朝新聞に連載されていた、短いエッセイをまとめたもの。相変わらず笑えるのだけれど、この著者のエッセイの特徴である「日常の、些細なことにまずツッコむ」→「それを極端な例に拡大することにより、何が《変》なのかを強調する」という手法が、ひとつのパターンとして確立されたと言える。
マガジンハウスから出た「百年目の青空」を、文庫化にあたり改題したもの。
あなたのための小さな物語〜一発逆転ミステリー・赤木かん子(編)(ポプラ社)
「あなたのための小さな物語」シリーズ第2期。第1期からは、「安楽椅子の探偵たち」と「暗号と名探偵」の2冊がミステリ系ってことで紹介したのだけれど、今回も2冊ラインナップされてます。そのうちの一つが、この《一発逆転》の妙を集めたもの。謎解きミステリではなく、ヒネリの聞いたサプライズストーリーという感じのものが集められている。
こちらも「あなたのための小さな物語」シリーズの新刊。カーにフットレルという、人間消失の定番中の定番が紹介されてる。いいなあ、こういうベーシックなアンソロジーって。──と思ってたら、もう一作品入ってて、これが驚いてしまった。全然ベーシックじゃないぞ(笑)。
あなたのための小さな物語〜日本語ということば・赤木かん子(編)(ポプラ社)
これも「あなたのための小さな物語」の1冊なのだけれど、ちょっと趣向を変えて。「日本語」についてのエッセイ等を集めたもの。対象年齢をどのあたりに設定してるかしらないけれど、ちょっとレベルが高いかも。既に言葉に対して興味を持っている子にはとっても面白いと思うけど、興味のない子を引き込む類の本ではなさそう。逆に、オトナが読んだ方が「へえっ」と思わされるものが多い。執筆陣がまた豪華なのよね。
VS・矢口敦子(幻冬舎)
病気のため子供を産めなくなった木綿子は、アメリカに住んでいた二十代の頃に、日本人の不妊夫婦のために卵子を提供したことを思い出した。自分の血を受けた子供がどこかにいる筈だ、もう高校生にはなっている筈だ──しかし、探し出した息子は、一家4人惨殺事件の犯人として追われ、逃亡中に自殺していた。自分の息子が犯人の筈はないと、調査を開始する木綿子だったが──。
首断ち六地蔵・霞流一(カッパノベルス)
寺にある六地蔵の首が盗まれるという事件が起きた。その後、各地で起きる殺人事件の現場に、その首がひとつずつ置かれるようになる。カルト教団が関わっている可能性もあり、寺社捜査局(JSK)の魚間は僧侶・風峰と共に捜査に当たるが──。
チョーモンイン・シリーズももう6冊め。これまではどちらかというと、キャラ先行の薄味パズラーというイメージだったのだけれど、冊数を重ねるにつれて、どんどん良くなってくるなあ、このシリーズは。法華の太鼓のようなシリーズである。でもって、ついに6冊目にしてお薦めマークだあ。
赤緑黒白・森博嗣(講談社ノベルス)
殺害後、全身を真赤にペイントされた死体が発見された。犯人は何のために、死体にこんな装飾を施したのか? 警察が手詰まりになる中、保呂草のところには、被害者の婚約者を名乗る女性がやって来る。「彼を殺した犯人を知っている、証拠をあげて欲しい」と──。Vシリーズ最終作。
ナウシカの「新聞広告」って見たことありますか。〜ジブリの新聞広告18年史・スタジオジブリ(編)(スタジオジブリ)
スタジオジブリが手がけてきた映画の新聞広告を集め、その広告を作るにあたっての裏話を対談形式で収録した企画本。「風の谷のナウシカ」から「猫の恩返し/ギブリーズ」まで。
青空の方法・宮沢章夫(朝日新聞社)
例えば【元副社長】の項では、証券会社のリベート事件の報道で「元副社長」がやたらと出てくるが、実名がまったく出ない、これはどうしてだ、というネタを扱っているのだが、その理由として著者はまず「副社長は子供だった」というのを挙げる。これだけでも読者は「んなわきゃねーだろ」とつっこんでしまうが、著者はそこに止まらず「元副社長はサルだった」というところまで想像を発展させる。そしてトドメに「元副社長というのが名前だった」という「アホか」という例にまで到達させるのである。
また、【いつの間にかこんな位置まで】の項では、「コンピューター」と「コンピュータ」の表記の違いに触れる。後者で原稿を書いていたら、朝日新聞から「ターと伸ばしてくれ」と言われたのだという。正直、伸ばすのは少々気持ち悪いとは思ったものの、許容範囲内の訂正なので、それには素直に従った──と、ここで終われば普通のエッセイである。ところが著者は、こんなところでは終わらない。「伸ばせというなら伸ばすが、朝日新聞が《コンピューターアーアー》と伸ばしだしたらどうしよう」とか、「それは百歩譲って許したとしても《コンピュ》と短縮されたら許せるか」とかまで話は発展するのだ。「んなこたぁ、ねえよ!」とツッコミながらも、《コンピュ》という響きについつい噴き出してしまう。で、もちろんここでも終わらず、更にオチに向かって驀進する宮沢章夫である。
とにかく笑える。1編が2ページ半と短いので、どこでも気軽にサクサク読める。とは言っても、電車の中で読むのはやめたほうがいいよ。笑いを堪えるのが辛いから。
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よくわからないねじ・宮沢章夫(新潮文庫)
お馴染みのオトボケエッセイ。いやもう、突っ走ってます宮沢節が。「青空の方法」で紹介したような、《ツッコミ拡大再生産》型のエッセイが、今回も満載だ。思わずニヤニヤしてしまう。
あたしが一番好きなのは【だめに向かって】の項だ。著者は「だめ人間」に憧れているが、「真のだめ人間」とは如何なるモノなのか、という考察である。当然、例に出されるのは太宰治だが、太宰そのものを論じるのではなく、三島由紀夫の太宰観を引用するのである。とにかく三島ってのが、太宰を嫌っていたらしいのね。いやぁ、分かるなあ。「楯の会」なんて作って、鍛錬でマッチョな体を作り上げた三島にしてみれば、そりゃ太宰を見てると腹が立ったろうと思うよ。「第一私はこの人の顔が嫌いだ」と一刀両断である。うわははは、子供か、三島由紀夫。そこから芥川龍之介の「だめ人間」ぶりに話は移り、坂口安吾に到達する。そうだよなあ、坂口安吾も「だめ」そうだよなあ(笑)。坂口安吾の「だめ」ぶりを証明するために著者が引用した坂口の文章がまたすごい。
「僕はもう治っている」
うわははははーーー、ダメそう。もう、これだけでダメそう。自分で治ってるなんて言うヤツに限って治ってないのだ、と著者はツッコむのである。太宰だの三島だのという名前を読んで「そういうブンガクには興味ないもん」と思った人もいると思うが、逆にそういう人こそ楽しめるんじゃないかな。太宰の本なんて、読んでみたくなるくらいだし。
その他、市井のつっこみどころにも容赦がない。今回の白眉は【行けるようになりたい】の項で紹介された、高村初音さんのあまりにもすごい知識と、【ペアレンツ】の項で紹介された、ユースホステルの管理人さんの趣味のくだり。この2項は、笑いすぎにご注意を。
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【開いた窓】サキ:療養のために田舎へやってきた主人公。近所の夫人の家を訊ねたところ……。一発逆転のお手本のような物語。切れ味の良さは一級品。ぞくっとさせてくれる手腕も見事。
【ヒッチ=ハイカー】ロアルド・ダール:新車でドライブの最中、ヒッチハイクしていた男を乗せた。しかし、この男の仕事は──。メジャーな話だけど、やはり巧い。読後感のいい、爽やかな逆転劇。
【アミオン神父の大穴】ヘンリィ・スレッサー:お金に困った教会の牧師がとった手段とは──コミカルで、でもハラハラさせてくれて、最後には快哉。これも後味がいい。
【ミス・オシスター・ブラウンの犯罪】ピーター・ラヴセイ:町内では有名な双子の姉妹、しかしその片割れを最近見かけなくて……。盛り上げて盛り上げてスットーンとひっくり返す様が楽しい。細かい伏線が最後に拾われる快感もある。おまけにラストは、ちょっとばかりゾクリ。
【雲見番拝命】泡坂妻夫:うわ、こんなところに亜智一郎が出ますか(笑)。
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あなたのための小さな物語〜人間消失ミステリー・赤木かん子(編)(ポプラ社)
【B13号船室】ディクスン・カー:新婚旅行の船に乗り込んだアン。ところが、新郎の姿が消えて──。戯曲形式で書かれたカーの短編。人間消失モノの王道とも言えるような仕掛けだが、今読んでも「ああっ」と言わせてくれる。
【13号独房の問題】ジャック・フットレル:13が並んだのは偶然かな? 《思考機械》ことドゥーゼン教授は「思考を駆使すれば不可能なことはない」という自説を証明するため、見張りの厳しい刑務所から脱走してみせると友人に約束した。刑務所の協力を得て収監された《思考機械》だが、1週間の期限内に、果たして堅牢な刑務所から出ることができるのか?──非常に有名な物語だけど、やはり良く出来てる。定番、或いは王道というものの強さ。
【雷電の惑星】寺沢武一:きゃあっ、「コブラ」よ「コブラ」! いや、マンガが入ったからと言って驚くには当たらない。この編者は、こういうことをする人なんです。この「あなたのための小さな物語」のシリーズの第1期に「解放」と題された1冊があるんだけど、これには川原泉の「森には真理が落ちている」が入ってるくらいだもの。他にも、手塚治虫や山岸涼子、坂田靖子らのマンガも他の本に入ってるし。ただ、驚いたのは、「コブラ」のこの作品を「人間消失ミステリー」に入れますかってこと。そりゃ、ある意味では人間消失だけどさあ……しかし、ラストのサプライズは文句無し。
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【私の口の中のアイウエオ】橋本治:話し言葉を表記するということについて。橋本治らしい、コミカルで味わいのある文章が楽しい。「ら抜き言葉」について、「変化は当然だと思うし否定しないが、下品」という意見には我が意を得た思い。
【ウナギ文の研究】丸谷才一:主語と述語があるのが日本語だが、例えば料理屋で注文するときの「僕はウナギだ」というのは、主語と述語はどうなってるの? 言語学者が長年議論してきたテーマを、シンプルに解説。旧仮名遣いなのも、子供には新鮮かも。
【「元祖ゴキブリラーメン」考】千野栄一:「元祖ゴキブリラーメン」という商品名が存在しない理由を言語学的に証明しようというもの。「イメージが悪い、不潔」だけじゃ、ダメなのよ。
【「あまえる」ということについて】中村咲紀:これは読書感想文コンクールで優秀賞をとった小学校2年生のオンナノコの作文。「セロひきのゴーシュ」の感想文なんだけど、いやもう、絶句するよ! あたしなんかこれを読んで「そうか、セロひきのゴーシュってこういうテーマだったのか」と教えられたもの。正直、小学校2年でこんなこまっしゃくれたことを(オトナの喜びそうなことを)書いてくるってのも癪に触るし(笑)、これ絶対にオトナが手を入れてるだろうと勘ぐりたくもなるんだが、そういうあたりはぐっと飲み込んで、虚心坦懐に読んでみて下さい。ホントにすごい感想文だから。いやもう、感心。脱帽。絶句。
その他、【会話の名文II】鴨下信一、【私立向田図書館】久世光彦、【市街魔術師の肖像】寺山修司、【桂文楽の至福の日々】矢野誠一を収録。
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てなふうに書くと、無償の母親の愛情物語のように見えるが、そんな甘い話ではない。いやもう、この木綿子って女がとんでもないキャラクターなのだ。とにかく自己チュー。会ったこともない息子の無実を信じるのも「だって私の子供だから」。息子に不利な証言が出てくると「嘘をついてる」。おまけに大金持ちの独り身で、贅沢し放題ワガママし放題。この息子には、当然「卵子を貰って出産し、育てた」母親が存在する。この母親が可哀想になるくらい、木綿子は傍若無人なのだ。
ところが、実際に調査を始めてみると、「彼はそんなことをする人じゃない」という証言が次々と出てきた。ほらごらんなさい、やっぱり私の息子は犯罪者なんかじゃないのよ、利用されたに決まってるわ。そして……。
謎解きミステリとして読むと肩すかしを食うかもしれないが、この物語の求心力はタダモノではない。クライマックスで、関係者が一堂に集められ、なんだかんだとあって木綿子がキレそうになったとき、ある少女の言った一言。息子の無実を信じるのが母親の愛情だと思いこんでいる木綿子に向かって、少女は言うのだ。「どうして恵哉が犯人じゃいけないの?」──これは、読んでいて「ああ、そうだよな」と溜息をついてしまった。この本のテーマは、この一言にある。
正直、終盤になっての話の収束は少々わかりにくいところもあるし、残されていた暗号の効果も物語の中においては、やや浮いて見える部分がある。話が決着するあたりが、個々の事象がなかなか一箇所にまとまらず、失速気味の印象を与えるのがなんとももったいない。前半をミステリとして引っ張ったのが、後半になってサスペンスで決着してしまったがために、中途半端に残されたものがあるような、スッキリしない気がするのだ。そこが残念。
(02.9.7)《この本の詳細情報&注文画面へ》
7つの短編からなる連作推理である。なんていうか、良くも悪くも《本格推理》のオンパレード。個々に意味あいを持つ地蔵の首と、それが置かれた事件のリンク。驚きの凶器やおどろおどろしい現場。そして何より、一つの事件ごとに提示される推理は4つから5つ。つまり全編通して、7つ(いや、6つか)の事件に30もの解決が示されるわけで、著者言うところの「毒入りチョコレート事件」方式を体現している。というよりは、実は西澤保彦の酩酊推理シリーズを思い出したのだけれど。
魚間と警部がそれぞれ推理を披露し合い、それが潰されて最後に風峰の推理で一件落着、というパターンを取っているわけだが、ダミーの推理もそこそこ説得力を持っており、なるほどと思わされるものも多数。それ以前に、設定からして「んなバカな」というものもあれば、ダミーも本物の推理も「んなバカな」という部分があるのだけれど、そこはそれ、霞流一ですから。
なので、《推理合戦》や《論理の出し合い》がお好きな人には、これはタマラナイのではないかと思う。特に最終章の決着などは「あっ、巧い!」と思わず叫んでしまったくらいで。確かに設定だのトリックだのはバカミスなのだけれど、でも施された仕掛けは、真っ当すぎるくらいの王道。
ただ、──これはもう、好みの問題というか相性の問題だからどうしようもないのだけれど、物語性は無いよねえ、やっぱり。《不可能興味と地蔵の首》が提示され、容疑者が紹介され、状況が説明され、順番に推理を披露するというだけなんだもん。いや、「それだけ」なのが本格推理たる所以なのかもしれんけどさ。とにかくセリフが全部「説明」だし、人物も明らかに駒として書かれているので何の肉付けもされてないし、感情移入もできない──贅肉がないという言い方もできるけれどね。なので、読んでいてどうにも熱中できなかった。物語の世界に入り込みたいクチとしては、そこがちょっと辛い。
(02.9.12)《この本の詳細情報&注文画面へ》
人形幻戯〜神麻嗣子の超能力事件簿・西澤保彦(講談社ノベルス)
今回はこれまでに出てきたレギュラーキャラクタが、それぞれ見せ場を作る。適材適所、っていうのかな。それに、各編で語られている事件と、その奥にあるテーマがなんというか、実に有機的に結びついて……本格パズラとしての完成度は勿論なんだけれど、それ以上に、事件に巻き込まれる人々の《動機》が悲しく、《動機に裏打ちされた行動》が悲しい。その悲しさがどこから生まれているかというと、リアリティ、なのだと思う。チョーモンインだの超能力だのなんていうシリーズに於いて「リアリティ」が強みを持つってのは、すごいことなんじゃなかろか。
【不測の死体】公園を歩いていた主婦が、いきなり倒れた。どこからか飛んできた置き時計に頭をぶつけたらしいが──。ロジックの妙味。
【落下する思慕】学校の五階から落ちて死んだ生徒。しかし、その生徒は念動力により、そこまで持ち上げられたらしい。──超能力の使い道は簡単に見当がつくが、この犯人の動機は切ないなあ。
【おもいでの行方】ふと気づくと、2時間が経っており、隣の部屋には死体が。記憶のない2時間に何があったのか? 最後の最後で溜息をついた。切なさ100%。このラストは、ベスト・エンディング賞ものだ。
【彼女が輪廻を止める理由】川に落ちて死んだ上司。そのときの様子が、何故か映像となって関係者に送りつけられる──。傘のエピソードが秀逸。この傘のエピソードが、最後になって効いてくるあたりも見事。
【人形幻戯】パーティ会場で、シャンデリアが落下、下敷きになった男性が死亡した。そこから立ち去った謎の女性は?──幼児性の強いオトナを書かせると、この著者はホントに巧い。
【怨の駆動体】マンションの非常階段から落ちて死んだ女性の部屋のドアには、チェーンが掛けられていた。誰かがサイコキネシスでチェーンを掛け、彼女を閉め出したらしいが──短い物語だけれど、パズラーとして実にビューティフル!
(02.9.16)《この本の詳細情報&注文画面へ》
犯人の動機ってのは、正直あたしような俗物にはピンと来ないのだけれど、犯人と紅子の対決シーンは一読の価値あり。古典的な手法ではあるけれど、「巧いっ!」と喝采したくなるような演出である。
しかし、実際のところは、今回の事件とその解決云々よりも、Vシリーズを通しての──いや、その前から──仕掛けの方に注目してしまったことは否めない。ついに、巷間噂のあの真相があきらかになるのね! どきどき。
そして読み終わったときに。普通、これだけの仕掛けを施していたら、その解明は「どーだあっ!」とばかりに派手にやりたくなるもんじゃないかと思うのだが、そのあたりがさすがにスマート。そこで大仰にサプライズを狙うのではなく、実にさりげなく、「え?」と読者にほのめかすだけで終わっている。ああもう、そういうあたりが、ホントにスマートでエレガントなんだよなあ。いや、むしろこの仕掛けというのは、読者が騒いでいたほどには、作り手としては重視してなかったんじゃないのかという気さえする。こういう趣向、こういう遊び、という程度で、「ここで驚かせてやろう」とは思ってなかったんじゃないか。
それにしても(ネタバレにつき反転)林がファーストネームだったということは冗談半分ながら予想してたし、タイトルの緑が青になれば春夏秋冬なんだけどなってことも気づいていたのに、読んでる最中にそれを有機的に結びつけることができなかったのが、なんとも悔しい。ヒントはバラ巻かれていたのになあ。それも、だいぶ前から。
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正直言って、映画の新聞広告というものが、ここまでたくさんあるとは思ってなかった。テレビCMにしろ、劇場前に貼られるポスターにしろ、1種類しかないという頭があるものだから、新聞広告も同じものを何度も載せてるんだろう、と。違うのねえ。上映館が変わったらもちろん差し替えるんだけど、それ意外にも、封切り1か月前、1週間前、3日前、2日前、1日前、当日、上映中と、どんどん新聞広告は変わっていくのだ。前売りプレゼントの情報が入ったり、観客動員数●万人突破の御礼が入ったり。
考えてみれば、一旦広告を流し始めると、テレビCMやポスターは簡単に差し替えられないが、新聞広告なら毎日でも替えられる。そういう柔軟性と速報性があるのである。そんな「細かい情報が変更された」新聞広告を一気に集めた本なのだから、資料性という意味でもこれは貴重。
たとえば、「もののけ姫」では、公開数日前から当日にかけて、広告の一部が毎日変わっていた。コダマである。毎日毎日、コダマが「あと4日」「あと3日」と告知してくれていたのだ。上映されてからは「混んでてごめんね」と謝ってくれる。気づいてました?
また、「平成狸合戦ぽんぽこ」では、狸がいろんなものに化けてる絵が載り、その隅っこにトトロが写っている。そこに矢印を書き込み「トトロも登場?」なんていうキャプションが書かれている。すごく楽しいと思うのだけれど、過去の作品に寄り掛かることを是としない監督にひどく叱られてしまったそうな。
特に、「千と千尋の神隠し」の広告の種類の多さといったら。湯婆婆がセンスを振り回しながら「日本一!」だの「フェア開催中」だのと叫んだり、途中からは「マックロクロスケ」ことススワタリがこっそり広告に現れたり。挙げ句の果てには、ちょうど行われてた選挙にからめて「この夏、映画と選挙に行こう」だの、カオナシが「イチロー、首位打者おめでとう」だの……もう、遊びまくっている。それだけ遊びながらも、ハクの絵が広告に少ない理由や、コピーの最後を「!」にするか「。」にするかで侃々諤々の議論があったことなどがあかされ、「へえ」と思う。
そういうふうに、隅から隅まで楽しめる本なのだけれど、ミステリ好きには思わぬ記述も。意外なところに、霞流一の名前が出てくるのだ。あたしゃひっくり返っちゃったわよ。「となりのトトロ」の項なんですけど、さあ、捜してみよう。
(02.9.17)《この本の詳細情報&注文画面へ》
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