弟を何とか大学に行かせてやりたい、でも仕事がない。苦悩した兄は、ついに泥棒に入ることに。ところが屋敷内にいた老女に騒がれ、殺してしまう。兄が逮捕されたあと、残された弟は《強盗殺人犯の弟》としての人生を余儀なくされ──。
蟹塚縁起・梨木香歩(理論社)
梨木香歩の文章に、木内達朗が絵をつけた、日本昔話風な絵本。
幸福の軛・清水義範(幻冬舎)
ある日、神社の境内で中学生の生首が発見される。頬には「ブタ」という文字が刻まれ、口の中には「鬼面羅大魔王」と書かれた紙が押し込まれていた。大学助教授でありスクールカウンセラーでもある中原は、その被害者をカウンセリングした経験があり、刑事に話をするのだが──。
「ソードマスターの犯罪」「鋼鉄番長の密室」に続く、「小説スパイラル〜推理の絆〜」シリーズ3冊目。過去2作にもお薦めマークがついているのだけれど、ついに3冊目にもつけちゃいましたよ。うわははは、あたしってかなり気に入ってるなあ、このシリーズ。
ぬしさまへ・畠中恵(新潮社)
「しゃばけ」に続く、虚弱体質の若旦那と妖怪たちの人情推理シリーズ2冊目。1作目はなかなかに読みごたえのある長編だったが、今回はキャラ・設定そのままに連作短編。この設定だと連作短編の方が向いてるのは確かだが、1作目のネタバレっぽい記述もあるし、1作目に出てきた情報を踏まえて話が展開するので、いきなりこれを読むよりは、やはり「しゃばけ」から入った方がよさそう。
昭和を代表する作家だった、松本清張と司馬遼太郎。それぞれ、社会派推理の創始者・時代小説の大家と評されるとともに《歴史小説家》として大きな業績を残している。しかし、その考え方や手法には大きな違いがあった。編集者としてこの大作家二人と長年にわかって接してきた著者ならではの、清張・司馬の比較論。
料理研究家として少し名前が知られるようになってきた菜津はある日、十年以上前に勤めていた会社の元同僚から電話を受ける。当時の会社の先輩、岸が交通事故で急死したというのだ。通夜に駆けつけた菜津は、そこで昔の知り合い・藤倉に再会する。懐かしさに胸ときめかす菜津だったが、岸の死に他殺の可能性があるとして警察が捜査を始めたと聞き……。
名探偵カマキリと5つの怪事件・ウィリアム・コツウィンクル(早川書房)
「ハリネズミの本棚」と題された、児童向け叢書の一冊。このシリーズには、あのクーンツによる「ぬいぐるみ団オドキンズ」が含まれてることもあって、注目度も高い。冒険ありファンタジーありメルヘンありの幅の広い叢書だが、これは叢書の中で初のミステリ。
UMAハンター馬子〜闇に光る目・田中啓文(学研ウルフノベルス)
「UMAハンター馬子(1)〜湖の秘密」に続く、シリーズ2冊目。1作目は学研M文庫で出たのだが、今回は創刊されたばかりのノベルスだ。装丁の雰囲気もガラリと変わって、一見、とても同じシリーズには見えないあたりが何とも。でも、この表紙イラストはイメージそのまんまである。特にイルカちゃんがいいなあ(笑)。
少年たちの四季・我孫子武丸(集英社文庫)
我孫子武丸が描くジュブナイル(とYAの中間あたりか?)ミステリの連作シリーズ。とあるマンションに引っ越してきた荻原さんは、大人のくせにゲームばかりしている。そこに顔を出すようになった少年や少女が巻き込まれた事件を、荻原さんが解いていく──という趣向。でも単に謎を解くだけでなく、その少年・少女の心の問題にも荻原さんは優しく関わっていく。そして少年・少女も、幼いながら自分の頭と心で懸命に考え、懸命に悩む。それがこのシリーズの魅力である。帯に書かれた「青春ミステリ」というネーミングは、陳腐ではあるけれど、でもまさにこの時代にしか生まれ得ない事件ばかりなのだ。
手紙・東野圭吾(毎日新聞社)
ああ、いいっ。単に、「辛い目に遭ったのに負けずに頑張りました」で終わらせるような薄っぺらい感動ではなく、いろいろな事象が、読者に「考えろ!」と迫って来るような物語。
最初は、読むのが辛いんじゃないかと思ってた。だって設定からして可哀想なんだもん。でも、この手のフィクションにありがちな、《悪意を持って、面と向かって差別する悪役》がいないことが、驚きにして逆にリアルだった。みんな、「悪いのは兄であって、この人には罪はない。この人がいい人だっていうのもわかってる。差別なんかしちゃいけない」というのをちゃんと分かってて、でも「関わりたくない」という思いが出てしまう。「近づかないでほしい」と思ってしまう。そして、そんなふうに思ってしまう自分を情けなく感じたり。これって、実際に《犯罪者の家族》と個人で向き合ったら、普通の常識を持った人なら誰でも、そう感じてしまうんじゃないかな。
今、世間で何か事件が起こり、その犯人が逮捕されたら、その家族には嫌がらせが引きも切らないという。でもそれは全て匿名の悪意だ(それが卑怯なんだけどね)。名乗ってそんな嫌がらせをする人はいない。ましてや、その家族と自分が友人だったり同僚だったりしたら、そんなことは出来ないと思う。そういう「近い人」を描いており、無関係で悪意の第三者はあまり登場しないので、無駄に腹を立てるシーンがないのだ。逆に、「関わりになりたくない、と思ってしまう周囲の人」の気持ちまで考えさせられてしまって、主人公の悲劇のヒロイズムに終始しない深さがある。
バイト先、好きになった人、学校、一緒に夢を目指す仲間、そして職場。そういった場所で、主人公は、ある時は兄のことを隠し、またある時は打ち明ける。その度にぶつかる障害、苦悩、葛藤。そして主人公は最後にひとつの決心をする。
その決心が果たして正しいことなのかどうか。ここまで読んできた読者には、彼の思いや環境は痛いほどわかっているから、正しい云々よりも、彼の幸せを願う気持ちになっている。そう決心したのなら、それはそれで良かったのかも、と思わせてくれる。しかし、その後に彼が出逢った「手紙」……。
涙が出た。
これから、彼は、そして兄は、どうなるのか。兄が出所したとき、彼はどうするのか。彼は決心を貫くのか、それとも心を変えるのか。その答は、読者ひとりひとりに委ねられるのだ。
これは、お薦め。文句無しのお薦め。こんな書評を読んでる暇があったら、本編を読め。
(03.6.29)《この本の詳細情報&注文画面へ》
ある夜、とうきちが眠っていると、なにやらさわさわと音がする。目を覚ましてみたら、それは沢蟹の大群。どうやら、沢蟹たちは名主の家に向かっているらしい。実は昨日、とうきちは、沢蟹を殺して遊んでいる名主の息子を窘めたという出来事があったのだ──。
一見、「鶴の恩返し」パターンに思えるが、そこにとうきちの前世の記憶が絡んで来て、話は思わぬ展開をみせる。「へえ、こういう話だったんだあ」と、ちょっと感動しちゃったわよ。
結末は、まぁこういう《昔話》にあちがちのもので、前後して出された絵本「マジョモリ」や「ペンキや」のように《最後に驚かす》という趣向はないのだけれど、その分、逆にシンミリできる味が残る。
それにしても、相変わらず、漢字や言葉が難しく、いったい何歳あたりが対象なのかがわからないなあ。ここんとこ、この手の絵本が多いけれど、「からくりからくさ」のような大人向けの長い話を、また早く書いて欲しいぞ。
(03.6.30)《この本の詳細情報&注文画面へ》
清水義範のミステリと言えば、「やっとかめ探偵団」のシリーズがあるけれど、あれは本格テイストを挟みつつも実は社会派。ただし名古屋弁ばりばりの「ご町内の社会派」ね。その後、「迷宮」を経て、本書では真っ向からのミステリとなっている。
校内でおこる執拗ないじめ。連続する殺人事件。振り回される刑事やカウンセラー。追いかける雑誌記者、錯乱する父母、責任のがれに腐心する学校や教師。そんな事件を描きながら、「病んだ子供」「病んだ社会」を浮彫にする。壊れたのは子供じゃない、親が壊れたから子供も壊れたんだという登場人物の言葉に、この物語のテーマを見る思いがする。
本格ミステリと言ってしまうには、伏線が弱くてアンフェアの観は拭えない。この「犯人」は確かに意外ではあるけれど、「なるほど、そうだったのか騙された!」というカタルシスに乏しいのは残念。でも、あたしゃ絶対に別のある人物が犯人だと思ってて、それは今にして考えれば思いきりミスディレクションに引っかかってるんだけどね。
テーマの掘り下げが深く、構成の妙もある。エピソードのひとつひとつが立っていて、淡泊な文章なのにリアリティがある。寧ろ、帯に《本格ミステリ》と書かない方がいいんじゃなかろうか。本格ミステリと書かれると、どうしても読む側は《犯人あて》をしようとする。《騙される快感》を欲してしまう。でもこの作品は、そういうタイプの小説じゃあないんじゃないかな。
誰もが病んでいる。しかし、誰もが病んでいるということは、数の論理でいけば、それが普通だということだ。誰しもが個々の事情を持ち、少しずつの傷みを持っている。それと戦いながら、あるいは折り合いをつけながら生きていくのが人生だとするなら、結果的に《救われなかった》登場人物達の存在が、読んだ後も重く心に残るのである。
(03.6.5)《この本の詳細情報&注文画面へ》
小説スパイラル〜推理の絆〜3 エリアス・ザウエルの人喰いピアノ・城平京(エニックス)
思わず背筋を6千匹の小さな虫が一斉に這いあがっていくかのような《キャラ》にさえ慣れれば、これはかなりの本格。今回はまた、お笑いモードだった「鋼鉄番長の密室」とは打って変わって、道具建てから背景から、まごうかたなき《怪奇とロマンと冒険》である。
幼い頃、ピアノ教室で一緒だったお嬢様・史緒と久しぶりに再会した歩。しかし史緒の様子がおかしい。なんとなれば、史緒の家にあるピアノはいわくつきの「人喰いピアノ」であり、祖父はそのピアノに喰い殺されたというのだ。その呪いを解く方法はただ一つ、難曲「月光」を完璧に、その上心を込めて弾くことだという。演奏を頼まれた歩は──。
格式高い家に育った、疑うことを知らない無垢な少女。この、おどろおどろしいまでの怪奇が、《名探偵》の論理によって一片の疑問も残さず絵解きされるその様は、まさに本格ミステリの醍醐味よ。《キャラ》のせいで、そうは見えないかもしれないけどさっ。ヤングアダルト向けの本格ミステリ入門編としては、相当に良く出来てる。
同時収録の《犯人当てミステリ》のコーナーも、今回絶好調。【青ひげは死んだ】【カニの香りの悪魔】【ハイスクール・デイズ】の3本が収録されてるけど、中でも白眉は【青ひげは死んだ】でしょう。実効性には若干疑わしい向きは残るけれど、このトリック、この仕掛けには思わずブラボー! 【カニの香りの悪魔】も、一件突拍子もないような話に思えて、推理の要は実に論理的且つクイズ向き。お試しあれ。
(03.7.1)《この本の詳細情報&注文画面へ》
短編ということで、個々のキャラがやや一面的になってしまうのは、ある程度仕方がないか。パズラーに近いものもあれば、全然「推理」とは無関係な人情ものもある。総じて地味ではあるけれど、新人離れした文章と味わいは、安心して読めるしハズレもないんだよね。今後も楽しみ。
【ぬしさまへ】長崎屋の手代であり、実は若旦那を守る妖怪でもある仁吉は、その美貌のせいで女性からのつけ文が引きもきらない。ところがある日、仁吉につけ文をした女が死体で見つかって……。
【栄吉の菓子】若旦那の親友である菓子職人の栄吉は、餡こを作るのが大の苦手。ところがその栄吉の菓子を食べて死人が出たという……。
【空のビードロ】若旦那とは腹違いの兄であるにも関わらず、長崎屋とは縁を切って桶屋に奉公している松之助。ところが、その桶屋の周囲で猫殺しが頻発する。
【四布の布団】若旦那の新品の布団は、なぜか夜中にむせび泣く。不良品を掴まされたと布団屋に乗り込んだ長崎屋の面々が、そこで目にしたものは──。
【仁吉の思い人】千年以上生きている妖怪の仁吉。彼にも思い人はいた。平安時代から現代(といっても江戸だけど)まで、時代を超えた仁吉のロマンス。
【虹を見し事】若旦那の周囲の様子がおかしい。いつも五月蝿い妖怪どもはまったく姿を見せないし、過保護なまでの仁吉たちも、なんだかそっけない。自分の周囲でいったい何が起こっているのか? スリリングな展開に、哀切極まるラスト。イチオシ。この短編集の掉尾を飾るに相応しい。
(03.7.2)《この本の詳細情報&注文画面へ》
清張さんと司馬さん・半藤一利(NHK出版)
最初からネタを割ってしまうようで申し訳ないが、司馬遼太郎は《歴史を鳥瞰する》のに対し、松本清張は《歴史の地べたを這い回る》のだという。この表現を読んだときには、思わず膝を打った。ともに歴史小説家として名作をたくさん描いているが、そのスタンスには大きな違いがある。その違いが何なのか、どこから来るのか。作風の違いというだけではなく、何か根本的な違いがある──と、長年思っていたのだ。この表現を目の当たりにして、ようやく、ストンと納得できる模範解答に巡り会え思い。当人を良く知る人物が手がけた作家論というのは、これだから侮れない。おまけに、著者の半藤氏も今では歴史モノの大家だし。
第2章では「推理小説家」松本清張にスポットが当てられる。まあ、既に有名なことばかりで「本格ミステリは社会派に虐げられてきた」という意見の人にとっては腹の立つ章かもしれないけれど、それでもあたしは「動機を大事にする」という松本清張のスタンスには諸手を挙げて賛成だ。動機と言っても個人的な色や欲ではなく、社会悪を告発することに通じる動機が清張の持ち味なんだし。その清張のスタンスは、推理小説のみならず、歴史小説やノンフィクションなど、他の分野にも通じるものである。つまり、清張の「動機重視」とは、推理小説にとどまらない「清張の小説全てに流れる作法」なのだ。本格ミステリだ社会派だと、小さなジャンルのせめぎ合いではないのではないか。
また、司馬遼太郎の項では、あたしが常々不思議に思っていた、「これだけの歴史小説家が、どうして昭和史を書かなかったのか」の答が示されたのには感動した。二二六事件やノモンハン事件など、書くに足る題材は多い。司馬遼太郎も松本清張も太平洋戦争には従軍した経験を持つ。清張が「二・二六事件」や「戦後日本の黒い霧」に代表されるような昭和史ノンフィクションを著しているのに対し、司馬にはそれがない。何が違うのか──それが即ち、上で述べた、二人の作法の違いに起因するのだ。
とまぁ、そういう両者の比較もあり、近しい人物しかしらないような茶目っ気たっぷりのエピソードもあり、両者の経歴や生い立ちもあり、長者番付のようなやや下世話な情報もありで、硬軟取り混ぜた、実に読みごたえのある作家論。まったく難しくなく、半藤氏が「こんな人達だったんだよ」と、大好きな先輩二人の話をしてくれる読みやすい作家論だ。お薦め。
(03.7.3)《この本の詳細情報&注文画面へ》
唇のあとに続くすべてのこと・永井するみ(光文社)
永井するみの描く、恋愛小説。ある人物の死に関していろいろと事実が明らかになっていくサスペンスフルな過程や、サプライズ極まる真相など、ミステリとしての構成・体裁・道具建ては充分なのだけれど、それでもやはり、これはミステリではなく恋愛小説だと思う。いや、むしろ、ミステリ的な手法が恋愛小説にメリハリを与えるという相乗効果のなせる技か。
結婚し、子どももいる38歳の菜津が、偶然再会した藤倉に対して抱く思い。「会いたい」という衝動を前面に押し出し、「欲しい」という衝動も直截に表す。そこに、十代の恋愛のような青臭さはないし、二十代のような面倒くさい手続きもない。読者によっては「もっと精神的な機微を読みたい」「結局不倫の話なのに、キレイゴトで済ませてる」と思う人もいるかもしれないが、三十代も後半になっての、それも家庭を持つもの同士の恋愛って、むしろこういうものなんじゃないかと思う。あの人には会いたいけれど、でも自分の家庭や仕事や生活を壊す気は毛頭ない。恋愛の衝動が普通の生活の中から迸り、でも普通の生活を脅かさないよう細心の注意を払う。そんな恋愛。そういう点では、かなりリアルと言ってもいい。
岸の死については、上手なミスディレクションが張り巡らされ、このあたりはさすがにミステリ畑の作家である。すっかり騙された。ちょっとずつ新事実が明らかになるにつれて、「げ、騙されてた」と臍を噛む、その繰り返し。カタルシスも充分だ。
特筆すべきは、菜津を主人公に据えながらも、その周辺──藤倉も、夫の良平も、仕事仲間の康恵も、元同僚の美保子も、そして死んでしまった岸も、岸の妻も──それぞれに思いがあり、生活があり、恋心があるということを丹念に書き込んでいる点だ。これがなければ、菜津という中年女の自分本位なヒロイズムにしかならない。それを、周囲の人のさまざまな価値観や思いを彼女に知らせることによって、複雑にして衝撃的なドラマを作り上げている。お薦め。但し、男性にはウケないかもしれないなー。
(03.7.5)《この本の詳細情報&注文画面へ》
登場人物──いや、人物じゃなくて昆虫なんだけど──は、まず名探偵のカマキリ。人の服装を見て、昨夜の行動などをピタリと当てたりする。その相棒は、医者でもあるバッタ博士。もうこれだけでホームズ&ワトソンのパロディだと分かる。物語もパズラーというよりはホームズ譚そのもの。下宿の大家さんはシャクトリムシ夫人だし(笑)。
昆虫の生態が謎解きに使われるのは、鳥飼否宇「昆虫探偵」と同じだけれど、こちらは児童モノなのでよりシンプルにより分かりやすくなっている。でも、主眼はやはりバグランド王国に暮らす個性的な昆虫が織りなす、コミカルでファンタジックな世界。ただ、ホームズを読んだことがなければ面白味は半減するかも。
【消えたチョウの怪事件】サーカス団から浚われた蝶の行方は? 誘拐の目的には膝を打った。何にウケたって、タランチュラの解毒方法が……。
【おびえきった学者の怪事件】チャタテムシ教授が食べた本には暗号が隠されていた──ってゆ〜か、喰うなよ!(笑)次第にバッタ博士のキャラが立って来るのが楽しいな。
【イモムシの頭の怪事件】サスペンスという点では、これがイチオシ。敵の宮殿内に忍び込んでからの展開は、児童ものとは思えないスリリングさだ。キャラの配置も申し分無し。
【首なし怪物の怪事件】夜な夜な首のない怪物が出没すると聞き、調査に出かけたカマキリ&バッタ。「首がなくても生きていける」という昆虫の悲哀が、こんな切ない物語になるとは!
【王冠盗難の怪事件】まさに昆虫の生態が決め手になる作品で「へえ」と思わされた。このナナフシとの関係は、今後、何か話が広がりそうな気配。
(03.7.6)《この本の詳細情報&注文画面へ》
もちろん、各章に「ベストヒットUMA」のコーナー付き。ある意味、本編よりこっちの方がお薦め──なんて言うと怒られるかな?
【恐怖の超猿人】超猿人ヒバゴンが過去に目撃されている広島県は比婆山。その山中へおんびき祭文の公演にでかけた馬子とイルカは、超猿人マニアで超常現象専門ライターという有坂みどりと知り合う。ひょんなことから、飛騨のヒダゴンを探して広島から飛騨まで遠征することになった3人。しかしそこに待っていたのは──。読み終わってしばらく、頭の中を黄桜のCMソングが駆けめぐった。まあいいんですけど。《ひだりがみ》の正体に関する推理は、「無理矢理」と「科学的」のまさにボーダーライン上。いえいえ、こういうの好きですけどね(笑)。いろいろな要素がたっぷり詰め込まれてて、これがどう収束するのかと思ったら、最期にはキッチリ収まるからすごい。収まった後のダジャレ一発で、もう大満足。
【水中からの挑戦】海辺に流れ着く、謎の漂流物グロブスター。祭の日程を間違えて村にやってきた馬子とイルカは、その「裏の祭」を偶然目撃してしまい……。歴史とか、伝奇とか、因果とか、いくらでもオドロオドロしくドラマチックに作れそうな題材を、シモのダジャレで〆る怪作。いや、笑いましたけどね。推理の要素が少ないのは残念。
【闇に光る目】ごく最近も話題になった吸血動物チュパカブラ。奈良にやって来た馬子とイルカは、殺人事件に巻き込まれて──。これ、実は一番肝心なダジャレの意味がわからなかったのよね。ダジャレであるだけでなく、それがこの物語の〆であり「謎解き」の総まとめでもあるわけで、ダジャレが理解できなければ物語の主眼が理解できないと同じなのだ。で、掟破りではあるけれど、さすスジにお伺いを立てた。……うわあ、そりゃわかんない。クトゥルー系のテクニカルタームだもの。伝奇の好きな人は一目見たらピンと来るのかもしれないが、これは素人にはわかりませんわ。まったく、好き勝手しよるなあ、田中さん。
(03.7.4)《この本の詳細情報&注文画面へ》
【ぼくの推理研究】ぼくの住んでいるマンションから、女性が落ちた。自殺か、他殺か。そんな中、友だちの親が疑われて──。細かい手がかりが一つの絵を描く様は見事だけれど、「気付けよ警察」という気がしないでもない。
【凍てついた季節】貰ったゲームソフト。学校が舞台のそのゲームは、あまりに現実と似通っていた。ではゲームの中で起きた事件が、現実でも起きるのでは……。精神的に揺らいでいる女子生徒の一人称視点なので、緊迫感はかなり高まる。ただ、ちょっとアンフェアかな。子どもより親に読ませたい話。
【死神になった少年】未来を見る力があるという友だち。彼には「人の死」が見える。彼はそれを僕に証明してみせた──。トリックとしてはシンプルなものだが、気付かなかった。なるほど。しかしそれ以上に、子どもの持つ悪意が印象に残る。
【少女たちの戦争】学校では親しい友だちのいない私に、声をかけてきた少女。しかし彼女は数日後に自殺してしまって──。ああ、これこそ、この時代にしか通用のしない話かも。
(03.7.7)《この本の詳細情報&注文画面へ》
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