昨日、大垣市で行われた自転車レースにダンナが参戦し、アンノウン(UNKNOWN)という競技で見事優勝(古処氏のメフィスト賞受賞作じゃないのよ、そういう競技があるのよ)、トロフィーだの賞状だの賞品だのを持って帰ってきた。その中に、表彰台でのシャンペンシャワーにつかったシャンパン(ペンなのかパンなのかどっちなんだ)の残りを見つける。おお、CAVAではないか! あたしはスパークリングワインの中で、このスペインのカヴァが一番好きなのよ。呑もう呑もう祝杯だ、ということでダンナと乾杯。グラスに4杯分しか残っていなかったのでそのあとは焼酎を持ち出し、夫婦で明け方5時まで酒盛り。おかげで今日は眠いったら。
実は、このカヴァには胸キュンの思い出があるのだ。10年以上前になるが、あたしが某社に入社した折りに、研修にあたったセンパイの中で一際ステキな人がいた。無論、どんなにステキな人であろうともあたしの美貌に逆らえるものではなく、見事デートにこぎ着けたのである。場所はセンパイの行きつけと言うスペイン料理の店。田舎に生まれ、田舎の大学を出たあたしにとって、東京のスペイン料理屋など勝手を知る由もなく、すべてお任せでテーブルについた。そこで、そのステキな先輩はメニューを片手に、優しく微笑みながらこう言ったのだ。
「きみ、カヴァは好き?」
「えっ」
「えーっと、試したことないので……」
「そう、じゃあせっかくだから頼もう。美味しいよ」
「美味しい……んですか。あの、センパイはよく河馬を召し上がるんですか?」
「うん、よく冷やしたのが好きでね」
「冷やした河馬……ということは……」
「どうかした?」
「い、いいえっ!」
「だから、うちの冷蔵庫にはカヴァを常備してるんだよ」
「どうかした?」
「い、いいえっ! えーっと、あの……」
「ん?」
「えーっと、でも、その、固そうですよね、河馬の肉って」
「……。」
「……。」
「……。」
ロマンチックなラブ・アフェア〜を楽しむ筈だった夜は一転して喜劇となり、彼のコイビトとなる筈だったあたしは、一転して新入社員屈指のお笑い野郎になったのであった。ああああ……。
この話には後日談があって、それから6年後、あたしが大阪へ転勤を命じられた時。既に課長になっていたそのセンパイから、餞別を頂いた。袋の中には、スペイン産のCAVAが一本。それと、手のひらサイズの小さな河馬のぬいぐるみが入っていたのである。うん、ホントにいいセンパイだったよな。