じーさん武勇伝・竹内真(講談社)
佳作を次々と発表している竹内真の、新人賞受賞作。確か小説すばるでも「粗忽拳銃」新人賞を貰ってるのよね、この著者は。あちらとはまた随分違った芸風のようにも見えるが、広がった話を気持ちよく落としてくれる手腕は共通している。
患者がもう助からないとなったとき、最後に一つだけ、必ず願いごとを叶えてくれる人物がいる。そんな不思議な噂が、患者たちの間で囁かれていた。初めは「黒い服を着た謎の人物」だった噂が、いつの間にか「その人物は清掃員の格好をしている」と変わってきた。学生アルバイトの清掃員は、その噂を頼りに自分の願い事を叶えようとする人々と接して──。
ベイビーキッスは、東京郊外にあるキャバクラ。そこでは、キャバクラ嬢同士の、どこにでもあるような嫉妬やいじめが繰り返されていた。そんな中、ひとりのキャバクラ嬢は、自宅でインターネットをやるのが趣味だった。名前はハンドルを使っているが、キャバクラ嬢であることをあかし、掲示板中心のホームページを立ち上げ、そこに自分の居場所をみつける日々。ところが、ある日突然、彼女の掲示板が「荒らし」に遭う──。
日本科学技術大学教授 上田次郎のどんと来い、超常現象・上田次郎(?)(学研)
くくくく、くだらねえええ〜〜〜(笑)。
最前線〜東京湾臨海署安積斑・今野敏(角川春樹事務所)
おおお、安積斑シリーズの新刊だあ。これぞ警察小説。刑事が事件を解くというミステリではなく、刑事たちの仕事や生活を描くという意味での警察小説である。「太陽にほえろ」+「はぐれ刑事純情派」+「踊る大捜査線」だ。いや、警察小説っていうよりも、ただ勤務先が警察なだけで、働く男達を描く普通小説と言ってもいいかもしれない。つまるところ、信念を持つ男はかっこいい、ってことよ。
闇匣〜Sound of Silence・黒田研二(講談社ノベルス)
気が付くと俺は、真っ暗な部屋の中に拘束されていた。婚約者の親に会うためにホテルに泊まっていた筈だったのに……暗闇の中、突然響いてきたのは幼なじみのあいつの声。数年前に起こった、ある事件の真相を話せという。それが分からなければ、このまま俺を殺す、と。真っ暗な闇の中で、俺は過去を思い出す──。
桜市に生まれ育った麗火は、病院の救急救命センターに勤める医師。ある日、彼女の病院に瀕死の少女がかつぎ込まれる。血が腐り、緑色に濁った液を吐き続ける16才のその少女は、何とか一命をとりとめたものの殆ど脳死状態に。その時、麗火は、昔、彼女が死後処理をした少女とこの患者がうりふたつなことに気付く。同じ頃、その病院に勤める優介が、16才になった姪と久しぶりに会ったとき、姪も彼女らと同じ顔をしているのを見て愕然とする。そしてまた、同じ顔の16才が別の場所でも──。
幽霊は生死不明〜Dear My Ghost3・矢崎存美(角川スニーカー文庫)
殺人事件を犯してしまった高校生を霊視した真人と、彼の守護霊・美海。「自分が殺した相手が後ろにいる」と言い張る高校生の後ろには、確かに少女の霊が浮かんでいた。しかし、彼が殺したのは男子同級生の筈で──。Dear My Ghostシリーズ完結編。
高校生のキュウは、今夜もネットサーフィンをしていた。リンクを辿り、バナーをクリックし、偶然たどり着いた不気味なサイト「殺人ライセンス」。そこは、指定されたターゲットを、警察に逮捕されることなく如何に巧く殺せるかを競うゲームサイトだった。何の気なしにゲームを始めたキュウは、あっさりゲームオーバー。ところが数日後、そのゲームでターゲットにされていた人物と同名の男が実際に殺される。
虹の家のアリス・加納朋子(文藝春秋)
「螺旋階段のアリス」に続く、アリスシリーズ第2弾。本格ミステリマスターズのひとつとして出されたわけだが──えっ、本格ミステリマスターズって、短編集もありなのか。おまけに書き下ろしじゃなくて、すでに発表済みのヤツばっかりじゃん。いや、別にそれは作品の善し悪しとは全然関係ないんだけども、何となく、この叢書は「渾身の書き下ろし長編! これが私の《本格》だあ!」というイメージを持っていたのよね。勝手な思いこみなんだけど、まさか既読作品が出てくるとは思わなかったので、かなり意外に感じたのである。
神楽坂家のじーさんは、とにかく凄まじい男。昔、人気映画女優だったばーさんに一目惚れし、撮影現場から略奪してきたかと思えば、戦死の報が届いたのに生きて帰ってくるし、老体になってからも警察を相手に大立ち回りを演じるし。これは、そんなじーさんの孫である僕が綴った、じーさん武勇伝である。
とにかく、スカっと威勢の良い話運びに乗せられて、サクサク読める。どうしようもない息子(つまり僕の親父)への扱いや、ばーさん一筋だったのにばーさんの死後に落ちた老いらくの恋など、決して目新しい話ではないのだけれど、その分、どこか懐かしく、安心して楽しめる物語になっている。
新人賞受賞作である【神楽坂ファミリー】は、これだけでもちゃんと独立した短編なのだけれど、この作品集に於いては「登場人物紹介」といった位置づけになってしまった。なぜなら、2話・3話と進むにつれて、話の「大風呂敷」加減が、等比級数的に膨れ上がるからである。
沈没船のお宝を探しに行ったまま行方が知れないじーさんは、第2話【帰ってきたじーさん】で、いきなり姿を現す。異国の海から、海賊と戦いながら(!)帰ってきたじーさんは、密航者と間違われて入国管理局に留め置かれたのだ。そのじーさんとマスコミの対決が面白い。
そして3話の【じーさん無敵艦隊】では、ついに沈没船お宝引き上げが実行され、それと同時に神楽坂ファミリーが巻き込まれた誘拐事件が語られる。じーさんのとてつもないキャラに圧倒されながら、それでも実はじーさん以上に丹念に書き込まれた脇役たちの魅力に後押しされ、いつの間にかものすごく話は大きくなるのだ。うわははは、バカ話もここまでくれば、実に気持ちいいではないか!
(02.11.28)《この本の詳細情報&注文画面へ》
MOMENT・本多孝好(集英社)
いわば、病院内限定・死期が近い人物限定の「必殺仕事人伝説」である。ひょんなことから、その「仕事人」となってしまった学生の目線で、4つの物語が語られる。ミステリ的趣向はもちろんあるのだけれど、それのサプライズだの何だのというような問題よりも、それが『意図しているもの』がストレートに心に滲みてくる。ここには、人間の悪意がはっきりと描かれていて、それが死を前にした「最期の悪意」であったりもするわけで、その重さは想像するだに凄まじいものの筈なのに、それでも最期にはじんわりと心を満たしてくれる何かがある。いい話だ。うん、ホントにいい話だ。
【FACE】戦争中、はからずも自分が手にかけてしまった同僚兵士。彼の遺族が幸せに暮らしているのか、見てきて報告して欲しい──そんな依頼を受け、脇坂一家に近づいた僕。脇坂家の人々の書き込みが秀逸。
【WISH】中学生なのに余命いくばくもない美子ちゃん。彼女は、修学旅行先の京都で偶然であった大学生に、もう一度会いたいという。ありがちな話だと思っていたら、結末には驚愕。
【FIREFLY】誰も見舞いに来ない女性患者。彼女は誰かに電話をかけ続けていた。彼女は誰を待っているのか。彼女の行動の真意は見当がつくけれど、それを明かすシーンの演出が抜群に巧い。
【MOMENT】借金取りが病室まで追いかけてくる患者。患者の家族にも、被害が及んでいる。彼の願いはただひとつ、生命保険が家族に届くよう、できるだけ早く死ぬことだった。そしてその頃、もう一つの「必殺仕事人伝説」が──。
(02.11.30)《この本の詳細情報&注文画面へ》
まどろむベイビーキッス・小川勝己(角川書店)
まさに「今」が旬の素材を効果的に使っている。数年立つと、もう成立しなくなる(或いは、現実の方がもっとエスカレートしてて小説にリアリティがなくなる)ような素材だ。つまりは、「掲示板荒らし」であり「匿名の悪意」であり──そして、それによって引き起こされること、である。
あたし自身は、「掲示板」というシステムにあまり馴染みがないのだけれど、実際にこれに近い状態が起こっているということは、耳にする。あまり気持ちのいいものではないな、どういう人がそんなことするんだろうな、という程度の感想しか持っていなかったのだが、この物語を読むと(もちろん、これが全てではないにせよ)、「匿名の悪意」の向こう側にあるものが透けて見えるようで、いろいろと考えさせられてしまった。
謎解きミステリーではないけれど、本格好きなら「あっ」と思う趣向が扱われていたり、時刻表をつかったアリバイ工作があったりで、ミステリ好きの心をコチョコチョとくすぐって来る。と同時に、ネットが舞台ということもあって、親近感が沸き、すんなりと物語に入り込める。つまりは、物語の間口が広いのだ。しかし、この中で描かれている「動機」の切なさ、すぐ近くで起こっていても不思議ではない事件、人間関係に於いてリアルとバーチャルの振り分けが出来ない傾向、ネットへの依存、「誰かお願い、私のことを好きだと言って」という心の悲鳴、などなど──ズシンと重いものを読者に投げつけてくる。
そしてラストシーンの、なんともいえない後を引く幕切れ。ここで終わるかッ!と、叫んでしまいたくなる。これはお薦め。それも、ネットをさまよっているあなたに「今」読んで欲しい作品である。
(02.12.5)《この本の詳細情報&注文画面へ》
あらかじめ断っておくと、これはドラマもしくは映画「TRICK」を知らなければ面白くもなんともない。ってゆ〜か、意味がわからないだろう。「TRICK」で阿部寛演じる日本科学技術大学教授・上田次郎が書いたという設定の「超常現象とは全てホラである」という主旨の本。で、その内容はというと……ぶわはははは、まずは上田次郎の「おいたち」が語られる。出生から子供時代、青春時代を経て現代まで。写真まであるぞ。大学時代の写真が本物の阿部ちゃんの写真ということは、この子供時代の写真もそうなのか?
続いて、おそらくこれがメインだろうと思われる、テレビ版「TRICK」のストーリー紹介。パート1&2の全ての事件が、細かく語られる。だがしかし、そのまま鵜呑みにしてはならない。なぜなら、これは全部《上田次郎の視点で書かれている》からである。テレビドラマをまったく知らずにこれを読むと、「上田って鼻持ちならないけど名探偵じゃん」としか思えないが(そうか?)、ドラマを見た人間にとっては「うわははは、嘘ばっかり書いてるよコイツ」と、爆笑につぐ爆笑なのだ。しかし、山田奈緒子が「上田先生様、この貧乏で貧乳の山田をどうぞお連れ下さい」と泣いて頼むってな描写を見ると、この芸風、誰かの日記と似ているような──まあ、気のせいだろうきっと。
あとは付録というかボーナストラックというか。二人の刑事(生瀬勝久と、あの広島弁の子ね)による対談とか、ワイドショーによる上田次郎のお宅訪問とか。一番おかしいのは、仲間由紀恵演じる山田奈緒子インタビューである。前章の上田次郎によるストーリー紹介を「嘘ばっかり!」と斬って捨てるのはいいが、じゃあ山田が正確にストーリーを描写してるかというと、やはり自分視点なものだからこれも「唯我独尊!」という感じで全然正確じゃなかったり。だからドラマを見てないと面白味が分からないのよこれ。
そして最後には、ちゃんと上田次郎名義の奥付があるという芸の細かさ。もちろん著者近影も。なんていうか、本気で遊んでるよなあ。ドラマの存在なんか全然知らない一般のオカルトファンがこれを買って、もしも信じたらどうするんだろう。<そんなこたあ、ないか。とまれ、最初っからドラマを見てる人だけをターゲットにしたこの本、ドラマの企画本としてはかなり異色にして、かなり面白いと思うのだが。ど〜んと来〜い!
(02.12.5)《この本の詳細情報&注文画面へ》
事件よりも登場する警官たちの人となりやキャラがいいのよね。これ、やおい同人誌系の人にはタマラナイのではないかと思うのだが。とくに美少年系よりもシブ好みの人に。ああ、速水さんがステキ(はぁと)。安積さんは相変わらず考えすぎっていうか勘ぐりすぎっていうか被害妄想っていうか(笑)。人間ってものを、かなり卑しいもんだと思ってないかこの人は。でも、そういう欠点も(安積以外のキャラについても)キチンと書き込まれているあたりが、リアリティを産んでるんだろうなあ。
【暗殺予告】密航者の捜索と、要人警護の二手に人手を割かねばならない安積斑。ところが、その2件がリンクしている可能性が出て……。
【被害者】発砲事件が発生。しかし、その被害者と加害者には因縁があった──。
【梅雨晴れ】手配犯の目撃情報が入り人員を出したが、それと前後して須田が一人の男を連れてきた。傷害の現行犯だというのだが──。
【最前線】捜査本部に派遣された桜井は、昔、同じ安積斑だった同僚と会う。彼は、現在桜井がコンビを組んでいる村雨の、当時の相棒だったのだが──。
【射殺】アメリカから捜査員が臨海署にやって着た。追っているヒットマンが臨海署が扱っている事案の犯人らしい。しかし捜査方針が悉く食い違い──。
【夕映え】安積は捜査本部で昔の上司に会う。今は階級では安積が彼を追い越していたが──。
(02.12.6)《この本の詳細情報&注文画面へ》
講談社ノベルスの企画「密室本」として出された作品だが──これだけは言わせてくれ。
どこが密室やねん!
あーすっきりした。ま、それはさておき(さておくんかいっ)、「今」のサスペンスと「過去」の推理が混じるという著者お得意のパターン。「今」の方は聴覚だけが頼りで、つまりは会話と思考のみの話になってしまうために一歩間違うと冗漫になりかねないのだが、過去の話が入るためにいいバランスを保っている。過去の事件の「誰かの意図によるものだったのか? ××が仕込まれたのは、いつ、誰によってなのか?」という論理優先の推理と、「今」で展開される物理的なトリックの合わせワザ一本。
ただ、個別に見ると少々難有りなのが惜しい。「過去」の事件の方は、あたしの好きなロジックによる推理で楽しめたのだが、惜しむらくは、ものすごおおおおく分かりやすいってことか。これはけっこう簡単に見当がつくと思う。伏線もあからさまだし。まあ、でも無理が少なくてあたしは好きなんですが。そして、この「今」の方は──本当にこういうことが可能かどうか体感しにくいので、「これだったら何でもありじゃん」となってしまうのが辛いかな。そういう意味でも、二つのネタを合わせて「サスペンス」という流れの中に置き、一本スジを通したストーリーに仕立てたのは正解だったと言えよう。時間制限、暗闇という小道具に乗せられて、細かいところを気にせずに、一気に読まされてしまうもの。
しかし何が辛いって、一人称主人公がメチャクチャ嫌なヤツなのよ。これにまず感情移入できない。じゃあ他の人物に感情移入できるかというと、幼なじみは気持ち悪いし、妹はワガママで自分勝手だし、恋人も高飛車だし、元恋人はグジグジしてて情けないし、好感を持てるキャラが一人も出てこないっ。これが一番辛いよおお。
(02.12.8)《この本の詳細情報&注文画面へ》
飛行少女(上下巻)・伊島りすと(角川書店)
患者が身元不明なので、ナンバリング代わりに「羊の7子さん」と命名されるのだが、この「羊の7子さん」とそっくり同じ顔をもつ16才の少年少女が、まるで何かに呼ばれたかのように桜市に集まってくるくだりは圧巻。最初はそれぞれの生活が描かれ、それぞれの持つ悩みなどが並行して語られるのだけれど、彼らが次第にクロスするにつれ、物語もどんどん加速していく。ホラーなのだけれど、「何故、彼らは同じ顔をしているのか」「何故、同じ症状を抱えているのか」「何故、16才で発症し、死んでいくのか」という謎を麗火が追い、それが解ける様はまさに本格推理の醍醐味である。
無論、謎解きとは言え、現実的に理に落ちた解決があるわけではなく、この物語の世界のルールに則った《論理的解決》である。だってホラーだもん。でも、そこで語られる《解決》は、とても切なく、そしてリアルに身に迫ってくるのだ。どうしてこんなことになったのか、その《始まり》が持つ、辛さ、悔しさ、切なさ。この連鎖を断ち切るために、麗火が出来ることは何なのか。これは全ての読者に向かって、同じ問いが投げかけられる。「この連鎖を止めるために、あなたにできることは何なのか?」と──。
同じ顔の秘密、病気の秘密が、当事者である少年にあかされるシーンが印象深い。なぜなら、少年の反応がとても意外だったから。あたしは麗火と同じ気持ちでいたので、少年の反応はとても辛かった。でも、これが「現代」なのかもしれない。忘れてはいけないことがある、語り継がねばならないことがある、それを今一度思い出させてくれた傑作だ。これはお薦め。
(02.12.10)《上巻の詳細情報&注文画面へ》《下巻の詳細情報&注文画面へ》
シリーズ完結編だからというワケでもないだろうが、今回が最もミステリとしてドラマチックだったという印象を受けた。これまでも幽霊でなければできない捜査というのがこの物語の主眼ではあったわけだが、今回は更に拍車がかかった感じ。ミステリのパターンに乗っ取れば「このあたりが怪しい」というのは見当がつくのだけれど、ことが幽霊だけに、そこから先の推理が不能になるのよね。それで結局推理を放棄して、素直に物語の展開を楽しんでいたら──クライマックスの「対決」シーンには、鳥肌が立った。映像的演出がオミゴト。
そして今回の白眉は、美海の正体! おお、そう来ましたか。しかし正直なところ、美海の正体についてはこちらもハナっから「お約束の存在」と認識して読んでいたため「正体」があるなんて考えもしなかったのだ。そのため、もしかして1巻・2巻に伏線があったのかもしれないけれど、ひっかかることなくスルーしていた。もったいない。これは「伏線再確認の再読」をせねばならないかも。
残念なのは、あたしの好きな和服刑事が精彩を欠いていたこと。ってゆ〜か、活躍の場がなかったし。2巻から登場した佐橋も、もちょっと物語を引っ張ってくれるかと思えば単なる仲介屋的役割で、陰が薄い。ここらあたりのキャラ、もっともっと色々なエピソードができそうな気がするのに、これで終わらせるのはもったいないなあ。おまけに咲子はシリーズ最終巻だというのに反省もしなけりゃ成長もしないしっ。結局、最終巻らしい決着がついたのは美海の正体の一件だけで、それ以外はそのまんまなわけでしょう? ってことで、何が残念ってあなた、これでシリーズ完結ってのが一番残念なのだった。
(02.12.14)《この本の詳細情報&注文画面へ》
殺人ライセンス・今野敏(メディアファクトリー)
一方、キュウの同級生である祥子と麻里は、深夜、放送の終わったテレビから妙な声が聞こえてくるのに気付いて怯える。会社をリストラされたばかりの麻里の父親は、第二の人生である「探偵」の最初の仕事として、この「妙な声」の調査にあたるが──。
うわあ、やっぱこの著者のストーリーテリングの才は抜群だなあ。一人一人の登場人物が細かく肉厚に書き込まれ、と同時に謎の持つ求心力も抜群で、テンポの良いストーリー展開は読者を飽きさせない。読んでいて、あっという間に引き込まれてしまう。イマドキの高校生と、会社をリストラされた新米探偵と、事件を捜査する刑事──こんな別世界の人間を同じ土俵上で公平に動かすそのワザは、さすがだ。「いかにも」な書き方をされていたリストラ探偵の妻も、ラスト近くでは実にいい味を出す。小説の「駒」に収まらない、そのリアリティと情が、物語の厚みを更に増しているのだ。
ネットが舞台ということで(多いよなあ、最近)、ネットならではのトリック──いや、トリックというと語弊があるか。ネットでなけれは通用しない設定を実に巧く料理している。ここまでネットが一般的になると、同じ様なネットの特性をトリックに使ったミステリがたくさん出ているのだけれど、そしてそれは既にワンパターンになりつつあるのだけれど、これは実に処理が巧い。使い方は「ワンパターン」の域を出ていないのに、話の進め方と見せ方でここまで面白くできるのかという好例。やっぱりトリックや仕掛けは、その目新しさよりも見せ方だよなあと思わせてくれる。
うん、これはお薦め。最後にきれいに決まるカタルシスも文句無し。
(02.12.15)《この本の詳細情報&注文画面へ》
さて、前回の「螺旋階段のアリス」が夫婦の物語だったのに対し、今回は家族の物語。
【虹の家のアリス】二人の子供を持つ母親たちの集まり「虹の会」で起こった不穏な事件──。ああ、なんて可愛らしい話なの(笑)。いっそ児童向けにしたいくらいだけど、でも、ちらっと辛辣な視点が入るアタリが小気味良い。
【牢の家のアリス】病院で起こった赤ちゃん誘拐事件。──う〜ん、謎解きは確かにキレイなんだけど、この結末は少々イタダケナイ。だって、たとえ結末がどうであろうと、悩んで振り回された人がいるわけだし。
【猫の家のアリス】「ABC」殺人事件収録。
【幻の家のアリス】単独で読むと少々おさまりが悪い気もするが、連作の中で映える一作。
【鏡の家のアリス】ああ、これはダマされた。正直言って、最初は「何、この展開。ミエミエじゃん」と鼻で笑って読んでいたのである。ああ、そんな自分が恥ずかしい。まさかこう来るとは! 全てが逆手にとられる快感。
【夢の家のアリス】ええっ、こう来ましたか。ここで扱われる事件よりも、安梨沙自身の展開にビックリ。
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