朝ドラのヒロイン像

 特に朝ドラマニアというわけではないが、放送がちょうど朝食の時間と合うし、他局のワイドショーや情報番組に興味がないので、なんとなくずーーーーっと朝ドラを観ている。
 でもってゲゲゲに変わって、今日から「てっぱん」。番組が始まってすぐの、ヒロインの紹介ナレーションで「来たか……」と思った。

 〈思い込んだら一直線〉

 うわあ、またこのパターンかよヒロイン。
 昔からなんだが、どうして朝ドラのヒロインには「自分が常に正しくて押し付けがましい一直線キャラ」が多いんだろうなあ。「てっぱん」は今日から始まったばかりだからまだ断定はできないけれど、それでも、見知らぬ老婦人がトランペットを海に捨てるのを目撃したヒロインが海に飛び込み「トランペットが可哀想」「音楽の神様のばちがあたる」とタメ口で怒るシーンには、正直げんなりした。
 普通、知らない人──しかも年輩のご婦人がそんなことをしてたら、何か事情があるんだろうとは思わんか? それは赤の他人(まあ、実は赤の他人じゃなかったわけだが)が自分の価値観だけを基準に邪魔をして、他人の心よりも楽器の無事を重視して、自分の4倍もの年齢の人相手に初対面でタメ口で文句を言うことではないと思わんか?

 これまでの朝ドラヒロインにはそういうのが多くて、自分が納得できないことがあったり、身近な誰かが困ってる悩んでるみたいなときには「私、黙ってられない!」とばかりに東奔西走する。そういうのを元気で親切と捉えるのかもしれないけど、正直言って実在されると、すべての行動のベースが自分の思い込みに寄って立ってるので、かなり押し付けがましい。その最たるものが「まんてん」だったんだが、まあそれは当時にいろいろ書いたので割愛。

 ゲゲゲはそういう部分のない、「自分のしたいこと」じゃなくて「すべきこと」の中で日々頑張るキャラで、そこがとても良かったのに。あと、「てるてる家族」の冬ちゃんとか、「私の青空」のなずなとか。このあたりは押し付けがましさがなくて、自分のすべき世界ですべきことをやっている・守るべきものを守っている・他人に自分の価値観を押し付けないというあたりが、とても好きだったんだが。
 もしも自分の同僚や部下が彼女たちだったら──と考えたら、いくらバイタリティとやる気があっても、従来の朝ドラヒロインキャラよりは、ゲゲゲや冬ちゃんやなずなみたいなタイプの方が信頼できるよな、と思う。後者なら、少なくとも遅刻や無責任な仕事はしないと思うから。前者は、何かあったら仕事は二の次にしそうな気がする。実際、作中でそういう場面は何度もあった。

 本好き少女たちが小学校時代に通過儀礼のように読む三大作品が「赤毛のアン」「若草物語」「あしながおじさん」なのだが、あたしは「赤毛のアン」だけは好きになれなかった。「若草物語」「あしながおじさん」は今に至るまで何度も何度も再読してるほど好きだというのに、「赤毛のアン」は苦手だった。こういうやつとは友達になりたくないし、自分自身もこうはなりたくないと思ってた。
 今にして思う。赤毛のアンって、まんま朝ドラのヒロインキャラなんだよな。そりゃ嫌だわ。

 まあ、最初は「うわあ、また〈自分の気持ちが第一〉キャラかよ」と思っていた「ちゅらさん」が途中からぐんぐん変わってどんどん面白くなっていった、という例もあるので、そうなることを楽しみに「てっぱん」を観ることとしましょう。