シリーズが一番好きなのである。つい最近ドラマ化されたせいで、京一は山崎裕太、空美は大河内ななこ、それにお父さんは──名前は知らないんだけど、大河ドラマの「葵三代」で大久保忠隣を演じた俳優さん(そんな説明で分かるかいっ)の顔がそれぞれ浮かんできて、すごく楽しめた。パターンが決まってるってのは、読者としては安心して読めるよね。
【湯煙のごとき事件】おお、なんか東野圭吾「探偵ガリレオ」シリーズに出てきそうな話(笑)。そうか、「探偵ガリレオ」シリーズをコメディにすると、こうなるのか。
【薫は香を以て】これ、実際にそういう効果があるのかどうか分からないから、ちょっと腑に落ちない部分が残る。話の展開としては好きなんだけど。
【動く七福神】おお、イカニモって感じに不可思議興味だ。しかし、「猫の手」のママは気付きそうな気がするなあ。ってゆーか、勉強しろよ京一(笑)。
【靴男と象の靴】エレファント・シューに隠された意味ってのが、かなり感動。こういうの好きだあ。それにしても、合子伯母が持って来る話ってのは、こんなのばかりだって分かってるんだから、そろそろ他の見合い手段を考えたらどうだ?(笑)
(00.7.12)      

白銀荘の殺人鬼・彩胡ジュン(カッパノベルズ)

 著者当てが世間を賑わせているが、その話は日記でするとして(真面目には考えてませんよ)、ここでは物語の感想を。
 ペンション村のはずれにある白銀荘。そこへ集まった人々の中に、立脇順一という男がいた。彼は自分ではそうと知らないが多重人格者。彼の中には《美奈子》という、もうひとつの人格があった。《美奈子》は、このペンション行きを利用して、ある計画をたてていた──。
 序盤から中盤にかけては、ぐいぐい引き込まれた。雪の山荘、《叙述トリックですよ》と公言してるかのようなスジ立て、オマケに昨今流行の多重人格、サイコキラー。手垢の付いた手法なのだが、しかし読ませる。これは設定の勝利だ。犯人が推理するという物語は先例が数多くあるが、それが多重人格者の中のひとつの人格というのは実に巧いところを見つけたものである。
 《美奈子》の視点で物語が語られるために、多重人格とは言え、妙な混乱はない。おまけに人格同士のぶつかりあい、せめぎ合いは、謎解きとは別にとても魅力的なテーマになっている。自分は一個の人間であるという意識を強く持つ《人格》。その《人格》が、体を独占したいと思った時にどんな行動に出るか。何を思うか。そしてその結果はどうなるのか。大量殺人・人格間の戦いという二つの柱を得て、この物語は充分な求心力を持った。
 しかし──解決編(「事後」以降)でいきなり失速した感は否めない。複数の人格を持ったまま順一が死んでしまい、語り手が変わるという手法は、先に述べた二つの柱のうち、一つを未解決のまま放っておくことに他ならない。一つはキレイに(実にキレイに)解決されるのだけれど、もう一つがなおざりになるということは、そこに惹かれそこに興味の中心を於いて読んでいた側としては、何だか宙ぶらりんな読後感しか残らないのだ。無論、そんなところに興味の中心を於いたのはあたしの勝手で、著者に「そんなことを書きたかったワケじゃないから」と言われたらそれまでなのだが。
 それと──最後の最後、ラストの文章に傍点がふってあるが、あれはどういう意味なのだろう? 殺人鬼を他の人物だと読み違えた人が、実はいたんですよ、ふっふっふと言いたいだけなのかな。そんな筈はないよね? そんな単純なオチじゃあるまい? 何か、あたしは読み損なってるんだろうなあ。あの一文の意味、誰か教えて下さい。あ、それと《晴代》は自分が手を下したわけでもない殺人事件を、なぜあのような曖昧なメモに残したのか? 《美奈子》の行動の最中に、無理に《晴代》が交替した理由は何なのか? それも分からないのだ。気になって仕方ないぞ。お願いだから誰か教えて(;_;)。 (00.7.15)      


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