格闘する者に○・三浦しをん(草思社)
「かくとうするものにマル」と読ませる。大学生の可南子は就職活動中。マンガが好きだから何となく出版社かな──という程度のノリで、なかなかエンジンが掛からない。友だちの砂子や二木君、バイト先のマスター、恋人(?)で脚フェチの西園寺爺らに囲まれ、今日も可奈子は入社試験に翻弄され、嫌な面接官と戦い、お家騒動と戦い、自分と戦うのだった──。
月魚・三浦しをん(角川書店)
古本屋「無窮堂」の三代目若当主・真志喜のもとに、高校時代からの友人である瀬名垣がやってきた。彼も古本屋だが、店舗を持たず、価値のある本を見つけてはそれを市に出すという「せどり」を生業をしていた。二人は幼なじみだったが、子供の頃にある事件があり、それ以降、親友のように付き合いながらも心の底にはわだかまりを持っているという関係。瀬名垣は、宮城の旧家で当主が死んだのに伴い、蔵書を買い取るので付き合って欲しいと真志喜に言う。真志喜は一緒に出かけたが──。
僕は、書きたい物語があるのになかなか書き始められないでいた。舞台も設定も決まっているのに、なぜか書けないのだ。ゴンベン先生に相談してみると、とある謎めいた作家の話をしてくれた。そんなある日、スパイス会社からPR誌に何か書いて欲しいと頼まれる。謝礼に貰った外国産の塩を持ち帰った僕は、「書けないでいた物語」の尻尾を掴まえるのだが……。16の連作掌編からなる不思議なファンタジー。
雑誌や新聞、インターネット等に掲載されたエッセイをまとめたもの。いやあ、この著者の作品は小説も読んではみたものの(そしてそれはとても印象的ではあったものの)、やはりあたしはエッセイが好きだわ。もう、とにかく笑えること笑えること。
これは王国のかぎ・荻原規子(中央公論新社 C★Novels)
「樹上のゆりかご」の主人公・上田ヒロミが中学生時代の物語。「樹上のゆりかご」がヤングアダルトから大人を対象としているのに対し、こちらはキッパリと児童文学である。ある日突然、ワタシは別の世界にいました……というパターンのファンタジー。
僕の勤める結婚相談所では、コンピュータが登録してある異性との相性を、金・銀など5ランクのコスモスで表してくれるのが売り。僕も社員として試しにその診断を受けてみたら、メッタに出ない金のコスモスが出てしまった。ところが、その相手というのが、笑わない女として有名なこの結婚相談所の所長! 一方、病気の妹は自分もその診断を受けてみたいという。お兄ちゃんと一番相性のいいのは自分の筈だからと……。
刺のある花園・辻真先(集英社コバルトセレクション)
伊豆高原の人形アトリエ「銀の鈴」の女主人・亀谷ユーカリは御歳七十ン歳。ところがこれが名探偵。女子大生である孫の綾川くるみをワトソンに、くるみの彼氏で特殊メイク専門の俳優である三津木新哉を手足に、今日もユーカリおばさんの鋭い推理が謎を解く!
死ぬほど愛した…・辻真先(集英社コバルト文庫)
ユーカリおばさんシリーズ。伊豆高原に住む七十ン歳のユーカリおばさんが、孫のくるみをワトソン役に、くるみの恋人・新哉を手足に謎を解く、いわば伊豆のミス・マープル。
幼い頃、父親に死なれた私は、後見人であるオジさんと一緒に暮らしていた。大人になってからは、毎夜のようにオトコを連れ込む生活。オジサンは、「娘のビデオをとり続けて欲しい」という父の遺言に従って、私のベッドシーンを撮影する日々。そんな二人のところに、ある日、空飛ぶ円盤に乗ったカンガルーがやって来た。カンガルーは仮の姿、実は宇宙人だというのだ。カンガルー宇宙人は、人類は間もなく滅亡するといい、人類のサンプルとして私とオジサンだけ、彼の星に連れていってくれるという──。
天国の水族館・新井千裕(PHP)
ある日、妻が突然いなくなった。理由は、僕が肉好きなせいで彼女の好きな魚料理を食べられなかったこと? それとも、僕に時々訪れる「ブルー」のせい? 僕は妻を捜すかたわら、長い付き合いの女友達である南さんから魚料理を習い出す。しかし、次第に妻の隠されていた生活が明らかになってきて──。
大人向けコバルト文庫、という感じかな。軽妙でおもしろおかしい文体、ヤングアダルトの雰囲気を纏いつつも、ブンガクの領域に両足はしっかり入り込んでいるというライン上の青春エンターテインメント。ライトな感覚と文章でサクサク読めるけれども、サクサク読んだ割には何かのカケラが心にいつまでも残るような、そんな《際どさ》を隠し持っている。
戦っているのは、格闘しているのは、可奈子だけではない。二木君は気付いてしまった本当の自分自身と、西園寺さんは残された時間と、弟は家についてまわる運命と、それぞれ皆が戦っている。そんな、格闘するすべての人々にマルをあげたくなる、そして自分もマルが貰えるように頑張ろうと思う、そんな元気の出る話。
ただ、ひとつだけ、ものすごおおおく気になることがあったのだ。可奈子が受験する出版社の名前が、K談社とか集A社とかなのね。でもって、特にK談社の社員の描写が、ひどいのだ。漢字は読み間違うし、面接担当の社員はめっちゃ感じ悪いし。これさあ、小説とは言え、読者はやっぱ「K談社=講談社」と思って読むわけよ。すると、「うわ、講談社って、こんな感じ悪い会社なわけ?」と思ってしまうわけよ。いや、小説なのは分かってるし、そのまんま信じるわけじゃないけれど、それでも「実在の会社を想起させる社名を使い、そこのイメージを落とすような描写をする」ってのは、どうなんだろうなあ。K談社とか集A社とかって書き方をする必要が、何かあったんだろうか。完全に架空の会社名でも、ストーリー上は別に構わないと思うのだけれど。
(03.1.4)《詳細情報&注文画面へ》
うわあ。爆笑エッセイ集「しをんのしおり」を読み、青春エンターテインメント「格闘するものに○」を読んだあとで、続けてこれを読んだらビックリした。ぜんぜん芸風違うじゃん! これはまた何ていうか──いわゆる「やおい好き」なオンナノコたちにはタマラナイのではないかと。いや、実際に瀬名垣と真志喜が同性愛関係にあるワケじゃないのよ。そうじゃないんだけど、「ああ、そうであって欲しい!」と(その手のファンに)思わせるような匂いがもう、ページの隅から隅までミッチリと……(笑)。きゃぁ、何気なく相手の髪を触ったりするなああ、きゃあきゃあ(はぁと)<喜んでるのか。
ま、それはさておき。
イカニモ思わせぶりな二人だが、過去に何があったのかが途中で語られる。そしてそれが後半へと繋がるのだが、そのあたりの展開は、サスペンスフルにして実に叙情的だ。描く文章に、色がある。温度がある。肌触りがある。特に凝ったレトリックを使っているわけでもないのに、ちょっとした語彙やセリフで、冬の東北の、冷たい空気の中で話している二人の白い息までが見えてきそうになる。
盛り上がった後半の鍵を握る大事な人物の造詣が、こんな浅い単なるイヤなヤツだったのが少々残念。このあたりにも「奥」があれば、より深みが出たろうに。主要二人と、その友人である英郎夫妻以外は、人物がやや類型的なのでは──と思って気が付いた。つまりはそれだけ、主役二人の書き込みが際だっているということなのだ。この話、是非、続編を描いて欲しいものである。
4人の高校時代のエピソードを違う視点から描いた「水に沈んだ私の村」も収録。
(03.1.7)《詳細情報&注文画面へ》
フィンガーボウルの話のつづき・吉田篤弘(新潮社)
あ、このスパイス会社は!と、思わず「Bolero」を思い出してしまう。それもその筈、著者の吉田篤弘氏は、クラフト・エヴィング商會の片割れなのだ。独特の、透明感溢れる飄々とした語り口が、とても心地よい。おまけに、「謎の作家」ジュールズ・バーンが求めていたものは何なのか、それが少しずつ分かってくるあたりはもう……もしもビートルズのファンだったら本を抱きしめたんじゃないかってくらい。これ、ビートルズにはホントにこんなアルバムがあるの?
ま、ビートルズはさておき、個々の掌編もとってもクラフト・エヴィング商會だ。おじさんと抜けた歯の話。深夜に聞こえてくる海賊放送の出もとを訪れる話。流れ星を拾った話。殺し屋と間違われるクロス屋の話。予告編専門の映画監督になりたがっていた旧友の話──。それぞれが《ビートルズ》というキーワードで結ばれ、ひとつのフィンガーボウルからこぼれ出るのである。
あたし自身がさほどビートルズファンではないことが、とっても口惜しく感じられる。というのも、ビートルズが好きなら、この物語集をもっともっと味わうことができたであろうことが明白だから。ビートルズに詳しくないが故に、織り込まれた《意味》を見過ごしている気がするのだ。いや、もちろんそんな深読みをせずとも、ファンタジックな掌編集として充分楽しいのだけれど……。
クラフト・エヴィング商會のファンであり、ビートルズのファンでもあるという人には、諸手を上げて薦めてしまう。そういう人に、是非読んで欲しい一冊。
(03.1.20)《詳細情報&注文画面へ》
妄想炸裂・三浦しをん(新書館)
先に読んだ(といっても出版は後だが)「しをんのしおり」同様、何か大きな事件や重厚なテーマがあるわけではない。ただダラダラと(失礼)日常を過ごす中で、とりとめもなく考えたことがそのまんまエッセイになっているだけ(のようにみえる)である。ただ、この「とりとめもなく考えたこと」というのが曲者で、即ちそれが「炸裂した妄想」なのだ。
真夏に部屋を暗くして冷房を入れずに高村薫の本を読む→暑苦しい→まるでラグビー部員と野球部員が相撲部の部室で逢い引きしているかのように暑苦しい。……とまあ、こんな思考ルートをたどるだけでも爆笑モノなのだけど、そこから著者は、その「ラグビー部員と野球部員が相撲部の部室で逢い引き」の状況を事細かに妄想する。一編まるごとその妄想である。高村薫はどこへ。
新春に駅伝を見て、頭の中で勝手に架空の大学の駅伝部を想像し、その駅伝部のメンバーひとりひとりのキャラから相関図に至るまで完璧に練り上げ、サブキャラにサイドストーリーまで作ってしまう。(もちろんボーイズラブ)
とにかく腹筋がつりそうになるくらい面白いのだけど、ただ単に自分の想像したことを書いてるだけなのだ。これを下手な人がやると「自分の話ばっかりして、鬱陶しい」となってしまうところを、著者はしっかり笑わせる。これはつまり「身を削って笑いをとる」という手法であると同時に、まず読者が読んで楽しめるかどうかということを念頭に置いたサービス精神の発露に他ならない。自分の話を面白オカシク書くくらいなら誰でもできるが、「自分の書きたいこと・読ませたいことを書く」のか、「読者が読みたがることを書く」のかで、エッセイの面白さは大きく分かれるのだ。この作品が後者であるのは、論をまたない。
(03.1.15)《詳細情報&注文画面へ》
中学生の上田ヒロミは、失恋のショックで落ち込んでいた。ところが、自分の部屋にいた筈なのに、ふと気付くと、何やら砂浜にいるではないか。おまけに目の前には、頭にターバンを巻いた異国人としか思えない男がいる。彼はヒロミのことを、「自分の願いを叶えてくれる魔神族で、壷から出てきた」と言う。ヒロミはアラビアンナイトの世界に迷い込んでしまったのだ。それも不思議な力を持った魔神族として──。
もう、児童向け異世界ファンタジーの定番とでもいうべき設定。ここからヒロミの冒険譚が始まる。格闘あり、政治闘争あり、魔法あり、恋愛あり。まぁなんて贅沢な。これだけ詰め込んだら面白くない筈がないじゃないの、ってくらい児童向けファンタジーのエッセンスに満ち満ちた物語だ。
最初に出会った男についていこうとし、巧く行きかけていたのにいきなり放り出されるあたりから、展開は風雲急を告げる。児童モノなので、「意外な展開」とか「ヒネリ」とかは無いのだけれど、定番にして王道の話運びはストーリーテリングの巧さもあって、読者を飽きさせない。ラスト近くの展開なんて、「もう、絶対こう来ると思ってたさ!」と言いたくなるくらいなのだが、それでも快哉を叫んでしまう。
最後の最後、大きなネタバラシ(っていうのかな?)がされて物語は終わるのだけれど、逆にそこでちょっと失速した観もある。確かにテーマに直結する部分ではあるのだけれど、でもどうしても浮いた感じがするんだけどなあ……。ま、ここは好みの問題でしょう。こうして説明して貰う方が好きな人もいるだろうし。
(03.1.20)《詳細情報&注文画面へ》
100万分の1の結婚・新井千裕(PHP)
病を抱えた妹の介護を、住み込み家政婦さんと二人でやっている主人公。妹と主人公の倒錯した──いや、倒錯しかかった、というべきか──愛情が中心に描かれるのだが、これが新井千裕の手にかかるとなんとも飄々として、際どいシーンも重たい心理描写も透明感いっぱいなのが良い。それでいて、軽くなりすぎない。しなやかに読ませながらも、読み手の気持ちに妙に爽やかな毒や棘を残していく。持ち味、とはこういうことを言うんだなあ。
妹の思い、僕の思い、所長の事情、家政婦さんの行動(これがまたナイス!)、そういったものが一体となり、新井千裕にしては珍しくリアリティに立脚した作品ということもできる。自分の命と思いを見定め、妹が自ら下した潔い決心。所長が次第に見せる変化。僕自身はさして何か積極的な行動に出たわけではないのだが、女たちは「コスモス」から何かを得て、そして変わっていく。その様が、これまた飄々とした中に切なさがあって、なんともタマラナイ。
新井千裕初体験だと、こんな重たいテーマを扱いながら、このフザけた文体な何なのよ、と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、これって新井千裕の作品の中ではかなり現実的な方なんですよ。これが気持ちよくなってくるから不思議なのさ。
(03.1.22)《詳細情報&注文画面へ》(絶版)
これは集英社コバルト文庫から生まれた新書サイズのハードカバー「コバルトセレクション」の一冊。このシリーズは、優しい口調の「ですます調」で書かれてるのが特徴なんだけど、どうやら著者が岡本綺堂(だったかな?)を参考にしたものらしい。
【忘却の人】殺人事件が起こったので助けて欲しいという手紙を貰ったユーカリ。出かけてみると、手紙を出した当の本人は歳のせいで物忘れが激しく覚えていない。なんとか話を聞きだしたものの、次の事件が起こって……。なんともあっけない幕切れ。
【貞淑な人】新哉とケンカしたくるみは、一人傷心旅行へ。ペンションに宿をとったが、そこで事件に巻き込まれて……。イチオシ。トリックもキレイだけど、すべてがあきらかになったあとでユーカリおばさんが想像する《真の動機》が切なくも見事。
【殺意の人】くるみの友だち、百合子からSOSが入った。恋人の気持ちを確かめるために妊娠したと嘘をついたら、彼が自分を殺そうとしているというのだ……。オチは見えてるんだけど、ハッピーエンドだからいいや。
【透明の人】熊野へ旅行へ行ったユーカリとくるみ。ところが茶店で休んでいるところに、警察が飛び込んできた。尾行していた重要参考人の女を見失ったらしい。店の前を通った筈だというが、誰も見てなくて……。「見えない人」のパターンだが、これはキレイ。
(03.1.25)(絶版・楽天データ無し)
【ユーカリさん 吝嗇の人】近所に住む一家は、両親・子供と、おばあちゃんの折り合いが悪い。何でも「もったいない」というおばあちゃんが貧乏臭くてイヤだというのだが……。うわあ、コバルト文庫でいきなりこんな辛い話を。
【死ぬほど愛した…】旅先でお金がなくなったくるみと新哉。ユーカリおばさんに助けを求め、おばさんの知り合いがやっている旅館を紹介してもらった。ところが、行ってみるとそこの女将が亡くなったという……。実際に可能かどうかはチト際どいけれど、トリックそのものは魅力的。
【遠くで死にたい】恋人に裏切られ、死を決意して旅に出た鮎子。ところがいざ薬を飲もうとしたとき、知らないおばあさんに声をかけられタイミングを逸した。そのままおばあさんに付き合うハメになった鮎子だが、ホテルで密室殺人に巻き込まれてしまい……。これ、イチオシ。トリックも動機も、そして鮎子に対する皆の思いも、とにかく文句無し。
【北に恋して】それぞれの思惑を胸に秘めた男女4人が北海道へ旅行した。そして起こった殺人事件。犯人は? 実際にこんなことが可能かのかどうか……。
【特急「燕」驀進す】これは特別編というか、ボーナストラックかな。ポテト&スーパーが主演。昭和十五年の「特急・燕」を舞台にしたミステリを書いたポテトだが、なんとスーパーともども、その昭和十五年の燕にタイムスリップしてしまった。そこにいたのは三十代のユーカリで……というお話。ミステリ仕立てではあるんだけど、それ以前に、昭和十五年で三十代かよユーカリさん! ってことは……きっともう鬼籍に入ってるよねえ? ぐすん。尚、ポテト&スーパー以外にも、この著者ならではのゲストが出てたりして楽しい掌編。
(03.1.29)《詳細情報&注文画面へ》(絶版)
チューリップガーデンを夢みて・新井千裕(朝日新聞社)
というふうにあらすじをまとめてみたが、なんともスットンキョーな話だなあ(笑)。いや、それがいいんですが。こんなスットンキョーな設定でありながら、SFではなく、しっかり《新井千裕ブンガク》してるところが好きな所以。
この作品に限ったことではないのだけれど、新井ブンガクってのは、主人公が一般的にはかなりキツいと思われる状況にいるのに、当人はそんな自分をつきはなしてるっていうか、客観視してるのね。自分に淫してない、そこが魅力。それが読んでて、「飄々とした」という印象になるのだと思う。
この物語も、宇宙人に話を聞いたあとの二人の行動ってのは、実際はかなりのパニックだったりするのだろうけれど、それがちょっと横目で描かれているので入りやすいのだ。感情びしばしの文章だったら、とても生臭くなってしまうところを、上手に読まされてしまう。だってあーた、「動物にしか欲情しない」というオトコのために、着ぐるみ作ったりするのよ!
話の決着は、ずいぶんと意外な展開。思わず「ミステリになるじゃん!」と叫んでしまいそうなくらいの背負い投げ。うわあ、こう来たか。随分切なく、随分救いが無く、それなのに、なぜか救われたような不思議な読後感。
新井作品の中でも、かなり上位にランクする一作品です。これはお薦め。
(03.1.30)《詳細情報&注文画面へ》(絶版)
主人公が放送作家ということで、主人公の書いたコントの原稿がそこかしこに差し込まれる。これがまたクダラナイ……。いや、誉めてるのよ。くだならくて脱力するんだけど、実はこれが主人公の思いの発露(かなり屈折し、フィルタもかかってるけど)になっているあたりが侮れない。
妻の生活が露になっていく過程ってのは、正直言ってあまり気持ちの良いものではない。新井千裕にしては、ちょっと生臭いのね。その一方で、南さんの一件は著者の持ち味である透明感に満ちていてなかなか良いのだけれど、話の展開がなあ……しくしく。
この物語の圧巻は、やはり東京タワー。主人公に定期的に訪れる「ブルー」の正体(?)が分かった瞬間は、思わず息を止めてしまったくらい。ああ、こんなステキな話なのに、そこへ到達するための道が、妻の秘密と南さんの運命だったなんて──その落差というか、繋がりが今ひとつ掴めずに終わったのが残念。もうちょっと読み込んでみなくちゃ、と思ってしまう。が、読み込むと、またあのコントの台本を読まなくちゃなんないんだよなあ(笑)。
(03.1.31)《詳細情報&注文画面へ》(絶版)
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