この抜粋日記は、大矢が2001年から2002年にかけて、
テレビに向かってあれこれつっこんだ話をまとめたものです。
【01.8.8.Wed・スタートレック】
「スタートレック・ボイジャー」を見ていたら、ボイジャー乗組員である非地球人の士官がこう言った。
「それじゃあ、敵に塩を贈るようなものだわ」
──この異星人は、どうして武田信玄と上杉謙信の故事を知ってるんだ? 日本史マニアなのか?
【01.8.9.Thu・氷点】
黒田研二と買い物。あたしとヤツの数少ない共通点に、東野圭吾ファンというのがある。昨日、テレビ東京系で東野圭吾の「冷たい灼熱」(「嘘をもうひとつだけ」所収)のドラマが放送されたのだが、あたしはリアルタイムで見たこのドラマ、ヤツはビデオにとっただけでまだ見ていないという。
「どうだった? 原作とあまり変わってなかった?」
「うん、原作にないエピソードもあったけど、基本は原作に忠実だったよ」
「じゃあ面白かったんだ」
「うん、そうね。あ、父親役が吉田栄作だったのよ」
「へえ、あの役が」
「そうなの。吉田栄作って若い印象があったけど、疲れたエリートパパ役が意外と良かったのよね」
「吉田栄作って、最近、そういうくたびれたオヤジ役、多くないか?」
「え、そうなの? 他にも何かやってるの?」
「ヒテンでも疲れたオヤジ役だよ」
「……ヒテン? そんなドラマあったっけ?」
「うちじゃ母親が見てるんだけど、ヒテン2001ってヤツ」
「……え? ヒョウテン?」
「あんたは三浦綾子の代表作を知らんのかッ!」
「ヒョウテンって、あの、♪ちゃんちゃかちゃかちゃか、ぷっぷ〜、って……」
なお、「笑点」は本当に三浦綾子の「氷点」をもじってつけた番組名なんだそうだ。パロディの方がここまで定着して一人歩きしちゃった例が他にあるだろうか。すごいなあ。事実は小説より稲荷寿司。しかし、「氷点」と「笑点」って、その内容は耳クソほどの共通点もないぞ。
【01.9.6.Thu・クイズミリオネア】
フジテレビ系列「クイズ・ミリオネア子供大会」を見る。ディズニーランドやディズニー・シーがタイアップしてるらしく、問題の合間にミッキーマウスやドナルドダックがスタジオに登場して、解答者や観客を喜ばせていた。それはいいのだが、そこでのみのもんたのコメント。
【02.1.30.Wed・火曜サスペンス劇場】
日本テレビの人気ドラマ「火曜サスペンス劇場」に、「小京都ミステリー」というシリーズがある。片平なぎさと船越英一郎のコンビが主人公で、日本中の小京都を雑誌の取材で訪れている時に、何故か毎回殺人事件に巻き込まれてしまうのだ。こいつらが起こしてるとしか思えないが、まあそれはいいとして。
もう随分長いこと続いているシリーズで、飛騨高山、萩・津和野、金沢などのホントに小京都と呼ばれてる都市を舞台にしてるうちは良かったんだけど、次第に「おいおい、そんなとこが小京都かい」とツッコミたくなるような地方まで舞台になってきたのである。あたしの故郷・大分でも、杵築や小鹿田(おんた)が舞台になったが、地元出身者でも杵築や小鹿田が「小京都」だなんて思ってないぞ、てなもんだ。因みに小鹿田の回の時のタイトルは「小京都ミステリー・小鹿田、一子相伝殺人事件」である。ぐわははは。
しかし人気シリーズなので、そんなことにはお構いなしに続編を作らねばならないのだろう。回を追うごとに、どんどん日本中に小京都が増えていくのである。妙にマイナーな小さな村まで小京都にされてしまう。前にをかべまさゆきさんやNたびさんと
「あのシリーズ、そのうち日本全部が小京都になりますよ」
「全部制覇したら、小京都より更に小さいミニ京都。とか作ったりして」
「プッチ京都。とかね」
という会話を交わしたことがあるくらいだ。
ところが、今日の新聞のテレビ欄を見て、思わずケツの穴から小京都汁を垂れ流すほど驚いた。中京テレビが夕方に2時間ドラマを再放送している枠があるのだが、そこで「小京都ミステリー」シリーズ第30話が、今日放送されたらしいのだ。そのタイトルが
ムチャ言うな日本テレビ! エジプトが小京都だなんて、日本国民もエジプト国民も、誰一人賛成しないぞそんな設定。ほんなら何かい、「ナイルに死す」も小京都ミステリーかいっ。クリスティもびっくりだ。そもそもエジプトの方が京都よりずっと歴史が古いじゃないかあ!
びっくりして、新聞に書かれてあったサブタイトルを読む。
何なんだよ小カイロって。そもそも、だったら冠の「小京都ミステリー」ってのは何なんだよおっ。
【02.2.19.Tue・長野オリンピック中継】
スポーツ中継では実況のアナウンサーがうるさ過ぎる、というのは巷間よく指摘されることで、あたしも概ね同感なのだけれど、そういう意味ではやはりNHKが一番落ち着いて見ていられる。無論、オリンピックともなれば普段のNHKからは想像もできないほど声高になるアナウンサーもいるのだけれど、それでも民放よりは数段マシだ。
とは言え、やはり興奮のなせるわざなのか、家事をしながら耳だけで放送を聞いていると、ときどき「はぁ?」と思ってしまうようなセリフを口にするアナウンサーがいるのである。
たとえば、今日放送されたジャンプ団体。
「いいジャンプだ! 高い! 来た、来た、来た!……いや来ない」
ちゃんと見て喋れよ、と言いたい。そりゃ飛び出しの瞬間は良かったのかもしれないけど、アナウンサーの声を頼りに状況を把握している身としては、思わずコケてしまうではないか。
同じジャンプ団体で、こういうのもあった。フィンランドにアホネンというすごく有名な選手がいるのだが、──いや、この名前については色々と感想もありましょうが、フィンランドでは極めて普通の名前だそうなので、どうか責めないでやってくれ──彼がビッグジャンプを披露し、K点付近まで行ってもまだ着地しなかった時のアナウンサーの言葉である。
「アホネンは浮いている!」
なんか、ジャンプ選手達の仲間に入れなくて一人でポツンと座っているアホネンを想像しちゃうじゃないか。浮いてるのか。浮いてるんだろうな。頑張って仲間に入ろうとするんだけど、きっと彼が頑張れば頑張るほど、周囲からは浮いちゃうんだろうな。いるよね、そういう人。
また、ノルディック複合・クロスカントリーでの実況。
「荻原健司が来る!」
そりゃ来るだろうさ。来なかったらリタイヤかミスコースだよ。見たままを伝えるのが実況とは言え、あまりにも見たまんま過ぎないかそれって。
エアリアルの実況。一回転して更にひねりを加える技を「フル」と言うそうで、そのフルを二回やったあとで転ぶことなくちゃんと立って着地した、という状況を伝えるシーンなのだが。
「フルフル……立った!」
クララかよ! あるいは、生まれたての子牛かよ!
もう、どこの国でもいいから次のオリンピックにはクララという名前の選手を出してくれ。倉田でもいいぞ。「立った! 倉田が立った!」とアナウンサーに言わせてみようではないか。
まぁ実況ってのは、原稿ナシのオールアドリブなわけで、そういう場所で何かヘンなことを口走ってしまうというのは、ままあることだ。ましてや、上に書いた言葉はどれも間違っているワケではないのだから責めるのも可哀想である。しかし、原稿があるはずの、夜の「すべて見せます オリンピック名場面」という特集番組でも、やはりアナウンサーはヘンなことを口走るのだ。
「NHKでは皆様からのリクエストを、どしどし募集しています」
どしどしは「ご応募下さい」だよッ! どしどし募集しています、って、どんな募集のしかたなんだ。かなり盛大に募集しているのだろうか。一大募集キャンペーンでも張っているのか。それとも五分おきくらいに募集告知を流すのか。気を確かに持てよアナウンサー。
ところが、その直後に、今度はもう一人の男性アナウンサーが言ったのである。
「女子のフィギュアスケートは、リングの華ですね」
女子プロレスかよ!
リングじゃねーよリンクだよっ! ゲストも必死で笑いを堪えてるし。ショートプログラムにジャーマンスープレックスが入ってたりするのか。三回転半のジャンプの後でラリアートでもやるのか。やだろそんなフィギュアスケート。アナウンサーの両肩を掴んで揺さぶりながら「しっかりしろッ」と言いたくなったぞ。
などとツッコミながらテレビを見るのも一興かと。しかしあたしも暇だね。ホントはバイトと頼まれ仕事が相俟ってメチャクチャ忙しいのだけれど、こんな魅力的な実況をされてはテレビの前から離れられないじゃないか。早く終わってくれオリンピック。でないと仕事ができないよ。
【02.5.27.Mon・ニュース】
夜のローカルニュースで、児童虐待の事件が報じられていた。交際相手の子供に対する暴行だそうで、「あ〜あ、またかよ」と思いながら見ていたのだが、アナウンサーの言葉と画面に出た文字に、思わず「なんですて?」と腰を浮かした。
小学3年生と付き合ってたのか? それとも、小学3年生に子供がいたのか? 児童虐待以前の問題では?
……いや、冷静に考えれば意味は分かるけどさあ。一瞬、「え?」って思いません? っつ〜か、これだけ深刻な社会問題に、妙なところでツッコませないでくれいっ。
【02.8.7.Wed・ニュース】
新札の発行が決まったというニュースが出て以降、ずっと気になってることがある。5千円札の樋口一葉に触れるとき、ニュースでは必ずと言っていいほど、こう言うのだ。
「お札に女性の肖像が使われるのは、戦後初めてです」
良く見てよ、ちゃんと紫式部の肖像が載ってるのよ右下に。どうして無視するんだ。もしかして、政府はすでに2千円札を「なかったこと」にしてるのか? それとも、その後の調査で「紫式部は実は男だった」なんてのが通説になったりしてるのか?<紀貫之かよ。
【02.9.25.Wed・ニュース】
夕方、NHKの天気予報にて。気象キャスターが、爽やかな笑顔でこう言った。
気象キャスターのお兄ちゃんは、喉元までせり上がって来た何かをぐっと飲み込み、何事もなかったかのように天気図の説明に入ったが、あたしは聞き逃さなかったぞ。すがすがすい。「すがすがしい」よりも、更にすがすがしさ倍増。秋の空はすがすがすい。
しかし、これくらいの《言葉の垂れ》((C)宮沢章夫)は、まだマシである。あれは忘れもしない10年か11年か12年前、(忘れてるやんか)、NHKの夜のニュースが始まった、その冒頭。真面目一徹を絵にしたかのような男性アナウンサーが、開口一番こう言ったのだ。
その瞬間、日本中の茶の間が大爆発。しかし当のアナウンサーは、顔色一つ変えず、ニュースを読み始めたのである。さすがプロ。ホントのプロなら、そんな《言葉の垂れ》をやらかさないだろうとも思うが、やはりプロである。スタジオ内で笑いを堪えるスタッフは、きっと地獄の苦しみを味わったに違いない。
いまだに、この一件を超える《言葉の垂れ》には出会っていない。「すがすがすい」くらいじゃあ、まだまだ。
【02.10.13.Sun・ニュース】
週末のニュースショーってのは、その週のニュースをまとめて見せてくれるのが定番だが、さすがに今週はどこもノーベル賞特集である。頼みもしないのに、受賞者の1日のスケジュールやら、地元の熱狂ぶりなどを伝えてくれる。(抜粋時注・この年、小柴昌俊氏と田中耕一氏がノーベル賞を受賞。小柴氏の研究は、あらゆる物体を通過して宇宙空間を飛び回る素粒子・ニュートリノの観測でした)
笑ったのは、カミオカンデの地元である岐阜県神岡町である。《ノーベル賞記念・ラーメン半額》って。しかしなによりすごいのは、町内に張られた横断幕だ。画面にはちらりと映っただけだったのだが、あたしは見逃さなかったぞ。そこには、麗々しくこう書かれてあったのだ。
違うだろッ! すさまじく違うだろ。根本的に間違ってるだろ。誰も気づかなかったのかよ、おい。神岡町がニュートリノ発祥の地だったら、そろそろ岐阜県は超新星爆発を起こすぞ。
【02.12.27.Fri・ニュース】
愛知県江南市で輸送途中の乳牛が一頭逃げだし、市内を暴走した挙げ句にお爺さんを突き飛ばして重傷を負わせ、大捕物の末にようやく捕獲──というニュース。師も走る師走どころか牛まで走っている。ワケがわからない。しかし一番ワケが分からないのは、そのニュースを読んだあとにこうコメントした某局のキャスターである。
「その乳牛は、オスですかねメスですかね」
乳牛だっての。
オスの乳牛がいるなら見たいもんだ。いったいどこから出すというのか。乳を。