すげえっ! おもしれえっ!
黄色い目の魚・佐藤多佳子(集英社)
みのりは、ちょっと変わった女の子だと思われている。文句タレ、仏頂面、周りは嫌いなものだらけ。でもたったひとつ好きなものがある。それは絵描きで漫画家の叔父さん。一方、7年ぶりに父親とあったことで自分の中の何かが変わった少年がいる。連作短編の形をとりながら、高校生になったこの二人の関わりを描く、繊細で暖かで、そしてどこかもの悲しい物語。
ふたり探偵2〜阿弥陀ケ滝の雪密室・黒田研二(カッパノベルス)
「ふたり探偵」に続くシリーズ2作目。事件を追って爆発事故に巻き込まれた刑事・キョウジの昏睡状態は続いていた。そのキョウジの意識は、婚約者である友梨に飛び込んでいるのだ。体はひとつ・ココロはふたつ。そんな二心同体の二人。ところがある日、病院で眠っているキョウジが襲われるという事件が起きた。そして同じ病院に入院していた子供の行方がわからなくなる。今、世間を騒がせている連続誘拐事件なのか? そこに新興宗教教祖のバラバラ死体事件も絡んできて──。
音楽大学のピアノ科を首席で卒業した杉原亮子は、楽器店が経営するピアノ教室で子供を教える講師として働いていた。何か問題を抱えているため、人前でピアノ演奏ができないらしい。そんな亮子が探偵役となり、いろいろな事件を解決する連作推理。パズラーとしてだけでなく、亮子をとりまく人々のドラマが、実に暖かい。しかし、口当たりの良さに甘えていると、その裏に秘められた毒に驚くことになる。冷たさと暖かさが、互いを際だたせる叙情派ミステリ。日常の謎ってのは、舞台や猟奇性で目をひくってことができない分、物語をじっくり読ませてくれるメリットがあるのだ。
テレビを見てると、いろんなことの《善悪》を教えてくれる。国民の怒りの代弁者であるマスコミは《悪者》を鋭く糾弾する。──でも、ちょっと待って。それってホントなの? 報道されてることは、全部事実なの? いや、事実かもしれないけど、「報道されてないこと」もあるんじゃないの? 「国民の声ってのは、いったい誰の声だ? 本当のところを確かめにいった」と著者は言う。
新本格猛虎会の冒険・北村薫、他(東京創元社)
この感想を書いているのは5月下旬だが、この本が出版された3月末には、まさかホントに阪神が首位を独走するなんて思ってもみなかった。まあ巨人に突っ走られるよりはマシだけど、中日ファンとしては複雑なのよねえ。これで優勝しちゃったりして(充分ありえる)、縁起がいいからってこんな本が毎年出るようになったりするんじゃあるまいか。ええいっ、文壇の中日ファンよ、何をしてるんだ! 「新本格昇竜会の冒険」を早く、早く出すのだ! 2〜3位あたりにつけてる今ならまだ間に合うから!
忙しい仕事の最中、突然に病死した46才のデパートマン。殺し屋に人違いで殺されたヤクザの親分。両親に伝えたい思いを抱えたまま交通事故で死んでしまった7才の男の子。天国へと向かうための《審査》に意義を申し立てた3人は、3日間だけ現世に帰り、心残りを整理するチャンスを与えられた。しかし、現世に戻るときには、生前とはまったく違った姿形が与えられ、厳しい条件も課される。果たして3人は、心残りを整理することができるのか?
蛇行する川のほとり(2)・恩田陸(中央公論新社)
第1巻の内容、忘れたし!
おれは小学校の非常勤教師だ。産休や病欠代理など、なんでもこなす。子供が好きなわけじゃない、ただ自分の時間を大事にしたいだけなのさ……。そんなハードボイルドな非常勤教師が、小学校で起こった事件を解きあかす本格ミステリ。「5年の学習」「6年の学習」などに掲載されていたもので、いやあ、これを本にまとめたってだけで集英社、偉い!
とても基本的なパズラー、と言わせて戴こう。「法月綸太郎の功績」を読んだときの喜びにも似た、ベーシック且つエレガントなパズラー。しかし謎解きの面白さだけではなく、この中編集には著者の芸達者ぶりが遺憾なく発揮されている。タッチを変えた4つの中編。爽やかで切ない青春もの、コミカルなお笑いクローズドサークル、サスペンス、国際謀略。風水火那子という1人のキャラが、毛色も語り口調もまったく違う4つの物語を《パズラー》の名の下に集結させる。快なる哉!
葉桜の季節に君を想うということ・歌野晶午(文藝春秋)
この時期にして、既に今年の本格ミステリのベスト級が登場である。どっしゃー。いやあ、騙された騙された。すこーんと騙されたわよ。ブラボー。
探偵・成瀬将虎は、ジムで高校生の知り合いに会う。同じジムに通っている彼の思い人が、ここ数日姿を見せてないので、家まで様子を見に行きたいというのだ。一緒にいった成瀬は、そこで彼女の身内が轢き逃げで亡くなったことを知る。一方、彼女の家からの帰りに、成瀬は駅のホームに落ちようとした女性・さくらを助けた。自殺を思いとどまるように説得した成瀬だったが、さくらとはそのあと奇妙な関わりを持つことになる──。
とにかくテンポがよくて、サスペンスフルな展開が申し分なし。轢き逃げの裏に、霊感商法あり。潜入捜査に乱闘騒ぎ。ヤンチャな時代にはヤクザな世界で暴れつつ、謎の殺人事件をスパッと解いた名探偵。きゃーっ。謎や事件が幾層にも絡み合い、キャラは魅力的で会話が楽しく、時間を忘れて一気読み。次第に事件の核心に近づいていく様は手に汗握るし、ロジカルな謎解きとエキサイティングな冒険活劇がみごとに融合。そして、そして──。
「えええっ!」と思わず声を出してしまったのは、これを読んだ人なら分かってくれるでしょ。これは、驚く。ホントに、驚く。いやあ、まったく気付かなかったよ。巧い。実に巧い。まさか、あの衝撃的なオープニングがこんな形で……。
何がすごいって、《この手のミステリ》にしては、物語や謎解きや構成が実に見事で、これが《この手のミステリ》であることに気付かせないのだ。ある仕掛けが施されてるんだけど、普通、こういうのって、その仕掛けのために全てが使われるので、仕掛け以外の部分はどーでもよかったりするわけよ。ところが、これはその仕掛けがなくても充分過ぎるほど面白い。その上、クライマックスでこのパンチ。いやぁ、実に見事に騙してくれちゃって。文句無しにノックダウンっすよ。
ああもう、焦れったい。とにかく、メチャクチャ感想を書きにくいのだ。こんなワケのわからない書評を読んでる暇があったら、本編を読みなさい。ミステリ好きなら、今年、これを逃しちゃいけない。そして何より、本格ミステリより冒険小説やサスペンスの方が好きという人にも自信を持って薦められる。冒険小説の面白さとワクワク感に、本格ミステリの驚きとカタルシスが加わった傑作。読め。さあ読め!
(03.5.8)《この本の詳細情報&注文画面へ》
最初、少年の話と少女の話は、まったく独立した短編として描かれている。冒頭の【りんごの顔】は少年の、2話目の【黄色い目の魚】は少女の、それぞれ子供の頃の話。3話目の【からっぽのバスタブ】で二人は同じ高校の生徒になっており、その御、話が進むにつれて少しずつ接点が増えていく、という流れ。
実は、表題作になっている【黄色い目の魚】を、あたしは10年ほど前に読んだことがある。新潮文庫の「新潮現代童話館I」というアンソロジーに入っていたのだ。それから10年が経って、こうして連作を構成する一話として再開できるとは思わなかった。他の話はいずれも最近書かれたものらしいのだが(著者の後書きで確認)、こうして一連の連作を読んでみると、最初からこういう世界を形作るワンピースだったのだ、ということが何の抵抗もなく納得できる。
短編というのは、いかなるものでも、人生のある瞬間を切り取ってみせる物語である。ということは、そこに描かれなかった前後の話が当然存在するのだ。この連作は、二人の少年少女を追っていくことで、二人自身に起こった変化を、ゆっくり、そして滲みとおるように読者に知らしめてくれる。二人それぞれの目線で描かれるので、どちらにも感情移入できるのだ。
みのりのトガリまくった精神が、青臭くガキ臭くも、どこか懐かしい傷みを持って胸に迫る。木島の、飄々とした中に合わせ持つ自我の強さが、じれったくも頼もしい。若干、キレイゴトに過ぎる部分がないではないが、これはある種のファンタジーなのだと思う。ただ、後半は普通の恋愛小説の要素が大きくなって来る。う〜ん、おばちゃんの勘では、この二人、恋人同士としてはあまり長続きしないと見たぞ(笑)。
まったくの個人的な趣味なのだけれど、この二人を、恋人同士にするのではなく、つかず離れずでなぜかずっと関わり合っていく、という微妙な位置のままに置いた話を読んでみたいな。
(03.5.10)《この本の詳細情報&注文画面へ》
もう、内容テンコモリ。襲撃、誘拐、バラバラ死体、アリバイ崩し、ダイイングメッセージ、そして雪密室(タイトルに雪密室と出てる割には、雪密室の登場は随分終わりのほうだけど)。これだけのものを詰め込みながら、あまり煩雑にはなっていない。舞台は大仰だけど謎解きがアッサリしてるからかな。いや、メインとなる2〜3のネタは謎解きも凝りに凝ってるんだけど、それ以外の枝葉末節はかなりアッサリと切り捨てているのだ。だから《事件起きました》→《伏線張りました》→《では真相を教えます》という流れのテンポが良すぎて、読者が考えたり不思議がったりする前に真相が出てきてしまう。ああもったいない。
それでも、ダイイングメッセージには笑わせてもらったし(笑うところか?)、この雪密室の解き方というのは、ちょっと新鮮。吹雪の山荘パターンなんだけど、大半がシリーズキャラで犯人らしき人物は……おおっ、そう来ましたか。なるほど。
弱点は、「これ、あるところにいる人には簡単に真相がわかっちゃうんじゃないか」という点なんだけど、まぁ、トラベルミステリなんて往々にしてそんなもんよね。いわゆるトラベルミステリにありがちな、名物情報や観光地案内が皆無に等しい分、そういうところで帳尻を合わせてるのかもしれない。合わせてどうする。
さて、今回は新たにシリーズキャラも加わって、キョウジと友梨の今後も楽しみになってきた。もちろん、《シリーズ犯人》も健在。この先どうなるんだろう?
(03.5.19)《この本の詳細情報&注文画面へ》
歌の翼に〜ピアノ教室は謎だらけ・菅浩江(ノンノベル)
【バイエルとソナチネ】商店街で出没する変質者。小学生のユイカが、その変質者に襲われたのだが──。子供だって無垢じゃない、ときとしては大人以上に小狡い駆け引きをする。それを証明するだけなら誰でもできるが、スガヒロエの真骨頂はそのあとの処理にある。
【英雄と皇帝】自宅のピアノ室ではどうも調子が出ないという中学生。その理由は──。おお、なるほど! これぞ推理、これぞ謎解き。ホントにありそうな話だけに、少女の苦悩がよく伝わる。
【大きな古時計】時計屋の前でみかける女性に恋をしたバンドマン。亮子は出逢いを演出するが──。うわははは、このオチは良いなあ。
【マイ・ウェイ】冴えない中年男、でも彼の救いは可愛い娘が自分を好きでいてくれることだった。しかし──。ああ、【バイエルとソナチネ】では子供の過ちを包んだスガヒロエは、大人にはしっかり現実を見つめさせるのだ。辛いが、事実と向き合うことこそ次の一歩。
【タランテラ】二人の小学生の女の子が競い合う、その度合いはどんどん激しくなって──。うわあ、こういうのって、あるよなあ。でも、真の主人公はピアノ講師の実千代だ。子供をモチーフに大人を描く。
【いつか王子様が】イジメにあってる女の子。その理由は、親の好みで着せた少女趣味な服だった──。これも子供をモチーフに大人の人間関係を描いた物語。
【トロイメライ】老人ホームでの音楽療法にでかけた亮子たちだったが──。ミステリ的醍醐味が満ち溢れてて、細かい部分の絵解きに「あ、そうか!」という快感がある。亮子の秘密も次第にクローズアップ。
【ラプソディ・イン・ブルー】ついに亮子の秘密があきらかに! うわあ、これは辛い。でも、《過去と対決》するために出かけた亮子を、他のメンバーが総出で探し回るくだりはなんとも感動的。
【お母さま聞いてちょうだい】亮子の秘密を知ってしまった皆が、亮子のために考えたこと。それは──。ええ、泣きました。もうポロポロと。文字を読んでるだけなのに、なんだか音が聞こえてくるようで、その脳内音楽をBGMにして読んでるうちに、涙が出てくるのだ。なんて幸せな、なんて感動的なクライマックス!
(03.5.20)《この本の詳細情報&注文画面へ》
からくり民主主義・高橋秀実(草思社)
海苔の養殖が壊滅的な打撃を受けた諌早湾干拓。オウムの問題で有名になった富士山麓の村。沖縄米軍基地。若狭湾の原発銀座。そういう硬派なものから、小さな親切運動や横山ノックのセクハラ事件、世界遺産・白川郷への観光、車椅子バスケなど、硬軟取り混ぜたラインナップが読みやすくも刺戟的だ。
特に、序章で「マスコミに寄せられるクレーム」を、第一章で「小さな親切運動」を挙げたのが効いている。どちらも大笑いできる内容なのだ。いや、その裏に潜むものは決して大笑いで済むような問題ではないのだが、表層だけを見ると実に笑える。例えば、小さな親切運動。いいことだ。ある学校では、電車内で席を譲ろうという運動をしているらしい。いいことだ。譲った数を競い合っているという。……多分、いいことだ。そして、その学校で《譲った回数の記録》を作った生徒に、筆者が訊ねてみた。「席を譲る秘訣って何?」──それに対する答は。
「まず、自分が座ること」
ぶわっはっはっは! ここで五分笑ったね、あたしゃ。そりゃそうだよなあ、最初は自分が座ってないと、譲れないよなあ。最初から立っていては親切な行動がとれない。うわははは。
とまあ、こういう例が散々出てきて、ひとしきり笑わせたり考えさせられたりしたあとで、テーマは次第に硬くなっていく。しかし著者の持ち味ともいうべき楽しい文章のおかけで、抵抗なく読めるのだ(いやホントに、硬い社会テーマなのに何度噴き出したことか)。沖縄の基地って、反対運動してる映像しか見てなかったけど、こんな実態があったのか。諌早湾の干拓って、漁船に横断幕張ってメガホンで論戦してたけど、現地はこうだったのか──けっこう、目からウロコ。そして如何にマスコミが《選んだ情報》しか流してないかよく分かる。
この本を薦めるもう一つの理由は、著者のスタンスにある。この著者は何も結論づけない。著者が何か結論を持っていて、取材の結果それに合致する情報だけを流すのなら、それは《選んだ情報》しか流さないマスコミと同じである。しかしこの著者は、何も決めつけず「あれえ? 違うなあ? 困ったなあ。こっちのいうことも分かるなあ。困ったなあ」と困りまくり、困ったまま現地を去っていく。《判断》は読者に任されるのである。「バカな大衆は何も考えなくていいから、私のいうとおり信じてナサイ」というような押しつけ情報が多い中で、この著者のスタンスは非常に好ましく、読んでいて楽しいのである。
(03.5.20)《この本の詳細情報&注文画面へ》
話がそれました。
ってことで、本格ミステリ作家の中でも名うての阪神ファンが書いた、阪神をテーマにした本格ミステリ集。まあ、こういうのは趣向が楽しいんであって、謎解きとかトリックとかはね……。それでも幾つかは「おっ」と思わせてくれて、けっこう楽しみました。でも、一番ウケたのは、カバー折り返しにある著者紹介の小森健太朗の項かな。小学校の書き初めで「江夏豊」って(笑)。とまれ、次は早く「新本格昇竜会の冒険」を。きっと書き初めで「星野仙一」と書いた子供が──あっ、今は阪神の監督ではないか!
【五人の王と昇天する男達の謎】北村薫:真相より、捨て石の最初の推理が好き。
【一九八五年の言霊】小森健太朗:巨人の中華思想を斬るくだりが愉快痛快。
【黄昏の阪神タイガース】E.D・ホック:ホックが阪神ファンなわけないやろ! そのせいか最も普通のミステリ。
【虎に捧げる密室】白峰良介:普通の犯罪小説に見えて、こ、この動機は……。
【阪神タイガース共犯事件】いしいひさいち:うわはははは。
【甲子園騒動】黒崎緑:お馴染み保住&和戸。懐かしすぎる選手名に大笑い。
【猛虎館の惨劇】有栖川有栖:いやあ、こんな企画でもキッチリ本格してるよなあ。
(03.5.21)《この本の詳細情報&注文画面へ》
椿山課長の七日間・浅田次郎(朝日新聞社)
ああもう、どこまでご都合主義なのどこまでアザトいの、こんなに巧く話が転がるわけないでしょうが、と文句を垂れつつ、その言葉とは裏腹に目からは滂沱の涙。何度、涙で文字が霞んだことか。涙と涙の間には、思わず噴き出してしまうようなコミカルな場面や、抱腹絶倒のお笑いシーンもふんだんに盛り込まれ、ああもう、おまえは松竹新喜劇か浅田次郎!
男気溢れるカッコイイ任侠道を堪能させてくれる「武田」の章。人間模様がコミカルで皮肉で、でも要所要所は涙無しでは読めない「椿山」の章。健気で可愛らしくて、クライマックスではこれ以上の泣きがあるかという「雄太」の章。三者三様で、それがちょっとずつ絡んでいくあたりはミエミエなんだけども、それでもしっかり泣かされてしまうんだよなあ。特に、「椿山」が昔付き合っていた女性から話を聞くくだりはもう……とてつもなく具体的に書いてしまうと(ミステリじゃないし、単なるワンシーンなのでネタバレにはならないと思うけど、何の予備知識もなしに読みたい人もいるだろうから反転させるね)椿山の父親が知子の職場に行って頭を下げるシーンなんか、もう切なくて切なくて。もうわんわん鳴いてしまった。犬か。泣いてしまった。
ある意味、ここに出てくる人物──特に女性は、個人がしっかり描かれてるというよりは、与えられた記号を全うしているに過ぎないわけで、そういう点では奥行きには欠けるかもしれない。でも、これだけのめり込ませてくれれば、充分。いわば文字で読む漫画、古い表現をすれば講談の手法なのかな、これは。笑えて泣けて感動できて、何も考えずにただ楽しめる。
ただ、このラストは非情にスッキリしないぞ。もっとうまく、こう、大団円!という感じにならないものかな。いや、泣けるんですけどね。
(03.5.20)《この本の詳細情報&注文画面へ》
間隔空きすぎだよお。だったらせめて裏表紙あたりに「これまでのあらすじ」を書いておいてくれるとかさあ。結局1巻も再読しちゃったじゃないか。薄いからいいようなものの、これが大長編だったら永遠に2巻は読めないとこだった。
さて、1巻の最後で《ショッキングな事実》を聞いてしまった毬子は、その翌日、熱を出して寝込んでしまう。そんな毬子を心配しながらも、皆の話題は《あの事件》に──。少年少女の、繊細な心の駆け引きも折り込みつつ、夏の日々は過ぎていく。
と、呑気に構えてたら──どっしぇえええ。ななな、なんなんだ、このラストの展開は! ああもう、この時点ではこれがどう転ぶかわからないし、2巻での最大の事件がこれだろうからここには書けない。書けないが、しかし──これじゃあいったい、どうなるのよお! こら恩田陸、ちゃんと最後まで話を決めて書いてるんだろなあ? 行き当たりばったりで書いてやしないよなあ? いや、そんなふうに勘ぐりたくなるくらい、あまりに突然の出来事なのよ。
とにかく感想&評価は、3巻まで出そろってからってことで。それにしても、3巻が出た頃には、またそれまでを忘れてるんだろうなあ。ふぅ。また再読かよ。ま、読みやすいし面白いからいいんだけど。
(03.5.26)《この本の詳細情報&注文画面へ》
おれは非情勤・東野圭吾(集英社文庫)
ハードボイルドで子供が好きじゃないと言いつつ、仕事はちゃんとやるし、子供のこともちゃんと見てる。普通なら相手が子供だからとごまかすようなことも、ちゃんと子供を一人前にみて話してきかせる。そういうスタンスがまず良いのよね。
謎解きとしては、あまりにシンプルすぎたり、かなり無理があったりという部分もあるけれど、それはジュブナイルだもの、これくらいのお遊びはあってもいいでしょ。それこそ、子供でも「おおっ!」と膝を打てるようなレベルで、かといって簡単過ぎもせず大人でもきっちり騙される秀作ばかり。
毎回勤務する学校が変わって事件が起きる「おれは非情勤」が連作として6作。それに、やんちゃな子供が主人公のミステリが2編収録。
【6×3】ダイイングメッセージもの。でもさ(反転)この場合、犯人の名前を書き残すより、「夫」とかって書きそうじゃない? それを「二人」と読み違えるなんてのも面白いかな、と。
【1/64】教室で起こった盗難事件。岡嶋二人のあの名作を思い出した。
【10×5+5+1】これもダイイングメッセージだけど、(反転)これくらいの計算、黒板に書かんでも暗算でできるだろ先生。
【ウラコン】マンションから飛び降りた女子生徒の秘密──うわあ、ヤな話。ホントにヤな話だなあ、これ。でも、最後に子供を諭す先生のセリフがなかなか。
【ムトタト】脅迫状事件。おおお、巧い! いや、これは盲点だったかも。ホンの小さなことなんだけど、ジュブナイルならではだなあ。
【カミノミズ】毒物事件。これもムトタトと同じタイプの趣向だけど、しっかり騙された。そうか、簡単なことなのになあ。
【放火魔をさがせ】やんちゃな竜太クンのシリーズ。放火魔を掴まえるために町内で夜回りを始めたが──おお、これに気付いて犯人逮捕とは、竜太くん、大きくなっても(反転)シンナーはやっちゃ駄目よ。
【幽霊からの電話】留守電に入っていたメッセージは間違い電話だった。でも、その電話をした当人は既に死んでいて──。従来の子供向けミステリって感じで毒はないけど、キレイなエンディング。
(03.5.27)《この本の詳細情報&注文画面へ》
風水火那子の冒険・山田正紀(カッパノベルス)
【サマータイム】海の家で起こった殺人事件。シャワー室で女性の他殺死体が発見された。今日の昼までここで働いていたバイトの女の子だと思われたが、同業者たちはよく分からないという……。うわあ、悲しいなあ。細かい部分が全部伏線だったという謎解きの醍醐味と、なんともいえない切ないエンディングがたまらない。
【麺とスープと殺人と】7つのご当地ラーメンの店が集まるラーメン横町で、死体が発見された。取材に来たグルメ評論家らしいのだが、彼は妙なラーメンの食べ方をしていて……。ぶわはははは。刑事の設定がそもそもコミカルで、胃の内容物から食べたラーメンを推理するってのもバカバカしくて笑えるんだけど、最後はキッチリ本格していてビックリ。「本格ミステリ02」所収。
【ハブ】高速バスの座席に爆弾をしかけたという通報を受け、刑事はバスに乗り込んだ。その座席に座っているのは女性。立ち上がった時点でスイッチが入り、爆発するという仕掛け。他の乗客を避難させて、刑事はその席に座っている女性とともにバスに乗って公安の待つ臨海公園へ向かう……。おおお、これ、イチオシ! 刑事は場ツナギのために最近手がけている事件の話をするのだが、それに対する安楽椅子探偵ぶりも見事ながら、その後が! これはもう、「踊る大捜査線」の原作にしたいくらいだわ。
【極東メリー】朝餉のスープもシェービングクリームもそのままに乗員が消えてしまったマリー・セレスト号事件。それとそっくりな事件が日本海で起こった。かの国の工作船とおぼしき不審船に乗り込んだところ、朝食の支度もシェービングクリームもそのままに、乗員が消えていたのだ──。うわあ、こんな解決が! 納得させられてしまったぜ。工作員の悲哀も切ない。
(03.5.28)《この本の詳細情報&注文画面へ》
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