ウンター・デン・リンデンの薔薇・栗本薫(角川書店)
栗本薫のお家芸であります。ただ、シリーズものなんだけども、個人的には前作の「大道寺一族の滅亡」の方が圧倒的に好きですね。あっちの方がかなり論理的にミステリしてるし。今回はミステリ色よりも別の色の方が濃くて、まぁその色ってのが栗本氏お得意の分野なだけに、「お姉さまぁ」という世界が嫌いでない読者は安心して読めるのではないかと思うのであります。あたしは別に好きでも嫌いでもないんですが。まぁ同性愛とまでは行かなくても、女同士の確執ってのは何かとすさまじいわけで、友人をとったとられたグループに入った出たというあたりのいざこざは今でも起こりうるし、そういう観点では、あまり同性愛を前面に出すことはなかったのかな、という気もします。だた、この作者はストーリー展開のための効果的な道具として同性愛を選んだ訳ではなく、きっと、戦前のお嬢様学校における女同士の将来のない愛の行方そのものを描きたかったんだろうな。なんか書くのが楽しくて楽しくて仕方がないという感じだもん。一歩間違えるとなんかコミケというかやおいの同人誌になってしまいそうなタッチなのです。この六道ヶ辻シリーズっつーのはレズありホモあり近親相姦ありで、だからこそ「六道ヶ辻」というタイトルになっているんだろうけど、うーむ、次は何が出てくるんだろう。しまいにゃ動物でも出てきそうな勢いだ(笑) (96.12.29) back
パラサイト・イヴ・瀬名秀明(角川ホラー文庫)
さすがに良く売れただけのことはあります。まずまず面白い。息をもつかせぬ展開で一気に読めますね。多用される専門用語も気にならないし、映画化されるのも判る。映像にすると楽しそうだもん、これ。ただ、恐さという点ではやっぱ「リング」には叶わないと思うのです。この作品の恐さっていうのは、未確認物体の恐さというか、そんなものに意志や力があるなんて思ってなかったモノが実は化け物だったという恐さなわけです。つまり、髪の毛の伸びる人形と同じ系列の恐怖だと思うのね。それよりは、やっぱ「リング」のような恐さの方が真実恐いと思ってしまうのです。それに、ミトコンドリアに意志があって太古からの自己実現をしようというのは判るんだけど、なんでミトコンドリアがあんなエスパーもどきの力を持っているのか?まぁそれを言ってはSFは成立しないのかもしれないけど、どうしてあんな突然変異的なことが起こったのかという基本的なところが判らないのよね。それに、ミトコンドリアの反乱というのは、ちょっと視点を変えるとけっこうコミカルだとも思えるのだけれど、いかがかしら。余談ですが、作者の苗字の瀬名さんって、どーしてもキムタクを連想してしまうのでした(笑)(96.12.29) back
狩野俊介の肖像・太田忠司(徳間ノベルズ)
俊介君の学校生活モノです。これまで俊介君モノは長編が6本、短編集が本作を含めて3本あるわけですが総じて短編集の方があたしは好きなのね。中学生の俊介君がおどろおどろしい連続殺人に巻き込まれて、海千山千のオトナたちと丁々発止にやりあうって言う長編は、どうも「うっそぉー」という感じがしてしまうので。もちろん素人探偵が事件に首を突っ込む必然性についてはいろんな作家さんが苦労されているところだし、その点、俊介君の場合はその環境や生い立ちから結構すんなり納得できる方だと思うのだけれど。それでもやっぱ、関係者やら警察やらいい年こいたオトナが中学生の話を真面目に聞いたりするかな、というところで一歩引いてしまうわけです。まぁお約束、と思って楽しんではいるけれど。でも、短編集は総じて「俊介君が首をつっこむにふさわしい」話が多いので、大前提から安心して読めるのだな。
森さんて、なんでこう文章が巧いんでしょーねー。このひとの文章ってのは、なんか芝居を見てるような筆運びなのよね。情景がとてもよく目に浮かぶのさ。演劇的と言うか。なんでかな、と思って考えてみたんですが、森さんて登場人物のセリフを書く時に「……」と言った、とか、●●は「……」と言うと○○した、みたいな書き方をしないのよ。と言った、みたいな文節を使う時は「」がないの。これが結構効果をあげてるのよね。芝居を見てる時って、登場人物が何かしゃべった時にナレーションのひとがいちいち「××はそう言った」なんて言わないでしょ?そのノリなんだよね。あと、動詞を過去形でなく現在形で使うのも臨場感がある。で、セリフ以外の地の文とセリフがそれぞれ上手に互いを、時には補い時には引き立ててる。ああ、説明するのもまだるっこしい。とにかく読んでみて下さい。そこらの推理小説とは文体が違うから。ホント芝居見てるみたいなんだもん。
本格推理9・鮎川哲也(編)(光文社)
正直なところ、このシリーズも5巻目を数えたあたりから一寸食傷気味ではあったのだけれど、今回はけっこう粒ぞろいのような気がした。これに飽きて来たひとは、とりあえずこの巻を最後にするつもりで買ってみるといいかもしんない。何がよかったって、自己陶酔型のペンネームが減っただけでもあたしゃ嬉しいぞ(笑)ひと昔前の少女マンガに出てくるような麗々しいペンネームをつけて作品が下手だったりすると恥ずかしくないだろうか、と、あたしなんぞは思ったりもするのだが。ううむ、固いのかしら、あたしって。
このミステリーがすごい!97年度版・別冊宝島編集部(宝島社)
あたしは海外物は全くと言って良いほど読まないので国内版にしぼってコメントさせて頂きますが。このミスっていうのは「冒険小説」「クライムノベル」「ハードボイルド」が強くて正統派本格はなかなか日の目を見ない気がするのよね。このミスが始まって今回で9回目ですが、第1回から国内版で一位をとってきた作品の作者は、船戸与一(2回)・大沢在昌・山口雅也・原寮・志水辰夫・高村薫・真保裕一・で、今回の馳星周。どーですかこのラインナップ。山口雅也氏以外はみ〜んな「冒険小説」「クライムノベル」「ハードボイルド」で「本格」なんてありゃしない(;_;)。いや、確かにホワイトアウトはすっごく面白かった。私が殺した少女なんて、あたしだって文句無しです。でもね、でもね、あたしにとっての「ミステリー」は「冒険小説」でも「クライムノベル」でも「ハードボイルド」でもなくて、「推理小説」なのよぉぉぉぉ(力説)!ヤクザ系は好きじゃないの、スパイものもノーサンキュー、できれば舞台は日本であってほしい、身近な登場人物と実際にありそうな謎や犯罪、さりげなくちりばめられた伏線、レッドへリング、それを頭脳だけで論理的に解きあかす推理小説!そういうのが好きなのぉ。バトルも濡れ場も要らないのぉ。しくしくしく。不可能を論理的に可能にするその醍醐味、それを味わいたいのよ。騙された!というカタルシス、ああ、そうだったのか!と膝を打つ伏線、そういうのが好きなのよぉぉぉぉぉぉ!!!!ぜぇぜぇ。
これは二年前に出た「おもしろくても理科」という同著者によるエッセイの続編でありまして、「あたし、数字見ただけで蕁麻疹でちゃうの〜」「うわ、コンピューターなんぞ恐ろしくてよう触りまへんわ」というあたしみたいなタイプの人々に「理科って恐くないんだよお、面白いんだよぉ」と諭し続けるという本であります。で、センセー役は清水義範氏で、カットを書いてる西原理恵子氏が「おっさん、あに言うてるのかでんでんわかんねーよっ」とチャチャを入れるという形になってるのだな。おかげで「理科恐怖症」のあたしも半分くらいは内容を理解できました。特に前半の進化、生物と非生物の違い、動物と植物の違い、性差なんてあたりはマジ面白かったし勉強になったもんなぁ。後半のロケットやらビッグバンやらはチンプンカンプンだったけどもさ。
今回は三作品までが学校の中での話。正直なところ、最初の二作はネタ自体は見当がついてしまうのだけれど、この俊介君の短編シリーズのいいところはトリック頼みの作品じゃないところ。金糸雀が何故いなくなったのか、兄の遺書めいた文章は何を意味しているのか、新本格なら主役となるべき謎が主役ではなく、あくまで狩野俊介という主役を引き立て表現するための小道具に徹している。そこが好きなのです。金糸雀が居なくなりました、犯人は誰々で方法はこうでした、めでたしめでたし。そうじゃなくて、その謎を解く過程で、謎解きを披露する過程で、狩野俊介は何をどう考え、どう対処して、どう昇華していくのか。それこそが小説のテーマなのです。だからこそ、短編なのに再読がきく。パズルではなく小説の体をなしているからこそ、何度でも再読できるんですね、はい。探偵役がオトナだったら、思考も対処も事件の自己昇華も「オトナだから」難しくない。でも俊介君はまだコドモだから、ひとつひとつに迷い、時には間違い、後悔する。主人公がコドモだからこそ出来る、「成長物語」なのです。つまりは、長編と比べて、探偵役がコドモである必然性がしっかりしてるわけだな。うん。おまけに目立つといじめられるから学校で推理をしたくない、っつーのも、いいじゃないですか。後先考えずに我先に推理を披露したがる大学のミステリ研のような人物(特定のモデルはありません(笑))より、よほど社会的で好感が持てるぞ。(笑)
とまぁ、ここまで褒めた割には何故「おすすめマーク」がついてないか。理由はいたってシンプルで、推理小説という見地から見ますと、「狩野俊介の冒険」の方がレベルが高いと思うからであります。「狩野俊介の事件簿」よりは今回の方がいいけど。俊介君シリーズの真骨頂は「狩野俊介の冒険」収録の「硝子の鼠」だと思うので、未読の方は読んでみてください。あたしの大嫌いなアキちゃんが出ないだけでもお勧めマークをつけたんだけどね(笑)。
蛇足。今回気になったことふたつ。高森警部が俊介を評して「将来は名探偵になる」と褒めたという下りがあるけど、警部の仕事がら「名刑事になる」と言ってほしかった(笑)。やっぱ市井の探偵を頼らずに警察にカレほどの人材が欲しいんだという矜持を密かに持っていてほしいので。もうひとつ。表紙の装丁のノートには何が書いてあるんだろう?本文の一部かと思ったんだけど、わかんなかったよぉ(笑) (96.12.20) back
会津斬鉄風・森雅裕(集英社)
で、肝心要の話の内容はというと、実はあたし「会津戦争フリーク」だったりするのだな。日本の歴史上最大のドラマは幕末にあったと勝手に思っているのです。坂本龍馬しかり新撰組しかり。で、そのクライマックスが会津戦争なんではないかと。そして五稜郭に終わる。いや、歴史は終わらないんだけどさ。もう白虎隊とか二本松少年隊なんて、ミーハーのノリですもん、あたし。で、そんな趣味を持つあたしなので、この作品はとっても面白かったんだけども、時代物に興味のないひとにとってはどうか判らん。いきなり家老の西郷頼母、なんて出てきても背景を知らないとナカナカ状況を理解しがたいんじゃないかと思うんだけどな。でも、そのあたりの判りづらさを、上述の「演劇的文章」が助けているのではないかしら。その時代の情景さえすんなりと入ってくれば、内容はホントに面白いです。刀を小道具に魅力的な謎と魅力的な人物が出てきます。その謎解きも魅力的なんだけど、この連作は、その謎解きの仕方・着陸の仕方というのがどれも非常に洒落ています。読め読め。借りたりせずに買って読め。でないと森さんの作品って、すぐに絶版になっちゃうんだもん。(;_;) (96.12.15) back
さて、内容であります。偶然なのか何なのか、「ある山荘で」という同じタイトルのものが二作並んだわけですが、これは両方ともグッド。なかなかに練れております。特に吉田氏の方がいいな。視点がいい。最後まで読んで、あっちゃーと思ったもん。でも、その最後の部分のネタのばらし方がもうちょっと洒落ててもいいかな、と思いましたです。ストレートすぎる気がするの。あと、擬音を「」付きにするのがチト気になった。でもナイスな作品です。「十円銅貨」これ大好き!こういうの大好き!自動販売機で使えない十円があるの、これのせいだって知ってた?(笑)「無欲な泥棒」ネタは割れちゃうんだけど、文章が上手で読ませますね。「女を探せ」内容よりも探偵役の設定がねぇ…。島田ファンだそうですが、この探偵役は浅見光彦を模してるのかな。だとしたら推理の披露の仕方が浅見ちっくじゃない気がするんだけどなぁ。あたしの勘違いかしら。「小指は語りき」大阪弁だから、というワケじゃないんだけど黒川博行の「二度のお別れ」を思い出したです。「森の記憶」うわぁ、何て大がかりなトリックなんだ(笑)でもクライマックスに盛り上げていく手法は上手だと思ったです。なんとなく犯人は割れちゃってたんだけど、でもちゃんと読後感を残す終わり方ですね。「密室、ひとりごと」これは可哀想だよ(;_;) あたし、読み始めてすぐにネタが判ったもん。それはあたしの勘がいいわけじゃなくて、吉田氏の「ある山荘にて」を読んだあとだったからだと思うんだけど(泣)。作品別の感想はこんなところ。触れてない数作品に関しては、ま、そういうことです。 (96.12.13) back
というわけで、あたしなりの「この推理小説がすごい!97」を作ってみましたので、興味のある方はご覧ください。 (96.12.12) back
もっとおもしろくても理科・清水義範&西原理恵子(講談社)
こういう苦手分野について知ろうとする時って、下手に専門家に聞かない方がいいかもしんない、と思わせてくれる本であります。なんかさー、自分の得意分野になるとやたら専門用語使うひとっているじゃん?相手に判ってもらうのが目的じゃなくて自分の知識をひけらかすのが目的になっちゃうひと。やだねー。ホントに賢いひとっていうのは、専門用語や難しい言葉を使わなくても説明ができるひとの事を言うんだと思うんですけどね。知識を持ってるということと、それを使えるということは別なのに、知識があるというだけで自分が賢いと思いこんでる理系バカ(失礼)の方にこれを読んで頂きたいものです。
ところで、実を言うとあたしいまだにサイコロをふって1の目が出る確率が6分の1だっつーのがわかんないのよね。だって1の目が出るか出ないか二つにひとつなんだから2分の1じゃないのかしら。他に3が出ようが4が出ようが、「1じゃない」という点でひとくくりなんじゃないかと思うんですが。誰か易しく説明してください。 (96.12.11) (96.21.1)back
オープニングページに戻る