黒猫ルーイ、名探偵になるキャロル・N・ダグラス/ランダムハウス文庫

 
アメリカではすでに20作を数えるという人気コージーが日本初お目見えってんで、さっそく買って読んでみた。原題は「Catnap」……猫さらい、ですね。
 舞台はラスベガス。コンベンションセンターでブックフェアが行われており、広報のテンプルが主人公。彼女が行方不明のマスコット猫を捜索中に死体を発見してしまい、関係者と目される作家たちや編集者たちはいずれも一癖あるひとばかり──という、まぁ、この手のミステリとしてはお決まりのパターン。

 ただ今回気持ちよく読めたのには、理由がふたつある。ひとつは、(このレーベルにしては珍しく)ロマンス成分が薄いこと! もちろんまったく無いわけじゃなくて、むしろこれから徐々に増えて行きそうな気配は漂ってるんだけど、ごく普通のスパイス程度に留められそう。
 そしてもうひとつは、ヒロインがバカじゃないこと! エレイン・ヴィエッツが言うところの「殺人犯が潜んだ空家に丸腰でフラフラ入っていくような」脳味噌の足りない、自らの危険(しかも男性に助けてもらう)と引き換えにじゃないと犯人を突き止められないようなヒロインではなく、ちゃんと頭脳で推理するところがグゥ。
 ──え、探偵役なら当たり前じゃないかって? いやいや、ことコージーに於いては、特にここ10年くらいのコージーに於いては、「恋人候補の男性が白馬に乗って助けに来てくれるのを前提に危険を冒すヒロイン」が実に多いのよ! しかも作戦としてではなく、ただ単に好奇心だったり独善からだったりで。そういうのには辟易してたので、今回のように、「ちゃんと考えるヒロイン」は嬉しい。

 ミステリ的には、まぁ、可もなく不可もなくってあたりかな。真相解明に重要なあることについては、日本人にはちょっと見当もつかないし。ただ、だからといって面白くないわけではなく、その見当がつかないあたりの情報が実に興味深かった。これって舞台を日本に移して翻案したらどうなるだろうと考えるとかなり楽しかったぞい。日本に無理矢理当てはめるなら字面は同じでも読みが──おおっと、これ以上はやめておこう。いひひ。