抜粋なまもの日記

2001年10月「粉瘤な日々 股ぐら編」の巻 後編


 翌日のリュータロー。← 粉瘤に名前をつけてみました。漢字で書くと勿論瘤太郎ね。
 で、そのリュータローだが、何だか表面がフルフルし始めている。火山に例えるなら、噴火口の当たりが柔らかくなってきたとでも言おうか。溶岩ドームが盛り上がり、火山性微動も感知され始めた。危険である。思いきり危険である。厳重にガーゼで固定。

 そんなリュータローを抱えつつ、朝からお出かけ。名古屋駅で待ち合わせなのだ。待ち合わせの相手はIねこさん。仕事で淡路島から出て来られたN良さんを二人で迎撃して、お茶でも飲もうという約束である。どうかその間、おとなしくしておいてくれよとリュータローに話しかける。
 股ぐらを覗き込んでの嘆願が功を奏したのか、さしたる異状もなくN良さんとはお別れできた。そこからIねこさんと一緒に千種(ちぐさじゃないよちくさだよ)まで出て、今度は未読王と待ち合わせだ。例えリュータローが泣こうが喚こうが爆発しようが、古書市には行くのである。それに未読王が車を出してくれたので、もう歩かなくてもいいし、仮に爆発しても送って貰えるし、安心だあ。

 「頼むから車の中でだけは、爆発させないでくれよなあ」
 「それはリュータローの気持ち次第だ」

 一応、万が一を考えて、こっそりと後部座席にあったクッションを股ぐらに挟んでおいた──というのは、未読王にはナイショの話。あのクッション、そんじょそこらの古書より値がつくと思うが、どだ。

 その夜。
 リュータローのガーゼ交換をしてみると、すでに臨界点に達しているのがよく分かる。Xデイは近い。既に秒読み。5・4・3・2……


 みなさんこんにちは。股ぐらに噴火口を持つ女、ヴォルケイノ大矢です。お見舞いメールをたくさん、ありがとうございました。ご心配頂くほどにはタイシタことなく、ガーゼで保護してれば痛みも殆どないのだ。ただ血膿が出るだけで。腫れも引いたし。ただ、血膿のあとに残るは、丁度指が入るくらいの直径を持つである。こんなところに穴があいてもなぁ……使い道があるようなないような(中学生以下は分からなくてよろしい)。
 ただ、血膿が出っぱなし・穴があきっぱなしということは当然なくて、明日、病院に行った時点で治療されるわけである。あううう、メールを下さった粉瘤友だち、略してフントモ(だから略すなって)の情報によれば、「破裂した粉瘤の穴から血膿を掻き出す治療が、すっげー痛いんだよぉ」とのことで、今から戦々恐々としているのであった。か、考えただけで痛いぞ。

 2日経ったあと、カルデラのようになったリュータロー。なんだか我が子のような愛着さえ覚える今日この頃、病院で切ったり掻き出されたりすると思うと何だか切ない(だけじゃなくて痛い)が、問題児なのは事実である。それにしてもあたしの股ぐらを終の住処と決めるなんざあ、世の中にはリュータローになりてぇっ」と枕を濡らしている男性がたくさんいることだろう。
 というワケで、行ってきました病院へ。ふっふっふ、ご心配頂いたが痛くなかったもんね

 「T先生〜〜〜、リュータロー、じゃなかった、粉瘤、爆発しちゃいましたあ」
 「あーやっぱり。じゃあ見ましょうか。はい、スカートめくって足開いて」
 「(ガバッ)」
 「毎回言ってるけど、そんなに開かなくていいから。……あはははっ
 「ななななな何ですかッ?」
 「いやぁ、きれいにハジけたわねえ」
 「はあ……それって褒められてるんでしょうか」
 「うん、これならこのまま放っておきましょう
 「はあ? えーっと、切開したり、穴の中を掻き出したりとかは」

 「すっごく痛いからやめましょうよ」

 「え、やめましょうよって……」
 「して欲しい?」
 「(ぶるぶるぶるっ)」
 「あのね、こういう状態の時にいくら膿を掻き出しても、周囲の組織にくっついてて全部は取れないの」
 「はあ」
 「幸い、表面に近いところの膿は全部出ちゃってるみたいだから、このまま穴が塞がるのを待って」
 「はあ」
 「完全に炎症が治まって、中の膿の卵もおとなしくなって、組織との癒着が切れたら」
 「はあ」

 「一気にザクッと切りましょう(にっこり)」

 ……あたしは助かったんでしょうか? とてもそうは思えないのだが。
 とまれ、今回はこのまま飲み薬と塗り薬の治療を続け、経過を先生に見せた上で、完全に治癒し(たように見え)たら「切りましょう」ということになったのだが、そうなると今度は怖くて病院に行かないんだよなあ>あたし。まあ、放っとくとまた再発するのは分かってるので、いずれは切らなくちゃならないんだけどさ。
 あ、何が嬉しかったって、シャワーを浴びる許可が出たことである。股ぐらを濡らさないように髪や体を洗うのって、タイヘンだったんだから。

 「濡れたあとできちんと消毒しておけば、シャワー使っていいわよ。浴槽に入るのはダメだけど」
 「うわあ、よかったあ。濡らさないようにお風呂にはいるの、タイヘンだったんですう」
 「防水シールでも貼ってたの?」
 「いえ、下半身だけカッパのズボン穿いてシャワー使ってました」

  ぶぶっ、ばさばさっ、がしゃん、からんからん!

 ……看護婦さん、そこらへんの物をひっくり返すほどの勢いで噴き出すなっ。あんたも一回股ぐらに粉瘤飼ってみろっ!

 なお、腫れが引いたあと、切開して卵を出したかというと。ばっくれたままです。今でも股ぐらには卵があります。どうかこのまま、おとなしくしててね瘤太郎


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