じゃじゃ本ならし


内田春菊の悪女な奥さん・内田春菊(メディアファクトリー)

 妻だからって食事を作るのは義務なんかじゃない、男友達と飲みに行ったっていいじゃないか、家庭的ってそんなにいいことなのか、などなど。これだけ読むと、フェミニズム万歳みたいになってしまうのだけれど、さすが春菊、奧が深い。この本は一見、打倒古い専業主婦幻想&自由奔放な妻への賛歌であるような体裁をとりながらも、「優しくされたいなら、自分も優しくしてあげなくちゃダメなんだよ」ということを教えてくれる。●●さんのところはダンナさんが優しくていいなー、と羨ましくなるときがあったとしたら、それは●●さんがダンナさんに優しいからなんだよね。求めるばっかりになってないか?ちょっと恐い一冊なのでした。あたしは専業主婦で、この本に出てくる風貴ちゃんとは一寸事情が違うけれど、それでも何かすご〜く納得して読んでしまったのです。
 一章一章に対して頷きっぱなしだったんだけれど、中でも「正しい休日の過ごし方」には特に感銘を受けたのです(笑)。あまり詳しく書くと、自分の主観をやみくもに主張することになりかねないので、あたしの夫婦観に興味のある方は日記をご覧下さい(笑) まぁ、既婚未婚を問わず、世の男女にすべからく読んで頂きたい本であります。というわけで、お勧めマークだ! (96.11.24) 
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ぼくはこんな本を読んできた・立花隆(文芸春秋)

 だいぶ前に買って、拾い読みしただけで本棚に突っ込んでたんですが、ここへ来て再読。なんでかっていうと、まったくの私事なんですけど、この夏に引っ越しをしまして。マンションの広さと他の荷物の関係上、書斎に置ける蔵書量というモノに対して、これまで以上にシビアにならざるを得ない状況になってきたわけです。4畳半に2千冊+でかいパソコン机と来たもんだ。本好きには避けて通れぬ問題なのよね。で、これを読むとあたしの悩みなんて悩みじゃない気がして、なんか楽になりました。わはは。なんせ70書架ですよ>筆者。うちなんか6書架だもんね。でんでんレベルが違うぜ。
 まぁ、そういう些末な問題はさておき、この筆者の本屋巡りの話は面白かった(?)。余分な金を持っていくこと、最初は買わずにチェックだけで梯子して、いちど喫茶店で落ちついて考えてみること、などなど。本好きの連中というのは、多かれ少なかれ、そういう本屋巡りを半分本能でやっていると思うのだけれど、それを読者に教えるというあたりがすごい。そんな事まで教わらなくちゃ本屋に行けないのか、と、読者の方が心配になるなぁ。本の読み方のハウツーだって。なんかやだな、そんなの。この筆者は大学までは文学一辺倒で、今はノンフィクションや実用書・研究書という読み方をされてるせいかもしれないけれど、文学ファン・娯楽読み物ファンには、ちょっとソリの会わない部分があるかも。もっと気軽に読んでいいものだ思うんだけどね、本って。 (96.12.1) 
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プリズンホテル・浅田次郎(徳間書店)

 ずーっと文庫落ちを待っていたのだけれど待ちきれなくて図書館で借りてしまった。面白い。文句無しに面白い。これがエンターティメントでなくて何がエンターティメントだというんだ。あたし力説しちゃうわ。握り拳だって握っちゃうもの。このドタバタ、この人情、なんか娯楽小説の王道!って感じではないですか。
 形としてはちょっと古くさいかもしれないし、流行らないかもしれない。でも、それが浅田次郎の個性なんだな。ヤクザが始めたホテル。ホテルの平面図にいきなり「不慮のガサイレ、カチコミの際には当館係員の指示に従って下さい」と来たもんだ。これで引き込まれなきゃどうにかしてるぞい。わくわく。一癖も二癖もある登場人物たち。誰が主役で誰が脇役じゃない、人物ひとりひとりが主人公というくらい書き込まれている。ワケ有りの客がこのホテルに集まり、出会い、それぞれがそれぞれで問題を解決していく。ご都合主義の大団円万歳!何度でも言うぞ、これがエンターティメントだぁ!難を言えば、最後の結末は、それぞれの人物についてもうちょっと詳しくやって欲しかったなぁ。登場には一章ずつ費やしてるんだから、結末も一章とまではいかなくても、せめて一頁ずつ。だって、ここまで人物が生きてて全員主役状態だったら、読者にだって思い入れの深いひとってのが出てくるもん。あたしはも少し、心中家族について書いて欲しかったのさっ。でもさすがに浅田次郎だ。満足の一冊でした。(でも、あたしは「きんぴか」の方が好きなの) (96.12.2) 
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近頃気になりません?・新井素子(廣済堂出版)

 なんか、悲しいのです。あたし。新井素子氏と言えば、出会いは10代の時ですよ。月刊誌で「星へ行く船」の連載を読んではまり、ずーっと追いかけてきたのに。コバルト文庫なんつーものを買うのが恥ずかしい年になっても、他の本に挟むようにして「ブラックキャット」を買ったのに。「いつか猫になる日まで」や「そして星へ行く船」なんて何度再読したことか。スケールの大きな、すっとんきょーな設定のSF、それでいて登場人物は等身大でとても身近で。それが素子さんの真骨頂じゃないかぁ。それなのに、何なんだこのエッセイ集は!「私にとっての”社会”って、主に旦那と子供と猫」だとぉぉぉぉ???(怒)そりゃ共感はするわよ。あたしも同じ主婦だから、献立に迷うとか、家にいる主婦は会話のチャンスがないとか、それはその通りだと思うけど、なんでわざわざそれをエッセイにする?そもそも世の主婦なら誰でも思っていること、いや、主婦じゃなくっても想像できるようなことを、ことさら活字にする必要がどこにあるんだよぉ。ホームページの日記じゃないんだから。誰もが思うことを、そこから何の発展性もなく、ただ思ったままに書いただけ。時間と金を割いて当たり前の話だけ聞いて、何の結論も出ない。おいおい。素子さん、確かに主婦は忙しい。やってみると、いろんなネタがある。でもね、それは主婦なら誰でもそうだし、主婦だけの専売特許じゃないの。特別な事じゃないの。なんだかこれって、年賀状で他人の子供の写真を無理矢理送りつけられた時のような気がしましたですよ。そりゃあんたは自分の子だから可愛いだろうけど、あたしはかんけーないっつーの、そんな感じ。自分ネタはもういいから、SFに戻って来てください。頼むから。(;_;) (96.12.2) back

迅雷・黒川博行(双葉社)

 内容とはぜんぜん関係のない疑問なんだけど、本を読む度に書名や著者名、出版社、感想などに加えて「発行日」を記録してるのよ。ところが、ハードカバーの中には、奥付にこの発行日が書かれてないのがあるのです。捜すとカバーの折り返しとかに書いてるのもあるんだけど、この「迅雷」はどこにも発行日が書いてない。なんで?奥付には「(c)黒川博行 1995年 printed in Japan」としか書かれてないの。その右ページには初出の掲載雑誌の号が書いてるだけ。なんで?なんで発行日が書いてないの?あたしのデータベースは意固地なので、年月日までちゃんと入力しないと「入力ミスだぜ、べいべぇ」と弾いてしまうのよよよよ(;_;) 仕方ないので掲載雑誌の号から単行本にまとめる時間や装丁にかかる時間を足して、適当に日付を出したのさ。しくしく。
 で、感想であります。読みやすくてぐんぐん読み進められますです。ただ、エンディングはちょっと不満。あたしね、稲垣とケンってゆーのも実は悪者で友永を騙してるんだと思ったのね。そういうどんでん返しが最後にあるんじゃないかと思ってたの。だって、稲垣もケンも、どういう人物なのかちゃんと書かれてないでそ?謎ばっかりで。自分で自分を語る部分はあってもホントかどうか判らないし。信用する基盤が文章からは受け取れない。で、あのエンディングだったので、「この話、結末が判らんやんけ」と思ってしまったわけです。はい。ううむ、あたしにとっては消化不良の一冊でしたの。話運びが面白かっただけに尚更。 (96.12.5) 
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キリオン・スレイの生活と推理・都筑道夫(角川文庫)

 20年前の作品であります。が、あまり古さがない。いや、古いんだけど最近の都筑作品と比べて古さがないということで、それはつまり、昔の作品が新しかったのか今の作品が古いのかは議論の別れるところであります(笑)探偵役が奇妙なアメリカ人なわけだけど、んでも、内容は「退職刑事」に近い。「退職刑事」が完全な安楽椅子モノなのに対して、こっちは犯人と対決しちゃったりするから、自分で「ワタシみたいなアームチェアディテクティヴ」って言ってるわりには全然安楽椅子じゃないし。そのあたりが中途半端だったな。中には6編の短編が入ってるのですが、いずれも謎がすっとんきょーです。でも無理のない論理的な解決はさすがに都筑氏という感じ。「幻想的な謎よりも論理的な解決」が身上の都筑氏ならでは、のものです。気合い入れて読むのではなく、通勤電車の中で読むのがお勧め、ってとこかな。 (1996.12.10) back

審判の日・五十嵐均(角川文庫)

 うーん、これは設定がまず面白い。キリストの遺髪が発見され、その遺伝子を科学的に解明するって下りの一方で、現代に蘇ったキリスト。ううむ、登場人物が外国人だとカタカナの名前が覚えられないんで、あんまりのめりこめないんだけれど、これは思わず引き込まれてしまいました。とにかく設定の妙味と、登場人物の深さがいいですね。特に主人公の妻「マリア」がいいなぁ。ただ、せっかくそこまで魅力的な設定と魅力的な登場人物を備えていながら、やっぱ扱う問題が問題だから結末が無難なものになってしまってて残念。こういう言い方はそぐわないのかもしれないけど、「どーせフィクションなんだから」もっと思い切った結末でよかったんじゃないかと思うんだけどなぁ。下手に書くとキリスト教関係者からクレームが来たりするのかしら。うーん、仲のいい友達の間柄でも、宗教と政党の話はするなって言うもんなぁ。んでもやっぱ、尻すぼみになってしまったようで、残念なのでありました。(96.12.9) back


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