ザ・ベストミステリーズ2003・日本推理作家協会(講談社)
毎年恒例の推理小説年鑑である。が。う〜〜〜〜ん、今回はすでに単行本収録されてるのが大半で、初見の作品は半分しかなかったよ(泣)。いや、もちろん既読作品もレベルが高いものばかり集まっていて、確かに年鑑の名に相応しい出来だ。タイミングの問題だな、これは。
シリーズ3作目。どんな人気シリーズも3冊目くらいになるとちょっとマンネリになったり、過去の人気作の焼き直しみたいなのが入ったりするものだが、このシリーズに関しては全然パワーが落ちない。作中ではちゃんと時間が流れていて、マコトもいつまでもガキではないのだけれど、その「成長」が微妙且つ絶妙で、毎回新しい発見があるのよね。いいなあ。
LAST・石田衣良(講談社)
おおっと! これまでの石田衣良作品に魅せられてきた人にとっては、かなり意外性の高い──戸惑ってしまうような作品集だ。人生の崖っぷちにいる人々を描いた、「もう終わり」が共通テーマの救いのない物語。ダーク&ビターっていうのかな。読後感の悪いこと悪いこと(笑)。ただ、妙に後を引くのよねえ。
ススキノ・ハーフボイルド・東直己(双葉社)
省吾は高校3年生。北海道大学を目指す受験生だ。夏休み、彼は世界史の問題集を解いていた。10才年上の恋人、真麻の裸の体の上で──。セックスと、ススキノと、酒と、そして受験勉強。そつなくこなしていた省吾だったが、同級生の女の子が覚醒剤で逮捕されたというニュースが飛び込んできた! ススキノを舞台に繰り広げられる、省吾の(ハードボイルドに成りきれない)ハーフボイルドな一夏の体験。
1998年10月から毎日新聞に月刊連載されていた1コーナーを1冊にまとめたもの。要は、毎回1ネタのコラムなのだけれど、それを「毎月新聞」という新聞仕立てにしたレイアウト(3コママンガもついている)と、内容のおかしさ&鋭さが面白い。イラストも可愛らしくて、思わず手にとりたくなる「新聞」だ。装丁を見れば、雰囲気が伝わると思います。
深追い・横山秀夫(実業之日本社)
良質にして新機軸の警察小説をたくさん書いている人だけど、今回も、各短編がそれぞれ警察の異なる部署の人が主人公。設定、ストーリー、エピソード、人物背景と、どれをとっても非常にレベルが高い。
十四子は高校3年生。夏休みのある日、隣家から不審な物音が聞こえた。直後に隣家から出てきたのは、その家の息子。気にせず塾に向かった十四子だが、出先で自転車を盗まれ携帯電話もなくしてしまう。そしてその夜、隣家の母親が遺体で発見される。十四子の自転車と携帯電話を盗んだのは、そのまま行方を眩ませている息子だった──。
罪と罠のアドレス・鈴木輝一郎(実業之日本社)
インターネットを舞台にした犯罪を集めた連作短編集。ネット犯罪といっても、テクニカルな部分にはあまりフォーカスせず、それを起こした人間の状況の方を描き込んでいるため、すんなり入りやすい。シリーズキャラである「村山富市に似た」老刑事・木津がなかなかの曲者。犯人視点の倒叙形式をとっていることもあり、刑事コロンボや古畑任三郎に似た風合いがある。総じて高レベル。
ウェブ連載の51回から80回までを収録した、シリーズ第2弾。森助教授と3人の研究室メンバー(隣の研究室の助教授・秘書・助手)による対談──というより「わぁわぁ言うとります」形式のエッセイですね。第1巻は50回分収録で、今回は30回分。前は厚すぎたので、丁度良くなった。寝る前に1回分とか、トイレで1回分とか、そういう読み方もいいかも。一気読みするより、ちょっとずつ読んで、その都度、自分の頭でも考えてみるという読み方の方が楽しめるのではないかしら。
ハリー・ポッターと炎のゴブレット(上下巻)・J.K.ローリング(静山社)
シリーズ第4弾。あいもかわらず夏休みにはダズリー一家と暮らしているハリーだが、今年はちょっと違う。休みの後半には、ウィズリー家の人達が迎えに来て、そして一緒にクィディッチのW杯を見にいくんだから! 世界中の魔法使いが集まって燃えまくったW杯。そして新学期が始まりホグワーツに戻ったら──え? 今年のクイディッチ選手権は中止? 代わりに、100年ぶりに再開された、三大魔法学校対抗試合をやるって?
ただ、こういうアンソロジーの利点というのは、これまで手に取る機会のなかった作家さんの作品や、初めて知る作家さんの作品を読めることかな。「あ、この人の他の話、読んでみたい」っていうのもあったし。それだけでアンソロジーを読む価値があるのかもしれない。
【虚栄の市】北村薫:「街の灯」所収
【バルーン・タウンの手毬歌】松尾由美:「バルーン・タウンの手毬唄」所収
【WISH】本多孝好:「MOMENT」所収
【第三の時効】横山秀夫:どんでん返しがオミゴト。娘の気持ちをとか、もっといろいろ書き込んで欲しかった。
【キミドリの神様】石田衣良:「骨音〜池袋ウエストゲートパークIII」所収
【鏡の家のアリス】加納朋子:「虹の家のアリス」所収
【緋友禅】北森鴻:「緋友禅〜旗師・冬狐堂」所収
【犬も歩けば】笹森稜平:ヤクザの親分から愛犬探しを命じられる。意外な展開はコミカルで巧緻。
【密室の中のジョセフィーヌ】柄刀一:密室殺人事件に隠された意外な動機。う〜ん、他に方法がありそうな。
【縊心伝心】法月綸太郎:「法月綸太郎の功績」所収
【荒墟】朝松健:室町時代を舞台に綴られるホラー。殺戮シーンの描写が素晴らしい。怖いなあ。
【見えない悪意】緑川聖司:安楽椅子探偵ものの典型。でも妄想に近い。安易に結論を出せる謎じゃない筈。
【犬 Dog】乙一:「GOTH〜リストカット事件」所収
【なけなし三昧】宮部みゆき:「ぼんくら」の同心が登場。謎の見せ方と落とし方、江戸情緒はさすが。
【ピコーン!】舞城王太郎:舞城初体験。こんなのを書くのか! ミステリとはちと違うが味がある。
【チルドレン】伊坂幸太郎:家庭裁判所の調査官が主人公。フェアで意外性も充分。話も面白い。お薦め。
【鬼女の夢】高橋克彦:思い出の中の叔母と、その実像の違い。さすがのテクニック。文学だ。読ませる。
【別れの唄】翔田寛:これは拾いもの! 明治初期が舞台だが、時代性を損なわずにきっちり本格。
【首吊少女亭】:旅先のイギリスで立ち寄ったパブでの話。オチは読めるがそれでも怖い。
(03.9.24)《この本の詳細情報&注文画面へ》
骨音〜池袋ウエストゲートパークIII・石田衣良(文藝春秋)
【骨音】池袋で頻発するホームレス襲撃事件。その目的とは……? うわあ、よくこんなこと考えつくなあ。対決シーンはヒヤヒヤしちゃったよ。
【西一番街テイクアウト】これ、お薦め! これ、イチオシ! 過去のシリーズ全作の中でも1、2の物語だと思う。ある日マコトが出逢った少女。彼女の母親はちょっとした厄介事に巻き込まれており、それをマコトとキングが中心になって助けるという話なのだけれど──うわあ、キングが「聞いたことのない優しい声を出す」ところなんて、ゾクゾクするよ。なんてカッコイイの。マコトのお母さんまで「参戦」する、痛快にして暖かい物語。とにかくこの一編はお薦めだ。
【キミドリの神様】池袋界隈でのみ通用する「通過」──ぽんど。地域振興のために打ち出されたそれは、またたく間に池袋に広まった。仕掛人は「まちづくり」を旗印に掲げる若きNPOの代表で……。うわあ、何でもすぐに話に取り入れるなあ(笑)。頭が良くて正義感に燃える世間知らずのぼんぼん、っていうキャラクタは秀逸。
【西口ミッドサマー狂乱 】評判になっている新しいドラッグ。人気の高い、新進のレイヴ(ロックコンサートみたいなものって理解でいいのかな?)。そのふたつが舞台を同じくしたとき、悲劇は起こる──。久しぶりにマコトの「恋」が描かれる一編。マコトの恋って、どうしていつも、始まりも終わりもこんなに切ないのかなあ。
(03.9.26)《この本の詳細情報&注文画面へ》
【ラストライド】二進も三進も行かなくなった多重債務者。債権はついに闇金融に一本化され、「妻と娘を売り飛ばす」か「保険金をかけて自分が死ぬか」の選択を迫られる。
【ラストジョブ】借金の膨らんだ主婦。一縷の望みをかけて、出逢い系サイトにアクセスする。自分に売春ができるだろうか……待ち合わせた相手の意外性もさることながら、そこからの主人公の行動の変化はミモノ。
【ラストコール】テレクラに電話をしてきた女性は、妙に魅力的だった。話を長引かせて店を儲けさせるためのサクラではないかと和明は疑うが……とてつもなく衝撃的なラスト。
【ラストホーム】五十歳を過ぎてから仕事にあぶれ、再就職口もない。アパートも追い出され、そのままずるずるとホームレスになってしまった聡。ところがホームレスの世界にもいろいろあって……。
【ラストドロー】借金は膨らみ、利息分すら返せなくなっていたとき、「仕事を手伝ってくれれば報酬を出す」という話が。それは盗んだ通帳を持って銀行で金を下ろす「出し子」だった。ラストの展開はオミゴト。
【ラストシュート】ヴェトナムに買春旅行にでかけた男と、その男のセックスを撮影するために雇われたカメラマン。ところが買春の対象というのが……。想像したくなくても、映像が目の前に浮かんでしまうくらいの、ド迫力のラストシーン。
(03.9.29)《この本の詳細情報&注文画面へ》
あいかわらずストーリーテリングが抜群に巧いので、読み始めてすぐに物語に取り込まれてしまった。だっていきなり世界史の問題が出てくるのよ。思わず解こうとしちゃったじゃないか!(解いちゃったじゃないか、と書かないのは、答が間違っていたからです(泣))
受験生で、「ハードボイルドになりきれない」というあたりの描写が実に秀逸。絡んできたチンピラをかっこよくかわしたいけど、実際はめちゃくちゃビビったり。助けてくれたサラリーマンに後日御礼に行ったとき、歓迎してくれるものだと思っていたら仕事中で素気なかったことがショックだったり。いまいち、ハードボイルドにはなれない、そんな高校三年生がメチャクチャ魅力的に絵が描かれている。ハードボイルドにはなれないとは言っても、そこはそれ、東直己のキャラですから。充分にクールで冴えてて、ちょっと無頼な風もあって、かっこいいのよ。そんなクールな青少年が、ちょっと甘い夢を見てその通りにならないもどかしさを「メルヘン気分が襲ってきた」と自戒したりする、そんな造形がたまらなくいいんだなあ。キャラクタは相変わらず際だってるし。それにしても、最近の若い世代をバカに書かせたら天下一品だよね、このひとは。
ただ、事件がどう推移するかということよりも、これはやはり省吾と真麻、省吾と金井の関係が主眼なんだろうなあ。いつもの東作品に比べると、テンポ半減、甘酸っぱさ倍増の青春ハーフボイルド。謎解きだのサスペンスだのより、省吾の揺れる心をこそ味わおう。ただ、見くびることなかれ。最後にはけっこうなサプライズが用意されている。残酷、と言ってもいいくらいの「真相」には、正直かなり驚いた。世界がくるりと反転する驚きと快感。この「真相」を知ってしまった省吾は、ハーフボイルドからハードボイルドへと脱皮できるんじゃないだろうか。
そうそう、「便利屋・俺」が出てきたときには、思わず喝采してしまった。もうこれで大丈夫、というような安心感があるから不思議だ。考えてみれば、ススキノで《ケリー》なんだから、出て来るのが当然なのよね。
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毎月新聞・佐藤雅彦(毎日新聞社)
著者は、「だんご三兄弟」の作詞者(だんごのキャラクターデザインも担当)であり、竹中金融財政担当相と共著で「経済ってそういうことだったのか会議」を著した人でもあり、「バザールでござーる」の生みの親でもある、多才な人物だ。
文章は一貫してホンワカしており、くすっと笑わせてくれたり、ホロリとさせてくれたり、「そうそうそう!」と頷かせてくれたり。第1回のテーマが「じゃないですか禁止令」という、もうタイトルを見ただけで「そうそうそう!」って思ってしまうようなテーマだ。
「デジタルって何?」の項は、これまで読んだどの説明よりもデジタルの意味が体感できたし、「三角形の内角の和が180゜であることの強引な証明」の項など、「それが普遍的な証明になるか?」という疑問は残るものの、妙に納得してしまったり。感心したのは、「情報の力関係」の項である。いきなり、こんな図が出てくる。
……さて、あなたは、どっちを見ましたか? つい、右を見てしまったんじゃない? 矢印の下にはちゃんと「左を見よ」って書いてあるのに。どうしてこんなことが起きるのか、というのが、この「情報の力関係」の章のテーマ。他にもいろんな例が示されてて、なるほどなあと頷くことしきり。
なお、実はあたしが一番感動したのは、余録にあったこんな一ネタ。2000年の時点に限られるネタなのだが、「自分の年齢と、生まれた年(西暦)の下二桁を足すと、必ず100になる」という話。考えてみればあたりまえなのに、一瞬、ものすごく不思議な気分になった。
(03.10.1)《この本の詳細情報&注文画面へ》
【深追い】交通事故現場に残された被害者のポケベル。持ち主は死んでいるのに、その妻は毎日のようにポケベルにメッセージを入れてくる──。交通課警官の、個人的な感情と謎解きの妙味があいまった佳作。これがイチオシ。
【又聞き】鑑識係の三枝は、毎年7月28日に行く場所があった。それは、彼が子どもの頃に、命を賭して彼を救ってくれた恩人の家だったが──。これも設定が見事。でも後味の悪い真相だなあ。
【引き継ぎ】盗犯一係の尾花は、窃盗犯罪の検挙数を競うため、ある泥棒に目をつけたが──。ラストで思わず「ああ、なるほど!」と膝を打った。ちゃんと伏線は張られてたんだよなあ。
【訳あり】人事を担当する警務係の滝沢は、近々退官する巡査長の再就職探しに奔走していた──。これ、途中でネタは割れちゃうんだけど、そこから先の展開が痛快。
【締め出し】殺人事件発生。少年係の三田村もローラーに駆り出されるが、彼は実は手がかりを持っていた──。う〜ん、ちょっと都合良く行きすぎるような気が。
【仕返し】ホームレスが病死した。マスコミ対応が仕事の的場は、まず事件性を気にしたが──。ああ、このホームレスの一件の真相もサプライズ充分。ただ、そこから先の、後味の悪いことったら。
【人ごと】会計課の西脇の趣味は花。落とし物の中に花屋のカードがあるのをみつけ、自分で届けに行ったが──。う〜ん、確かに読ませる動機ではあるけれど、これなら別に、もっとストレートに地元交番の巡査とかに頼めば済む話じゃないのかな。
(03.10.2)《この本の詳細情報&注文画面へ》
リアルワールド・桐野夏生(集英社)
母親を殺して逃げる息子、その逃亡に関わってしまった4人の女子高生。5人それぞれの視点で語られる、自分自身のことと事件のこと。5人それぞれが、ふだん何を感じて暮らしていたのか、それが今度の「殺人事件」に関わったことでどう変わっていくのか──ひとつの事件が、無関係なはずの4人の運命まで変えてしまう。
読んでいて、同じ著者の「光源」を思い出した。複数の人物の視点による章立て、いろいろなことが重なって破綻へと向かう構造などが似ていたせいだと思うが、こちらは「殺人事件と逃亡」という核がある上に、登場人物が高校生なぶん思考が一直線なので、「光源」よりもストレートに心に飛び込んで来る。
少年が逃げ切れるのかどうかという部分よりも、彼に関わった4人の少女の心の動きが興味深い。「誰もホントの私を知らない」と全員感じており、更に「誰もホントの私を知らない、とこいつは思ってるけど、でもそんなのバレバレなんだよ」と端から思われている。そんな全身これ自意識みたいな年頃の、ビンビンにアンテナを尖らせて全身ハリネズミみたいになって生きる少女たち。彼女らそれぞれの「戦い」が、少年の逃亡を手助けする過程で次第に明らかになっていく様は見事である。真面目な子、遊んでる子、男っぽい子、哲学的な子という、タイプの違う4人の少女の配置も効果的だ。(マンガ化するなら吉田秋生!)
ストーリーの展開も、もう申し分なし。ちょっとした不用意な言動が、ほんの僅かなボタンの掛け違えが、どんどん事態を変えていく。作中でとある人物が「取り返しのつかないことってあるんだよ」と論じる場面があるが、もう、途中からこの話自体が「取り返しのつかない」ことだらけになっていく。怒涛の展開に、ページをめくる手が止まらない。5人の高校生に、最後に訪れた、悲しくも恐ろしい結末には、ただ圧倒されるばかりだ。一夏の成長物語というには、代償が大きすぎる。
読後、心にずんと来る佳作だ。
(03.10.3)《この本の詳細情報&注文画面へ》
【みんな見ている】小説家志望の主人公は、ウェブサイトで自作の小説を発表していた。ところが、それを酷評・罵倒するメールが届いて……。こんな方法で犯罪が暴露するなんて!
【私を追いなさい】女子大生・里佳子は、才媛にしてド迫力の美女。彼女にかしずく男性は多く、そんな男性を彼女は支配していた。彼女の唯一の不満は──。わはは、ジタバタしないところが里佳子らしくてカッコイイ!
【ついてこないで】ライターとして人気が出てきた祥子は、マネージャー面してつきまとう夫が鬱陶しくて仕方ない。せっかく自立できるかと思ったのに……。「殺していいよ、こんなヤツ!」と思わず犯人に感情移入。
【なかったことにしてほしい】小説家の主人公は暇つぶしに会話プログラムを組んで遊んでいた。ところが、いつも同じ場所でバグが発生して──。失った記憶がこういう形で現れる、ってとこがちょっと分かりにくい。
【やりなおせないか】主人公はライトノベル作家。ひょんなことから出逢ったファンの女性と、一度だけ関係を持ったが──。うわあ、この話の主人公がライトノベル作家ってあたりがまた……。
【残してみたい】ラジオパーソナリティの健一は、選挙に出てみないかと誘われる。しかし、そのためには女が邪魔になる──。最後にもう一度ひっくり返される妙味。
【やめないで栓をぬいて】カメラマンのウェブサイトを読んでメールを出したのがきっかけで、二人の付き合いは始まった。夫を裏切るのは悪いことだと分かってはいたのだが……。ああ、これはちょっと異質。ネット犯罪としては有り触れてるが、被害者が被害者たりえない事件。「いい話」にもなりそうな。
【一度でいいから】クラシック指揮者の白河は、不景気のあおりでどんどん収入が減っていた。人気指揮者の弓岡と比べると、その差は全てにおいて歴然で──。ケツの穴の小せぇ男だなあ(笑)。
【誰も悪くない】妻を亡くした後、石郷は「うばすて屋」を始めた。ボケ老人の介護は並大抵ではない。ともすれば家族が共倒れになる。追いつめられた家族を救うために、老人を「捨てる」仕事──。うわあ、辛い。これは読んでて本当に辛い。でも、ラストでの木津とのやりとりには、芯から救われた気分になれた。
(03.10.4)《この本の詳細情報&注文画面へ》
森博嗣の浮遊研究室2 未来編・森博嗣(メディアファクトリー)
内容は例によって、「日常の疑問に答えます」風の作り。問題提起をするのは研究室のメンバーなのだけれど、なるほどと思うものから、「それを知ってどうすんの」というものまでバラバラ。ま、この辺は、あたしがヘタに要約するよりウェブ連載を見れば一目瞭然ですね。ミステリィ特集も2回あるし。
実は、あたしが読者として一番注目しているのは、車道助教授の「はみだしコメント」である。これはウェブサイトでも古いのは残らないので、こうしてまとめて読めるのは本だけなのだ。これがすごい。どうすごいかって、全編ギャグなのだけれど、ギャグが飛びすぎてワケがわからないものが多いのよ。意味がわかった瞬間のカタルシスと言ったら、もう本格ミステリ並(そうか?)。
今回のオマケは、メンバー3人による「夏休みの自由課題」。3人がそれぞれ、自分の好きなテーマを見つけてレポートを発表するという体裁なのだけれど……車道助教授のテーマは「ダジャレ」、御器所秘書は「ミステリィ」、そして上前津助手は「統計」だ。ウェブでは読めない特典ですね。ちゃんと森助教授が評価するあたり……考えてみれば、車道も助教授ではないか。それも隣の研究室の。隣の研究室の助教授のレポートを評価する助教授って、どういう図柄よ、それ(笑)。あと、ミステリィしりとりの全解答が載ってるんだけど……「これ以外に解答を見つけたら、先着50名に薄謝進呈」だってさ! ちょっと考えてみようかな<おいおい。
尚、第1巻の巻末で発表された《衝撃の事実》に関しては、今回はうやむやのまま。さて、どうなるんでしょうね。
(03.10.5)《この本の詳細情報&注文画面へ》
う〜〜〜〜〜〜〜〜ん。いや、面白いのよ。ただ今回は、いきなりW杯から始まって、そのあとも三大魔法学校対抗試合を一回戦ずつ戦うってな話で……。もちろん、その裏にはヴォルデモートが仕掛けた罠があったり、過去3巻でバラまかれた伏線が生きてくる展開もあったりするんだけど、なんかこう、素材が小さくて軽い割に長い、という印象が抜けないのよねえ。試合(対抗戦はクィディッチではなく、その都度別のゲームで争われる)をひとつひとつクリアしていく様っていうのは、実際には試合そのものよりも、そこに何が仕掛けられているかが問題なんだけど、見た目はどうにも「同じことの繰り返し」といった感が強くて飽きちゃうんだな。まあ、ジュブナイルだしなあ。コドモは面白いシーンは1万回でも再読しちゃうから、これでいいのかもしれないけど。
おまけに、ここまで読んでくれば、どんなピンチになってもハリーが最終的には勝つのが分かってるわけで、じゃあ、どうやってピンチをしのぐのかが最大の見せ場になるわけよね。しかしこれじゃあ、なんでハリーが助かったのかがイマイチぴんと来ない。
とまあ、構成上は不満もかなりあったのだけれど、話それ自体は面白いことは間違いないのだ。「炎のゴブレット」を欺いた方法なんて膝を打ったし、嘘八百を書きたてるマスコミ(人間界そのまんま──魔法で真偽の区別くらいつかんのか)にはマジで腹が立ったし、小さな恋のかけひきにはニコニコしちゃったし。そして何より、親友のロンとの仲違いと仲直りの一件は印象的。額の傷だの闇との戦いだのと同じ重さで、こういう一件を入れるあたりが「巧さ」なんだろうなあ。
(03.10.6)《この本の詳細情報&注文画面へ》
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