試験に敗けない密室・高田嵩史(講談社ノベルス)
僕はイトコの千波クンと友人の慎之介の3人で、別荘目指して群馬県の山奥へやって来た。ところが、ホンの些細な食い違いが重なって、目的地とはまったく別の村に泊まるハメに。この村には様々な言い伝えがあって、善人なら出られるが悪人は出てこられない牢とか、首切り塚の跡などが残っているという。興味本位で探検に出かけた3人だったが……。
Mr.サイレント〜仮想世界の優しい奇跡・早見裕司(富士見ミステリー文庫
事故で声を失ってしまった晋一郎は、中学を卒業して以来、自室にひきこもってネットや編み物ばかりしている17才。死んだ父親の会社の株を受け継ぎ、生活には困らないものの、幼なじみの真理香は、このままではいけないと、なんとか彼を外の世界に引っぱり出そうとする。そんな二人の体験した、ネット上で起こった事件を描いた連作推理。
神山高校古典部の千反田えるは、同じ部員の折木奉太郎・福部里志・伊原摩耶花を誘って、2年F組制作のビデオ映画を見に行った。ところがこのミステリー映画は未完。脚本家が途中で倒れたというのだ。2年F組の《女帝》入須は、古典部の4人に、この映画の真相を推理して欲しいと頼む──。
「うまひゃひゃさぬきうどん」で、読者を香川へと走らせた著者の第2弾、今度は沖縄である。ひえええ、讃岐うどんなら加ト吉の冷凍うどんで何とかなっても、沖縄までは行けないよ〜〜と思いつつ読んだ。読み終わって、速攻で名古屋市内の沖縄料理店を検索したねあたしは。
猫丸先輩の推測・倉知淳(講談社ノベルス)
神出鬼没の猫丸先輩が、飄々と謎を解く人気シリーズの短編集。
拝金主義の画廊オーナーに伴われて仙台へ向かう新人女性画家。下調べを怠らないプロフェッショナルの空き巣。互いの配偶者を殺そうと画策する不倫カップル。リストラされて職探しにも疲れた中年男。「神様」と崇められる「名探偵」を崇拝する若い男。それぞれの生活がそれぞれの視点から描かれ、そして最後にその複数の生活がクロスする、そこに見えたものは──!
まほろ市の殺人 春〜無節操な死人・倉知淳(祥伝社文庫)
真幌市に春の風物詩でる「浦戸颪」が吹き荒れた翌日、美波は親友のカノコから電話を受けた。「あたし、人を殺したかもしれない」──。マンション7階にベランダから侵入しようとした男を突き落としたというのだ。しかし、マンションの下には男が墜落したような跡は何もなかった……。
まほろ市の殺人 夏〜夏に散る花・我孫子武丸(祥伝社文庫)
真幌市に住む作家・君村義一のところに、ファンレターが届いた。差出人は同じ真幌市に住む19才の女性。それをきっかけにメールの交換をするようになった二人だが、初めて会ったあと、彼女の様子が一変して──。
まほろ市の殺人 秋〜闇雲A子と憂鬱刑事・麻耶雄嵩(祥伝社文庫)
真幌市の有名人・ミステリー作家の闇雲A子は、過去に警察に協力して事件解決の手伝いをしたことがあった。そのためマスコミでも名探偵ともてはやされていたが、現在、彼女が追っているのは、半年前から市内で起こっている連続殺人事件。死体は右耳を焼かれ、死体のそばには何か小物が置かれているという事件である。干支の動物の置物だったり、ジオラマの模型だったり──いったいこれには何の意味があるのか? A子は捜査課の天城憂刑事を相棒に指名し、真相解明に乗り出した!
まほろ市の殺人 冬〜蜃気楼に手を振る・有栖川有栖(祥伝社文庫)
飲み屋の帰りに、偶然バイク事故の現場を通りかかったら、そこにはバッグに入った3千万円が落ちていた。持ち主と思しきバイクの運転手は死んでいる。そのまま猫糞して帰ったところ、警察に届けるべきだという兄とケンカになり、殺してしまった。兄の死体、拾った3千万円、どちらも隠し通せるか?
とにかく、大から小まで密室のオンパレードと言えよう。これくらい密室が出てくれば、どれかひとつくらいは気に入ったのがあるでしょう、というくらいのサービスぶりだ。小は【瓶の中に、その瓶口より大きなキーホルダーをどうやっていれたか】というもの、当然【開かない牢】や【人間消失の部屋】もあり、そして大は──いやいや、これは言わぬが花か。
とまぁ、かなり題材面では本格しているのだけれど、いかんせんこのシリーズは、《八丁堀》の軽妙にしてオマヌケな一人称文章と、ふんだんに盛り込まれた(本編の謎とは殆ど無関係の)頭の体操的パズルの印象が強くて、密室トリックそのものに「驚愕」するところまでは、なかなかいかないのよね。ひとつひとつのトリックは、実に「なるほど」なものばかりなんだけれど、物語の全体を通しての雰囲気がライトなせいかな。それに最後のなんて──う〜ん、アンフェアとは言えないけれど、それにしたってズルくないかあ?(笑)
てなわけで、パズルも楽しめる軽めの密室小説(或いは、密室も楽しめるパズル集)として、気軽に読むのがいいかも。あたしは密室トリックよりも、中で紹介されている柱時計のパズルとか、疲れたロバを元気な馬にするパズルとか、そっちの方にはまってしまった。しかしこうしてみると、本格推理ってのは、やっぱ原点は《発想の転換を必要とするパズル・クイズ》なんだよなあ、という思いを強くする。
尚、蛇足ながら。「敗」っていう時は、「まける」とは読まないよねえ。一発変換できないのよこのタイトル。どうして「負けない」じゃダメだったんだろう。敢えて誤った使い方をしたところに、何か仕掛けがあるのかな?
(02.10.5)《この本の詳細情報&注文画面へ》
ヒーロー・ヒロインのキャラクタは、絵に描いたようなヤングアダルトのお約束キャラ。物静かで冷静で客観的、ちょっと偏屈なところもあるけど優しい探偵と、行動的で明るくて、少々無鉄砲で自己チューで、探偵役を事件に引っぱり込む役どころの女の子、という図。
【小説家拉致事件】真理香がファンだという作家のホームページを見ていると、日記にタグの打ち忘れがあった。不審に思ってソースを見てみたら、そこには思わぬ文章が──。謎としてはとてもシンプルで簡単だけれど、ソースに書かれてあるっていう見せ方が巧いのと、別の話との繋げ方が絶妙で読ませる。
【彼の名は「ん」】ネット上の横溝正史ファンが集う掲示板のオフ会が開催されることになった。ところが、そのメンバーの中にある確執が生まれており──。FSUIRIに出入りしていた者としては、ニヤニヤしながら読めた(笑)。謎解きはすごくキレイで、これイチオシ!
【値切らなかった男】ネットオークションに入札すると必ず競ってくるヤツがいる、それが誰だか調べて欲しい──そんな依頼の結末は。謎解きとかミステリとかとは全く別の部分で、これにはすっごく共感するわぁ。全国の《妻》は、きっとラストで涙ながらに頷くに違いないっ!
総じて、物語としても謎解きとしてもキレイにまとまっている。まだまだ続編が出そうだし、楽しみ。ところで、3編を通して疑問がひとつ。編み物をしながら手話ってできるのか?
(02.10.6)《この本の詳細情報&注文画面へ》
愚者のエンドロール・米澤穂信(角川スニーカー文庫)
著者自らがあとがきで書いている通り、これは「毒入りチョコレート事件」方式だ。つまり、謎だけが提示されたあとで、複数の人物が自分の推理を述べる。一見、論理的には正しそうなその見解は、論理的に否定される。その繰り返し。そして最後には──というパターンだ。
本格好きには確かにワクワクする手法。下手をすると、単なる推理合戦になってしまって(え、それがいいんだって?)物語の面白味は半減しちゃいかねないのだけれど、そこは巧く「キャラ」と「人間関係」を絡ませることでクリアしている。見取り図と首っ引きにならないと理解しにくい箇所が多いのがちょっと辛かったけど、これはあたしの《三次元映像想像力の欠如》によるものだし。
特に、2人目に推理を披露した《ミステリマニア》は、オタクの陥る滑稽さを面白いまでにカリカチュアしてくれてるし、3人目の美術部員には思わず目からウロコ。密室だなんだと騒ぐミステリ好きたちを前にして、言った言葉がこうよ──「いいじゃない、鍵くらい!」──うっとり。もう、今年の名セリフ大賞あげちゃう。
奉太郎の出した結論は、「あ、これ、前例があるぞ」と思いながらも、それでもキレイで思わず拍手。でも……まぁ、こっから先は読んでくれ。二重三重のヒッカケが用意されて、実に堪能致しました。おまけに謎解きだけではなく、こういうヤングアダルトで忘れてはならない《自我の問題》もしっかりテーマに組み込まれて、上手に読者を導いてくれる。テーマと謎解きがガッチリとリンクして、そこも文句なし。お腹いっぱい。ご馳走様でした。
(02.10.7)《この本の詳細情報&注文画面へ》
沖縄やぎ地獄・さとなお(角川文庫)
著者が沖縄で食べたものをテーマに語るエッセイ集なのだけれど、とにかく1ページに1度は「ぷぷぷっ」「ぐわははは」と笑える面白本だ。決して沖縄観光グルメガイドではないし、なんらかのスポンサー付き宣伝本でもない。著者がただ「食べたいっ!」とばかりに食べまくった沖縄物語なのである。
──と、思いながら読み始めた。
第1章からして、食べ物ネタじゃないじゃん! 単なるお笑いオチじゃん!(笑)
いやいや、2章からはちゃんと沖縄の味の話になります。が、笑いすぎて頭に入ってこないけど。笑って笑って、それでも気づくと「ゴーヤ買って来ようかな」「泡盛って通販やってないかな」などとしっかりインプットされているあたりが怖い。奥様の駄洒落も、響子ちゃんの食欲も、「うまひゃひゃさぬきうどん」の上を行ってますとも!
何と言っても、美味しいものを食べて腹の底から大笑いするという2点が満たされれば、人間これ以上の幸福はあるまい? その両方がこの本にあるのだ。そうして、お腹も脳味噌も満腹になったころに、ときどき、沖縄が戦地であったこと、大和を守るために沖縄が犠牲になったことを、そっとピンで留めるように、思い出させてくれるのである。
まあ、何はなくとも沖縄すば! 沖縄すばを食べられる店を名古屋で捜すぞ! それから豆腐ようも食べてみたいし。──あ、そう言えば。この本、実際にその料理の写真がたくさん載ってるんだけど、208ページの写真は「豆腐よう」なのかな? それとも、響子ちゃんが地面に落としたアイスクリームなのかな?
(02.10.8)《この本の詳細情報&注文画面へ》
あたしは本を読むときには、語り手に感情移入するというか、「こういう人が身近にホントにいたら」という感覚で読むタチなので、実は猫丸先輩に関しては、ときどきかなり腹が立つのである。だってさ、事件に巻き込まれてる側は本気で困ったり怯えたりしてるのに、そんな相手をおちょくるでしょう? それがどうもダメなのよねえ。まあ、被害者の遺族の前で密室の分類講義始めるような探偵や、殺人事件を喜ぶような探偵よりは数億倍マシだし、猫丸先輩の事件の処理の仕方はかなり好感が持てるのだけれど。
だもんだから、猫丸先輩の傍若無人さが際だつシーンのある話は、相対的に点が辛くなってしまう傾向にあります。無論、それは物語や謎解きの善し悪しとはまったく別の次元の話だし、あたしの好悪の問題ってことでご寛恕下さい。
では、一言コメント。各話のタイトルが有名作品のパロディになってて楽しいね。
【夜届く】謎解きとしてはメチャクチャ好きなんだけど、みゆきちゃんと猫丸が、本気で怯えてる八木沢君をおちょくり過ぎ。どうして真面目に聞いてあげないんだろう。
【桜の森の七分咲きの下】あああ、これも新入社員君が心の底から可愛そうになるよお。人が早くから場所をとってる桜の下にずかずか入ってきて、「どいて下さい」って頼まれてもどかないって、どういう神経?
【失踪当時の肉球は】うわははは、タイトルにまず一票。ペット探偵のキャラもお笑いでいいなあ。でも、この真相だと、こんな方法とらなくても断ってしまえば済む話なのでは。
【たわしと真夏とスパイ】ああ、これ好き! さすがにこの真相は見抜けなかった!
【カラスの動物園】えっと、そういう謎解きをしてる間に、警備員室に行った方がいいと思うんだけど……。
【クリスマスの猫丸】ああっ、また! どうして八木沢君にタカるのよお。八木沢君も断りなさいって。いいじゃん、サンタの謎なんか解けなくても。「謎解きなんか聞かなくていいから、この店で適当に安いものを食え!」くらい言ってやれっ!
(02.10.10)《この本の詳細情報&注文画面へ》
ラッシュライフ・伊坂幸太郎(新潮社)
面白い! 一度しか使えない手だが、面白い!
一見無関係に見えた複数の人物の描写が、最後になって思わぬクロスを見せる、という手法のミステリは前例も多いけれど、そう言われて想像するようなクロスのさせ方ではない、のだ。読みながらときどき違和感は覚えるのだけれど、その違和感が徐々に形となって現れる快感と言ったら! なるほど、こういうことだったのね、だとしたら、さっきのこのシーンは……ああそうか、こういうことかあ! と、何度も何度も前のページに戻って、その度に「う〜ん」と唸ってしまう。よく設計図引けたたなあ、こんな構成。作中のエピソードにも、そして本の表紙もエッシャーの騙し絵が出てくるけれど、まさに的を射ている。
おまけに、それぞれの章を担う登場人物が結構個性的で、おかしみがあって魅力的な人やら、エキセントリックな人やら、見てて可哀想になるくらい誠実で辛い目にあってる人や、ちょっとイっちゃった人や、犬や──とにかく、多種多様で読んでて飽きない。そしてこの気持ちいいラスト!
本格ミステリかと言われたら困ってしまうのだけれど。だって謎解きモノってワケじゃないし。だけど、この手法は本格ミステリのそれではないか。あ、それに、魅力的な謎も出てくるのよ。轢死体をトランクに入れてたら、いつの間にかそれがバラバラになるし、かと思うと再びくっついて生き返るし(わくわく)。それに何と言っても──全部が全部、互いに伏線になっているというか──ああ、これ以上言うとネタバレになってしまうううう。
実際、薦めるのは結構相手を選ぶ作品かもしれないけど、この構成の妙はなかなか味わえないので、ダマされたと思って読んでみて下さい。謎があって手がかりがあって探偵が謎を解く、という形が好きな人には合わないかもしれないけれど、昨今の多様化した本格ミステリに慣れている人なら、きっと気にいると思う。いや、むしろ、SF好きの人の方が合ってるかも──あ、いえいえ、SFじゃなくて、ちゃんと理に落ちた解決ですが。おまけに、読後感も抜群にいいのよ、これ。
(02.10.11)《この本の詳細情報&注文画面へ》
真幌市を舞台にした競作シリーズの春の巻。予め提示されていた、細かい伏線がカチッカチッとはまっていく様は、論理パズルの醍醐味よね。それも、「伏線ですっ!」という感じに表立って描かれたエピソードだけじゃなくて、普通の会話や地の文にも後に繋がる部分があるっていうのは、とってもエレガント。
ただこれって、実際に可能かどうかを考えると、けっこう難しいんじゃないかと思うんだけど、どうかなあ。人に見られるのではという可能性ももちろんだけど、それ以前に、力学的に不安が残る気がするんだけど。そのせいか、なんだか「キレイな解答」というよりも、印象としては「バカミス」っぽいのよね。
謎解きとは全然関係ないのだけれど、126ページから128ページあたりの、主人公カップル二人のシーンはとても印象深い。被害者宅に群がる無責任な野次馬を前にして、「友だちを救いたいとかなんとか言っても、あたしもこういう人達と同じだ」と落ち込む美波と、それに対する新一のシーン。感動した、って言ってもいいかも。倉知淳という作家は、物語の雰囲気作り──色や風合いっていうのかな、そういう演出がとても上手な作家さんだと思うのだけれど、ときどきこうしてダイレクトな表現をする。それがすごく効くのよね。
(02.10.13)《この本の詳細情報&注文画面へ》
ああ、これは最初から最後まで一気に読ませる、質のいいサスペンスだなあ。あれこれと勘ぐりながら読んでいたのだけれど、次第に物語の中に取り込まれてしまった。萩尾望都の漫画「半神」を思い出したのよね。もちろん、設定もストーリーも違うんだけど、根底に流れるテーマは「半神」を彷彿とさせるものがあるような気がするのだ。うん、これ、映像化するのは少々難しい気もするが、漫画になると怖くて面白そう!
最初は「逆ミザリーって感じ?」と思いながら読んでいたのだけれど、次第に雰囲気は妖しげになっていく。後半にかけての盛り上がらせ方と、クライマックスでの怒涛の展開、めくるめく思考、入り乱れる人間関係ってあたりは、もう圧巻。硝子を割る音が聞こえてきそうな程だった。下手な謎解きモノの体裁ではなく、こういうサスペンス仕立てにしたのは大正解だったのでは。
おまけに、静かな導入部、怒涛のクライマックスのあとに、このエンディングはまた凛として、そして切ない。最後の一文なんて、胸に染みる。
ただ、この内容なら、もうちょっと短い普通の短編の方が切れ味が良かったような気がするのだけど。まあ、そのあたりは好き好きかな。
というわけで、この競作4作の中では、あたしはこの「夏」に一票!
(02.10.13)《この本の詳細情報&注文画面へ》
この競作、3作目まで読んできたわけだが、ここまでのところ、同じ地名が出てくる(っていうか同じ市を舞台にしてるんだから当然か)ってだけで、別に作品どうしにつながりがあるってわけじゃないよね? いや、春と夏は刑事役の名前が同じだったんだけど、今回はそれも変わったもので。その代わりに「春」に出てきた喫茶店や、「夏」に出てきた小説の名前が登場したりするんだけど。でも、これって、この「秋」に限らず、真幌市でなくちゃならない隠された意味がどこかにあるのかなあ……と、不安になり始めた3冊目である。
いやあ、実は、この「死体のそばの小物」とか、最後のオチとか、こういうネタは大好きなのよね(笑)。だからそれだけで満足しちゃったんだけど、でも、よく考えてみたら「だから何?」というメッセージではあるよなあ(笑)。
それにこの真犯人っていうのは──いや、いいんですけど、こういうのもアリか。アリなのか。真犯人が分かる直前まではかなり面白く読んでたのだけれど、真犯人が分かった瞬間、ちょっと考え込んでしまった。
(02.10.13)《この本の詳細情報&注文画面へ》
──というふうに始まった物語なのだけれど、後半になって物語の主眼がズレてきたような気がする。後半はすっかり「俺の見た幻覚の正体は?」というところがメインになってしまってるのよね。で、「幻覚の正体はこれこれでした」と言われ、ああそうか!と一旦は驚いたあとで、「ちょっと待てよ、これってそんな話だったか?」と、ちょっと割り切れなさというか、何か残ってるような据わりの悪さを感じてしまうのだ。
ところで、こうして競作の4冊を全部読んだわけだけど──う〜ん、あたしがバカなのかもしれないけど、どのあたりが「競作」なのか分からないのよね。共通する地名や人名が出てくるってだけに見えるんだけど。別に真幌市じゃなくても書ける話ばかりのような気がするんだけど──あたし、何を見落としてるんだろう?
まあ、穿った味方をすれば、「春」は「消えた死体」の話だし、「夏」は「存在するのに存在しない女性」だし、「秋」は「真犯人が刑事を心の迷宮に誘い込む話」だし、「冬」は「蜃気楼や幻覚に惑わされる話」だし、どれも「まほろ市=幻の殺人」と言って言えないことないのだけれど──でもそれって、読者側の勝手な深読み、こじつけに過ぎないよね? う〜ん、読み終わってから更に悩む4冊なのであった。
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