身辺雑記

今週のワタクシ2/26

2月20日 日曜日
 
「銀盤のトレース」「辞めない理由」などを書かれた碧野圭さんは名古屋出身の作家さんで、前々から水生大海さんと一緒に「帰郷の折りには迎撃しますよ飲み会しましょう」という話をしていた。で、いよいよ4月頃に帰るかもーという報告を受け、じゃあ飲もう飲もうとツイッターで盛り上がってたのだ。が。
 なんかここに来て、話がどんどん大きくなってきたのだ。

 碧野さんは、
ブックマーク名古屋にあわせて帰ろうかな、とおっしゃっている。
 ブックマーク名古屋に行きたいな、と行ってる遠方の書店員友人がいる。
 在名児童小説家の友人にも声かけていい?と水生さんが言う。
 もと名古屋の書店員で現在出版社勤務の知り合いが「楽しそうだな」と言う。
 私、書店員ですが伺ってもいいですか、と訊ねられる。

 いつの間にか「碧野さんの帰名を迎撃するついでに、
在名の作家・書評家・書店員が集まって交流しよみゃあ会」という主旨に変わっているではないかっ! え、そんなたいそうな会の幹事やるのかあたしっ!

 とは言え、あたしの交友関係はミステリ作家メインだし、水生さんが声をかけてくださる児童文学作家さんの他は、碧野さん知り合いの書店員さんくらいしか直接コンタクトとれない。
 ってことで、ここを読んでる在名書店員さん、作家さん、書評家さん、興味があったらツイッターで @ohyeah1101 宛にコメントください。とりあえず出版業界・書店業界の人に限らせていただきます。現在のところ作家組は、碧野圭さん・水生大海さん・
後藤みわこさん・太田忠司さん・黒田研二さんといったあたりが参加予定です。
 

2月21日 月曜日
 明日(22日)発売の文藝春秋「オール読物」3月号に、エッセイ「待てば介護の日和あり」が掲載されてます。「脳天気にもホドがある。」とかぶる部分もあるけど、後半は新ネタ&後日談。ドラゴンズ話ももちろんあるので、ご笑覧ください。ダンナの入院写真も活字メディアでは初公開じゃー。

2月22日 火曜日
 夜、名駅へ。文春のAさんと、太田忠司さんと食事です。太田さんの文庫「落下する花」が出来、文庫解説を書いたあたしも頂戴できるってことで便乗してきました。
 セントラルタワーの五鐵で、名古屋コーチンのすきやき。うまうま。しかしAさんがオリックスファンと聞き、一瞬にして昨年の交流戦での大逆転負けのトラウマが甦る。聡文が北川にホームラン打たれたんだよなあ……(遠い目)。

2月23日 水曜日
 manacaデビュー。おお、iPod Touchの頑丈なレザーケースのポケットに入れたままで通れた。しかし10円残ったユリカはどうしてくれよう。


2月24日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、大島真寿美の「ピエタ」でした。今年のベスト(まだ2月だけど)だと熱く語る。したらば「じゃあ上半期の直木賞は」と多田さんに振られたので、思わず「とる!」と断言してしまった……。慌てて「多分、候補に入っても不思議はないかと」とフォロー。いやあ、でもこれは傑作ですよ心震えますよ。

2月25日 金曜日
 買って来た新刊本4冊が見当たらない。どこに置いたか自分の行動を懸命に思い返す。書店の帰りにスーパーに寄って食料買い込んで、そのエコバックに本も一緒にいれて持ち帰って、まずペットボトル類を納戸に放り込み、それからエコバックを引きずって台所に行って、食料をしまって……。

 あっ。

 冷蔵庫の野菜室に入っていた……。すげー冷えてた……。

2月26日 土曜日
 
オープン戦開幕。さあ始まった始まった野球の季節。

 東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」がまあ、ケツが六つに割れるほどのヒットを見せているわけだが、ツイッター経由で知った
この記事に呆然とする。

 
「本格ミステリーなのに、こんなに面白いの初めて」と全国の書店員が絶賛

 するってえと何かい、本格ミステリってのは面白くないのがデフォルトかい。
 まあおそらくこれは「論理至上の小難しいイメージのある本格ミステリというジャンルで、ここまで軽妙で笑える作品は初めて」とか「しっかりした謎解きのある本格ミステリなのに、ユーモアと両立している」みたいな意味だとは思うのよ。でも、この書き方だと「本格ミステリってつまらないのに、これは面白い」というふうに受け取られてしまうじゃないか。
 しかもこのフレーズ、この記事を書いた人の手によるものかと思ったら、なんと版元の広告に載った文言だというじゃないか。ええええ、出版社がこんな表現するのって切ないよう。

 更に記事の中には、
「真犯人を特定するのは、なんと日本初?!の安楽椅子探偵、執事の影山です」という一文がある。この「日本初?!」というのがどこにかかってるのか首を傾げた。安楽椅子探偵も、執事探偵も、いくらでも前例があるが──。あ、「執事の影山」ってのが日本初なのかな。それならあり得る。んなアホな。

今週のワタクシ2/19

2月13日 日曜日
 税理士さん来訪。資料をぜんぶ預けて、あたしの作業はこれで終了!

 ところが夜になって税理士さんから「かなり抜けや不確実なところがあるので、4月あたりに一度お邪魔して、会計ソフトの使い方をチェックさせてくれ」というメールがきた……。どきどき。

 中日新聞・読売新聞・毎日新聞のポプラ社の広告に、あたしの
「KAGEROU」評が引用されてます。
 
2月14日 月曜日
 
ツイッターのTLに「チョコあげた」「チョコもらった」「うふふ」「えへへ」という一派と、「凍ればいいのに」「死ねばいいのに」という一派が混在していてとても面白い。このTL、なんか既視感があると思ったら、クリスマスイブのそれだ。

2月15日 火曜日
 と、東京ガールズコレクション in 名古屋に、ドアラが出演……だと?

2月16日 水曜日
 Facebook始めました。
 出身高校、出身大学と卒業年を登録したら「友達では?」と30年近くまえの同級生がずらずら出てきてビックリした……。うわあ、フルネーム覚えてないような人まで出てきたよ。でもこれ、女性は苗字が変わってるからイマイチ分からんなー。


2月17日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、中町綾子の「なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか? 〜テレビドラマと日本人の記憶」でした。テレビドラマでは定番なのに現実社会では見たことねーよ、というベタなシーン(断崖絶壁の上で長々と自白する犯人、雨が降っても決して傘をささない恋人たち、眼鏡をとると美人、取調室で出されるカツ丼、などなど)がどのように生まれ、なぜ定着していったのかを、古今のテレビドラマの例を数多くあげながら分析した一冊。

 カツ丼は本当は出ないんだよー。でも自分で支払うならとってもらえるんだよ、ということをあたしは個人的に知っているというと、「個人的に」というところに多田さんのツッコミが入ったので、「フライデー襲撃事件のときにビートたけしさんが話してた」という話題にすり替えましたとさ。くわばらくわばら。

 自転車友人たちは覚えているだろうか、もう二十年近く前、大阪南港で傷害事件があったときに、うちのダンナともうひとりの自転車友人が犯人を取り押さえたことを。あのときダンナが警察に証言しにいったときに「カツ丼出る?」と訊いて(普通訊くかそんなこと)仕入れた情報なんだが、ラジオって片手間に聞くからね、「大矢サンのダンナさんは取り調べを受けたことがある」てなふうにとられると困るので誤摩化しましたのさ。

2月18日 金曜日
 なかなかやる気スイッチが入らない。でもそろそろ編集さんから「ご様子伺い」という名前の催促メールが来る時分だよな……などと考え、はたと気付く。今日って芥川賞・直木賞の授賞式&パーティじゃないか! 編集さんたちはこぞってそっちに行っているであろう。しかも文春の編集さんは主催側だからめちゃ忙しくて、文庫解説の〆切なんざぁ思い出してる暇はなかろう。ひっひっひ。

 安心して寝る。<寝たのか!

2月19日 土曜日
 
てなことを昨日のツイッターに書いたらば、「忘れてたのにツイッターを読んで思い出した」という編集さんから「ご様子伺い」のツイートだのメールだのがまあアンタ、来るわ来るわ。雉も鳴かずば撃たれまい。ケーン。ちなみに「けんもほろろ」という言い回しは雉の鳴き声から来ているそうな。

 夜中過ぎに原稿を書き上げて、前のめりに倒れながら送る。

今週のワタクシ2/12

2月6日 日曜日
 名古屋トリプル選挙、投票〆切と同時に当確が出る。まあ、なあ。
 
2月7日 月曜日
 
自分の中の乙女度が激しく低下していることに気付かされた瞬間:
 バレンタインチョコを買って、何の躊躇もなく当たり前に
「領収書ください。但し書きは贈答品で」と店員さんに告げたとき。

2月8日 火曜日
 ケアマネージャーさん来訪。介護保険再認定時期ってことで、山のような書類にダンナが左手でサインしている。思えば最初の認定のときはまだ文字が書けなくて、ぜんぶあたしが代筆したんだよなあ。そう思えばよくぞここまで回復したものよ。

2月9日 水曜日
 PHP研究所のYさんとフリーエディタのMさんが、
太田忠司さんとの打ち合わせで来名されるという。「打ち合わせのあとで食事するんですが、大矢さんもご一緒に」と、付けたし感100%のお誘いを受け、喜んで名駅へ。食べたー。喋ったー。楽しかったー。
 Mさんはとても暖かで柔らかい雰囲気の、けれど仕事はなかなかの切れ者な、ステキな女性でした。趣味は拷問(について読んだり調べたりすること)だそうで、好きな拷問器具はアイアンメイデンというステキっぷり。あたしはアイアンメイデンより愛工大名電の方が好きーなどと、噛み合ってるようで噛み合ってない会話に花が咲く。

 夕方5時頃家を出て、帰り着いたのは11時近く。実に6時間も家をあけていたのだが、これは一ヶ月まえにダンナが発作を起こしてから初めてのこと。1時間ごとに生存証明のメールもしくはワン切りをするという約束のもとでお出かけしました。ちょっとずつ慣れていかないとね。四六時中そばにいるなんてハナから無理なことなんだから。

 
2月10日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、岩井三四二の「おくうたま」でした。浅井長政の側室の息子、喜十郎が落城から逃げ延びて外科医に匿われるってな物語。大河ドラマではさくっと存在を消されていた万福丸の他に、こういう息子もいたんだよという話と、歴史小説ってのは読者が話の先を知っているジャンルなので、いかにドラマチックに史実と辻褄を合わせるかが作家の腕の見せ所という話をしました。

2月11日 金曜日
 
雪。こんな日に米が切れた……。

 昨日今日と、ちょっと風邪気味だったこともありダラダラしている。ダラダラしていたら脳味噌もすっかり弛緩してしまい、木谷恭介「女人高野万華鏡殺人事件」を「女子高生万歳殺人事件」と見間違えた。もう寝た方がいいと思った。

2月12日 土曜日
 
体の不調を訴え、病院に行った友人からメールが届く。

 「私は何かを持ってる、持ってると言われ続けてきました。そして今日、何を持っているかわかりました。それは尿管結石です」

 言うてる場合か。

今週のワタクシ2/5

1月30日 日曜日
 唐突に「もう意地も張りもなくなりました」というフレーズが降ってきた。何かの小説かマンガの一節だと思う。遺書とか、そんな感じの手紙の一部だと思うんだよな。でも何の小説(もしくはマンガ)だったかわからない。いや、もしかしてドラマのセリフか? とまれ、まったく思い浮かばず、ずっとイライラしている。思い出したから何ってんじゃないんだけどもさ。
 
1月31日 月曜日
 時代小説ばかり読んでたら脳内がすっかりお江戸でござる。ダンナに呼びかける時、つい「ちょいとお前さん」と言ってしまった。

2月1日 火曜日
 キャンプ開始! 球春あけましておめでとうございます。
 ところがもうスポーツニュースは日ハムのユウちゃん一色で、ユウちゃんが動いたとか歩いたとか息したとかそればっかり。

 ……ドラゴンズのドラフト1位もユウちゃんなんですけどね。

2月2日 水曜日
 今週末に予定されている名古屋市のトリプル選挙の期日前投票にダンナと行ってきた。
 したらばさ、なんてったってトリプルだから、こっちで用紙をもらい、こっちで書いて、この箱に入れたら、今度はこっちに移動してまた別の用紙をもらい──ということを繰り返さなくちゃならないわけで。こりゃ面倒だと思ってたら、ダンナの体が不自由だと見てとるや、職員さんが3種類ぜんぶの用紙を持ってダンナのところにシュタタタっと駆け寄り、候補者一覧も見せてくれ、最小限の移動で済むように取りはからってくれたよ! しかも片手では紙が動いて書きにくいと気付き、文鎮まで持って来てくれるというケアぶり。
 選管なのか市の職員なのかは知らないけれど、グッジョブだ!
 
2月3日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。ただ今日は! 今日は! いつもの多田さんがお休みで、代打に若狭敬一アナウンサー登場! 知ってる人は知っている、サンデードラゴンズの司会者ですドラゴンズの選手とお友達です。なんとか取り入りたい。なんとか取り入って浅尾と、中田と、うふふふふ。そしたらば氏田アナから「いつもと顔がぜんぜん違う〜〜〜」と突っ込まれてしまった。そ、そんなことないですよう。でへへ。

 そんな邪念を抱いた今日の番組で紹介したのは、若狭さんが野球好きということもあり、ロバート・ホワイティングの
「野茂英雄〜日米の野球をどう変えたか」でした。野球話では盛り上がったんだが、残念ながら生放送中のため下心は押さえざるを得ず。
 CM中に「出身はどこですか」と聞かれたとき、素直に大分ですなどと答えず、あそこで「中田賢一投手と同じ大学なんですよー」くらいのことを言えば、何か今後違う展開があったかもしれないのにーのにーのにー。

2月4日 金曜日
 ときどき利用するケーキ屋さんでチーズケーキを買うと「25回目のご利用ですので、チーズケーキをおひとつプレゼント」と言われた。
 「じゃあ今買ったこれを」というと「それが25回目ですので」
 「じゃあ次回」というと「今日かぎりとなっております」
 いや、1日に2個もいらんし。どうしろと。

2月5日 土曜日
 
なんかいろんなことが思い通りに行かず、むしゃくしゃして、コンビニで普段買わないジャンボフランクなどを思わず衝動買い。したらばケチャップ&マスタードを店員さんが入れ忘れるという、とことん思い通りに行かない日。

今週のワタクシ1/29

1月23日 日曜日
 溜め込んでいた「龍馬伝」をすべて見終わる。龍馬より、弥太郎より、後藤象二郎にめちゃくちゃ惹かれて、今日は彼の評伝を読んで過ごした。
 後藤象二郎というのは、龍馬とタッグを組んで船中八策を世に出した維新の立役者、という印象だった。だからこの「龍馬伝」に出て来た当初、実に狭量で嫌なヤツに描かれてるのを見て「え、これをどうやって龍馬に協力的にさせるんだろう」とずっと気になってたんだが……。

 こう来ますか! うわあ、こう来ますか!

 すごいなあ、この後藤象二郎のキャラクタのベースはまったく変えずに、それでも藩のために龍馬と協力するだけの度量と先見の明は持っているという、つまりは狭量なだけの男じゃないぞということを物語の後半にどんどん出してくる。と同時に、後藤象二郎が龍馬に対して抱いている賞賛と嫉妬と憎しみのアンビバレントな思いがどんどん滲み出てくる。この脚本家も、そして演じた青木崇高さんもすごい。

 この大河、名場面は多々あれど、ベストワンを挙げるなら、それは龍馬でも弥太郎でもなく、後藤象二郎が山内容堂の前で「妬ましかったがです!」と叫ぶシーンだ。それほど素晴らしかった。
 
1月24日 月曜日
 チェン、来シーズンオフにはメジャー行きか……。

 って、去年もそんなこと言ってなかったっけか。

1月25日 火曜日
 ケアマネージャーさんから、拙著『脳天気にもホドがある。』を読んだ右麻痺の女性が「我慢しなくていいんだ!」と、いろんな福祉サービスを利用して趣味の温泉巡りを再開したという話を聞いた。
 これは、嬉しい。
 いろんな感想を頂戴して、そのひとつひとつがとても嬉しいんだけど、それでもこの感想はひときわ嬉しい。

1月26日 水曜日
 明日ラジオで紹介する
「だいたい四国八十八ヶ所」、ディレクタさんから「読みはハチジュウハチカショですか、それともハチジュウハッカショですか」と訊かれ「は?」とうろたえる。わー、考えたことなかったけど、そうかラジオはそういうところが大事なのね。
 版元に問い合わせて「ハチジュウハッカショ」だと分かったので事なきを得たが、そういえば「畠中恵」さんは「はたなか」じゃなくて「はたけなか」さんだったり、有川浩さんは「ひろし」さんじゃなくて「ひろ」さんという女性だったりということが分かったときは驚いたものだ。まだまだ思い込みで間違えてるケースがありそうだなあ。

1月27日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、宮田珠己の「だいたい四国八十八ヶ所」でした。観光地情報もグルメ情報も参拝ノウハウもないお遍路旅行記、というと「なんだそれ」という反応。だから「だいたい」なんですってば。

1月28日 金曜日
 税理士さんから「13日に行くからね」とメールを戴く。つ、つまりそれまでに領収書とか支払い調書とか帳簿とか……ギャース!

1月29日 土曜日
 
ダンナの実家近くの書店に行ったら、いまだに拙著『脳天気にもホドがある。』を話題本のコーナーに面陳してくれていた。地元はありがたいのう。

今週のワタクシ1/22

1月16日 日曜日
 名古屋、日中の気温が氷点下。真冬日じゃないか、と思ったが午前0時台に0度以上あったので「一日を通して氷点下」という真冬日の基準には合わないらしい。固ぇこと言うなよ、と思う。夜から雪。
 
1月17日 月曜日
 おお、雪ーーーー! こんな日に出かけるのはダンナの足下もあたしの運転も自殺行為なので、すべての外出をキャンセルして、自宅でのてのてしながら過ごす。

 ところで昔、三好達治の有名な詩「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降り積む」を「太郎の上に雪降り積む」と間違って覚えていた。それでは単なる凍死体だ。

1月18日 火曜日
 介護保険で利用できる緊急通報サービスの担当お姉さんがシステム点検に来訪。「寒いのでお体、気をつけてくださいね」と言うそのお姉さんが、この寒さにおみ足出しまくりのミニスカートであるという事実にハンパない女子力を見た。

1月19日 水曜日
 北森鴻
「ちあき電脳探偵社」(PHP文芸文庫)を頂戴する。もったいなくて読めない。北森さんが急逝されて、もう1年か……。
 
1月20日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、小路幸也の「ピースメーカー」でした。1974年が舞台、という話をしていて「私はまだ小学生でしたが」と言うと、女性アナウンサーの氏田さんが「私まだ生まれてません」とけろっと言ったので、一瞬にしてあたしと彼女の間にマリアナ海溝より深い溝ができる。ラジオのリスナーに溝をご覧戴けないのが残念でならない。

1月21日 金曜日
 京都から自転車友人KAIちゃんが出張ついでに来訪。この日記を読んでダンナの身を案じてくれたらしい。ありがたやありがたや。ダンナを早々に寝床に追い込み、KAIちゃんと一緒に近所の居酒屋へ。外に飲みに出るのは今年になって初めてだ。KAIちゃんは、いくつかのジャンルに於いてあたしよりずっとダンナを理解してくれてるので、彼と話すといろいろ腑に落ちてすごく楽になる。

1月22日 土曜日
 
KAIちゃんとダンナはひたすら鉄道模型を作っている。ま、いいんですけどね。おかげであたしも出かけられたし。

今週のワタクシ1/15

1月9日 日曜日
 昨日の夜遅く、脳内をあるメロディが回り始めて止まらなくなった。その曲のタイトルが出てこない。気になって気になってしょうがないので、ツイッターに「♪ぱらっ、ぱらら、ぱっぱっぱー ♪ぱらっ、ぱらら、ぱっぱっぱー ♪ぱら、ぱらららら、ぱららぱらっぱぱらっぱぱ〜」「ラッパ系で行進系」と書いてみた。

 すぐに「クワイ河マーチ」と答が出た……。
 すげえなツイッター。いや、すごいのはこれで分かった人たちか。
 
1月10日 月曜日
 直木賞候補作、犬飼六岐「蛻」を読む。時代小説にしてばりばりの本格ミステリ設定に仰天。
 そのあとは、文庫解説を書く作品の作者さんの、他の作品をざくざく読む。

1月11日 火曜日
 全国で伊達直人が児童施設に贈り物をしている。ランドセルや文房具が主流らしい。ここらでテニスラケットを寄付する「クルム伊達直人」の登場が待たれる。

 「小説推理」用のレビュー原稿を書き上げ、送信。次の文庫解説に着手。

1月12日 水曜日
 ニュースをつけっぱなしにしていたら、民主党の党大会だかなんだかの映像が映ってて、若手議員が党の姿勢について何やら意見を述べていた──と、そこに出た名前を見て「おや?」と思う。改めてその議員の顔を見て「ええっ!」と思う。
 あたしが気象会社に勤めていた頃の、後輩じゃないかーーーーーー! うわあ、あの子がここここ国会議員に! どっしぇーーーー!

 思えばあたしが会社を辞めてからもう16、7年になるわけだから、そりゃみんな当時のままじゃないよな。それにしてもびっくりした。


1月13日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、今尾恵介の「消えた駅名 駅名改称の裏に隠された謎と秘密」でした。

 出演後はいつもはしばらく栄をぶらぶらしてるんだが、先週の木曜にダンナが発作を起こしたので、今日はできるだけ早く帰ろうと、今日はコーナーが終わるなり帰途につく。ただし朝マックだけは食べた。<そこは譲れないらしい。

 今日発売の「週刊文春」1/20号で、石田衣良『池袋ウエストゲートパークX PRIDE』の書評を書いてます。IWGPもこれで一区切りだそうだ。
 
1月14日 金曜日
 なかなか頭が原稿書きモードにならないので、すぱっと割り切って確定申告のための事務仕事をすることに。どの仕事までが昨年の仕事になるのか、毎年税理士さんに教わるんだが、毎年この時期には忘れている……。入金した分じゃないって言われたんだよな、「昨年のうちに請求が発生した案件は、入金されてなくても未収金として昨年の収入に計上」って言ってたよな税理士さん。でもさ、そういう、かちっとした〆ってのがないのが出版界なのよ。

 そして〆はなくても〆切はあるのであった……。だはあ。

1月15日 土曜日
 
ようやく解説原稿のとっかかりが見つかる。てか、見つかったのはこれまでなかなか姿を現さなかった「やる気スイッチ」かも。

消えた町名

 CBCラジオ「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演の日。
 今日紹介したのは、今尾恵介の
「消えた駅名 駅名改称の裏に隠された謎と秘密」(講談社+α文庫)でした。なんか思わせぶりな副題だけど、そんな禍々しい事情のものはありません。ごく普通に納得できる理由ばかり。町名変更とか、戦時中の事情とか、縁起が悪いとか、商売魂とか、聞き間違えるとかね。
 でも、ひとつひとつ見てると、いろんな歴史が見えて面白い。

 でもって今日ラジオで、「町名変更で消えてしまった町の名前が、駅名には残っている」例として挙げたのが、名古屋市営地下鉄東山線の「伏見」駅。
 これ、あたしは本書を読むまで知らなかったんだけど、今は
「伏見」っていう地名は存在しないんだってね。友人と飲み会の相談をするときなんかにごく普通に口に出す「長者町」も「矢場町」も、今はないんですってよ奥さん! あのあたりは全部、昭和四十年代に栄○丁目とか錦○丁目とかに変わったのだそうだ。

 伏見界隈──いや、伏見町だったところ界隈を歩いてると、交差点の名前に「広小路長島町」だの「広小路桑名町」だのと三重県の地名と同じ名前がついている。名古屋に嫁いできた当初から「このあたりは三重と何か関係が?」と不思議に思って、調べてみたことがある。
 予想通り、信長の時代に三重から来た人々が住み着いた場所で、自分の故郷の名前を町につけたのだそうだ。もちろん、桑名町も長島町も、今は交差点の名前だけ。そういう歴史まで消えちゃうのはもったいないっつーか、でも交差点の名前だけにでも残って良かったっつーか。

 伏見も矢場町も、今は存在しない町名だけど、駅名には残ってるわけで、これは大事にして欲しい。あ、栄も昔は「栄町」だったそうだ。辻真先さんが何かのエッセイに書いていたが、辻さんは「栄町」のご出身で、それは今の「栄」とはまったく別なのだとおっしゃっていた。そもそも指すエリアが違うんだものなあ。伏見も矢場町も今は「栄」なんだから。
 名鉄瀬戸線が都心乗り入れを果たした時、駅名が「栄町」になったのは市営地下鉄との区別のためだろうけど、あの名前を懐かしく聞いた人もきっと多いのだろう。

 そう言えば、名古屋の地名で面白いなあと思ったのは
「名駅」。名古屋駅周辺の地名なんだけど、駅の略称をそのまま地名にするって、何だそれ(笑)。駅ができたのがよほど嬉しかったんだろうか。東京や大阪で東駅・大駅なんて地名、ないもんなあ。

 もちろん「名駅」という名前ができたのは名古屋駅ができたあとだそうで(そりゃそうだ)、それまでは「堀内」とか「笹島」とかだったらしい。あ、「笹島」は今もあるか。……あるよな? ……(調べている)……げっ、無いわ。
「笹島」という地名も、今は交差点名と駅名だけなのかー。うわあ。

 とまれ、名古屋駅ができたので「名駅」という地名をつけたという発想は、その善悪はさておき、興味深い。と思って気がついた。
町の象徴をそのまんま地名にすると言えば、豊田市がそうじゃないか! 挙母(ころも)という由緒ある地名があったのに「世界のトヨタ」があるからってんで市の名前をまんま会社名からとったという……。そう言えば、すったもんだでボツになったが、南セントレア市なんていう案もあったっけ。つまりこれって愛知県民の県民性なのか? そうなのか?

今週のワタクシ1/8

1月2日 日曜日
 今日から仕事を始めるつもりだったのだが、やる気スイッチが見つからず、結局断念。どうやらスイッチは自宅の中にはないらしい。
 
1月3日 月曜日
 
やる気スイッチはコメダにあった。年末、コメダで原稿書いたときに置き忘れてきたらしい。ということでコメダにこもって原稿を書く。

1月4日 火曜日
 待ちに待った燃えるゴミの日。
 ゴミを出した以外はひたすら仕事。ときどき気分転換にサイトの更新など。

1月5日 水曜日
 コメダに籠って、今日〆切の原稿を書き上げる。OKも出て一安心。
 
1月6日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演。今日紹介したのは、堂場瞬一の「チーム」でした。箱根駅伝を舞台に学連選抜のランナーたちを描いた傑作だよー。

 そのあとはダンナの
初発作で超バタバタしたわけだが、事なきを得て一安心。あとになって、病院に着いたとき、救急隊の皆さんに御礼を言わなかったことに気付き、深く反省。ここで書いてもしょうがないんだけど、ホントにホントにありがとうございました。
 
1月7日 金曜日
 昨日の今日なので、あまりダンナから眼を離すのは心配だな、買い物もダンナが昼寝をしてる間にソッコーで行ってソッコーで帰ってこよう……と思っていたのだが、買い物に行ったら行ったでタイムサービスの時間まで粘ったり、ちょこっとお茶したりしてしまった。
 基本的にあたしって、真剣味が足りないんじゃなかろうか……。

1月8日 土曜日
 
昨日の夜中にゲラが10枚届く。戻しは週明け。その翌日は新刊レビューの〆切。まだそっちのゲラは読んでない。きゃあ。ここここの連休は仕事に埋もれなくては!
 どうせしばらくは長時間の外出は控えようと思っているところなので、きっと仕事も捗るはずだ!

あっちもこっちも正月ボケ

 なまもの書評を更新しました。レスリー・メイヤー「史上最悪のクリスマスクッキー交換会」と有栖川有栖「長い廊下がある家」の2冊。
 去年はとにかく書評をさぼってさぼってさぼり倒したら、あとになって読んだ本の記録がなくてえらい苦労したので、今年(というか昨年11月出版分以降)はできるだけマメにアップしようとココロに誓った次第です。少なくとも、良いと思った本については忘れず記録をとっておこうと。日記の更新も然り。今年は2年前に戻ったつもりで、たとえ面白い話がなくても、できるだけ毎日書くよ。

 ……さていつまで続くかな。(弱気)

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 今日は今年最初のダンナのリハビリ通院。担当の療法士さん(ご存知、織田先生(仮名))がダンナの歩きを見ながら「右足の降ろし方が雑なんだよなあ。
That's 雑」と新年早々腰が砕けるダジャレをかましてくれた。普段は厳しくてクールなくせに、油断するとこういう面をチラ見せするから侮れない。

 てか先生、今日、はっきりと二日酔いでしたよね? 時々えづいてたよね?
 年明け早々で通院患者が少なくて、ちょっこし気を抜いたたね? うふ。

 あと、会計窓口のお兄ちゃんが、昼休みの誰もいない待合室で、
踊っていた
 何だったんだろうあれは……。
 あたしに気付いた瞬間のお兄ちゃんの慌てぶりと言ったら、部屋でエロビデオを見てるところにいきなり母親に入って来られて慌ててビデオ止めて意味なくそこらを片付け始める中学生みたいだったぞ。

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 夕方、テレビつけっぱなしで家事をしてたら、「
暴走族から奇跡の復活」という声が聞こえた。更正してエラい人になったみたいな話?と思ってテレビを見たら、「脳梗塞から奇跡の復活」だった……。

 いや似てるけどもさ。何がショックって、あたしの立場なら脳梗塞という言葉にこそ敏感であるべきで、「暴走族」を「脳梗塞」に聞き間違えてこそ世間様の同意を得られるってもんじゃないのか。
 なのに逆って。
 これは正月ボケだと思いたい。決して、あたしの中で興味の焦点が「脳梗塞<暴走族」という序列になっているわけではないと信じたい。三十年も前の話じゃないか(何が?)。潜在意識なんて知らない、これは罪の無い単なる正月ボケなんだ、ええきっと!

お薦めの箱根駅伝小説

 旧サイトの頃から長年ご覧戴いている方々から、「カテゴリだのタグだのよりやっぱりリストでしょ五十音順でしょアナログ上等でしょ!」というリクエストを受け、書評のページのサイドバーから書評一覧に飛べるようにしました。でもリニューアル後にアップしたなまもの書評はほんのちょっとだけなので、一覧にするとかえって寂しい……。こうしてみると、旧サイトの書評リストは我ながらバカじゃないかってくらいの量があったんだなあ。数だけは。どんな低レベルでも続けるってすごいことなのね。

 さてお正月はだらだら過ごしてます。やっぱ箱根でしょ。若い頃は「かっこいいお兄ちゃんたちが走っている」という目で見ていたものが、今やすっかり息子を見る目になっている。今年は途中でフラフラになって「もういいから、誰も責めないから止まって!」と言いたくなるような辛い場面がなくて、最後までエキサイティングでいいレースでございました。

 ところで、ニュースで箱根駅伝の映像が流れる度に、早稲田の子に「そこ滑るから気をつけて!」、国学院の子に「そこ道違うから気をつけて!」と声をかけてしまうのはあたしだけだろうか。そして何度注意しても同じ場所で転び、同じ場所でミスコースする彼らに「だから言ったのに!」と本気で怒っているあたしはまぎれもなくおばちゃん。

 それにしても箱根は、フジのフィギュアスケートやTBSの世界バレーのような、芸能人つれてきてお祭り騒ぎ的中継をしないのがいいね。ムダな煽りやお涙頂戴も殆どない(まったくないワケじゃないが、許容範囲)。スポーツはそれだけで充分ドラマティックなのだということを証明しているよ。さすが日テレは、スポーツ中継には一日の長がある。

 さて箱根駅伝と言えば思い出すのがこの5作。

  10130151  10116758  16777101
       
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 書影をクリックすると楽天ブックスの書誌データに飛びます。
 安東能明
「強奪箱根駅伝」(なまもの書評にリンク。以下同じ)はサスペンス、三浦しをん「風が強く吹いている」は青春&友情小説、桂望実「Run! Run! Run!」は青春&家族小説、堂場瞬一「チーム」はスポーツ小説、そして黒木亮「冬の喝采」は成長小説といった感じでしょうか。あ、「冬の喝采」だけ書評書いてなかった。つ、痛恨……。

 ベクトルの違う5作だけど、いずれもレースの描写が実に素晴らしい。タイプが違う分、最低でもどれか1冊はお気に召すのでは。特に、青春スポーツ小説というくくりで語られがちな箱根駅伝を「中継する側」の視点でサスペンスに仕上げた
「強奪箱根駅伝」はミステリ者なら一読の価値ありですよ。 

今週のワタクシ1/1

 というより昨年のワタクシと言った方がいいような気もするが。

12月26日 日曜日
 フィギュアスケートの全日本選手権、女子フリー。結果は順当なところだと思うが、29歳で最終滑走組に入る村主さんがすごい。スケート界の山本昌と言っても過言ではない。<過言ではないが失礼ではある、気がする。女性アスリートの現役年齢をもっともっと延ばしていただきたい。

 それにしても実況アナウンサーのわけのわからん比喩が何とも。「全日本のリンクは村主章枝の生活空間です」ってアンタ、氷の上にテントはって暮らしてるとこ想像しちゃったじゃないか。あと、国分太一は必要なんだろうか。
 番組構成自体も煽りが多くて、ムダな時間を使ってるようにしか思えないが──てのは大きなスポーツイベントの度に言ってることなので省略。地上波でお祭り騒ぎをやるなら、せめてBSかCSで純然たる競技の様子を見せる番組を作って欲しい。
 
12月27日 月曜日
 
週刊誌用の書評原稿を1本送って、年内の書き仕事はすべて終了。
 その後は大掃除の一環として、ガスコンロの掃除。重曹恐るべし。もとが何色だったか不明なほどの五徳がピカピカになった。あまりにキレイになったので使うのがもったいなく、夕飯は出前を取ることに。け、決して手抜きじゃないんだからねっ。

12月28日 火曜日
 年賀状投函。その他はひたすら大掃除をしている。

12月29日 水曜日
 お風呂の大掃除をして、これで大掃除も概ね完了。
 でもお風呂って、年明けに介護保険の業者さんが段差解消すのこのメンテに来ることになっているのだった。年末だからと今やるよりも、その直前にやるべきだった……。
 
12月30日 木曜日
 午前中に買い出しを済ませ、これで年越し準備はすべて完了、の、はず。

 夕方から名駅の居酒屋で、文春のI井さんと打ち合わせ兼夕食。年明け〆切のエッセイについてとか、昨年文春で解説を書かせてもらった文庫の売り上げの話とか、「オール読物」の江夏豊×宮城谷昌光対談がどえりゃあ面白かったってな話とか。
 
12月31日 金曜日
 お節を用意し、年越し蕎麦もあとはゆがくだけという状況にし、さあもうこれで年越し準備は完了だわ完璧だわ、とひとしきり自分を労ったあとで、あらためて今夜の夕食を作るという理不尽さにしばし悩む。

1月1日 土曜日
 
雪が降るぞと脅かされていたが、昨夜ちょこっと舞ったくらいで、日中は穏やかに晴れた良い元日。
 今年もよろしくお願いします。

謹賀新年

 あけましておめでとうございます。
 向かいのマンションで飼われてる犬が除夜の鐘に反応し、鐘が鳴る度に吠えるのが面白くてベランダで凍えながら犬を見てたら年があけてしまったところの大矢です。まあ、ジャニーズのカウントダウンライブで今年もマッチが見られたからいいや、と。嵐はNHKからの中継で2曲歌っただけだったのは残念だったけど。

 2011年最初の一冊は米澤穂信「折れた竜骨」(東京創元社)でした。中世ヨーロッパ的世界を舞台にしたファンタジーと見せかけて実はロジカルな本格ミステリです。乾坤一擲、という言葉が相応しい力作であり秀作。感想はまた別途。さすが米澤穂信で、ファンタジー設定が苦手なあたしでもがっつり掴まれましたので、ジャンルで二の足踏んでる人がいたら大丈夫だよと伝えたい。
 なお、魔術だの剣だの吟遊詩人だのが出てきた時点でこめかみが痛くなり、あの「指輪物語」ですら途中で挫折したというヒロイックファンタジー音痴のあたしが、なぜ本書を新年一冊目に選んだかというと、ドラゴンズの今年の優勝を祈念するためです。
「折れた竜骨」、略して「オレ竜」。ね?

 さて、2011年の計画として。
 
ドラゴンズ連覇という100%他力本願の目標はもちろん大前提として掲げているのだが、仕事ではちょっと新しいことに挑戦してみようという目論見(というか悪だくみ?)があります。これはまたいずれ。
 あと、合間を見つけて、現代の3F小説をちょっと系統立ててまとめてみたい、とも思ってる。大人の女性が共感できて「
たいへんなことはいろいろあるけど、今日も元気に行きましょー!」と思えるような小説をもっともっと紹介できると良いな。

 家庭内のことに目を向けると、昨年はダンナの「ひとりで留守番」「配食サービス使ってひとりで食事」「ひとりで朝食準備」がクリアできた(これはすごいことですよ)ので、今年は
「タクシー使ってひとりで外出(通院)」を目指して戴きたい。が、ダンナ本人曰く、今年の目標は「GWの大分旅行完全走破」だそうな。まあねえ、去年は初日にコケたもんなあ。

 とまれ、今年もゆるゆるとまいりましょう。
 カリカリせずに、ゆったりのんびり。その中で、やりたい事や新しい挑戦をひとつずつ着実にクリアしていけるといいな。
 今年もよろしくお願いします。

2010年のまとめ

2010年のお仕事

今年もたくさんの本を紹介させてもらえて光栄でしたが、中でも嬉しかったのは、仁木悦子
「猫は知っていた」(ポプラ文庫ピュアフル)の文庫解説を書けたこと。あたしは中学時代にこれを読んでミステリにはまった──つまるところ、その後の人生を決定づけた1冊と言って良いほどのものなので、まさか長じて自分がその本の解説を(特に若い世代に向けて)書けるなんてえのはアンタ、冥利ですよ冥利。

もうひとつ、近藤史恵「サクリファイス」(新潮文庫)も単行本が出たとき(てか出るまえにゲラで読んだとき)から大好きで大好きで身悶えするほど好きな作品だったので、ご指名戴いたときはホントに嬉しかったなあ。この本については、もし他の人が解説を担当してたら嫉妬で身を焦がしていたであろう。こう言っちゃなんだが、書評業界で自転車について、特にカンチェラーラへの愛について語らせたらあたしの右に出る人はいないよっ。<語る範囲が狭過ぎ。<おまけに「サクリファイス」に関係なし。

初めて鮎川哲也賞のパーティに出席し、これまでメールや電話だけで失礼していた編集さんや作家さんにご挨拶できたのも、仕事がらみでは今年を代表する出来事だったと言えましょう。
飯田橋は時空が歪んでいるってことも体感できたしな。

2010年の事件

それはもう、ダンナの骨折&2ヶ月の入院に尽きる。
08年に脳出血で障碍が残り、でもリハビリ頑張って杖を使えば歩けるようになって、杖無しでもちょっとずつ歩き始めて、あたしの実家の両親にその姿を一目見せようと大分に旅行し、実家に帰る前に一泊した温泉で転んで骨折って、何その良く出来たネタみたいな展開。
あのときお世話になった友人各位&編集さん、ありがとうございました。
おかげさまであたしも1ヶ月間別府に滞在し、温泉三昧の暮らしをさせてもらったおかげでお肌つるつるです。その様子は
『本の雑誌』20108月号9月号に掲載した『ほげほげ温泉読書日記』でどうぞ。<とにかく何でも仕事にする。転んでもタダでは起きない。

そうそう、
『脳天気にもホドがある。』を出版したのも事件と言えば事件ですね(仕事のカテゴリには入らないよなあ)。お買い求めくださった皆さん、感想メールや感想ツイートをくださった皆さん、どうもありがとうございました。

2010年、印象に残った本

国内ミステリ:初野晴
『空想オルガン』(角川書店)
        これ単体で、ではなく、シリーズ3作まとめてという意味で。
海外ミステリ:マーガレット・デュマス
『上手に人を殺すには』(創元推理文庫)
        新刊を楽しみに待つシリーズがまたひとつ増えた。

その一方で、今年はコリン・ホルト・ソーヤー、エレイン・ヴィエッツ、ルイーズ・ペニーといったあたりの新刊が出なかったのは残念。来年に期待。

2010年、嬉しかったこと

そりゃもうドラゴンズのリーグ優勝に決まっとるがや!

2010年、悲しかったこと

大好きな作家さんの訃報が相次いだ。
作家さんが亡くなる度に同じことを思うんだが、北森鴻さんの訃報を聞いたときに書いたなまもの日記(
10年1月25日)を再掲します。

 作家さんの訃報に触れるたびに思う。読者にできる最大の供養は作品を読み続けることだし、業界の人間ができる最大の供養は作品を伝え続けることだ。司馬遼太郎を見よ。94年に訃報を聞いたときは驚き、あの背筋が伸びるエッセイや新作小説がもう読めないことを悲しんだが、ことあるごとに司馬作品はメディアで取り上げられ、新しい若き読者が生まれ、作品は脈々と読み継がれている。今や、司馬遼太郎が存命か否かなど関係ない。作品が読まれ続ける限り、司馬遼太郎は生きている。横溝正史然り、都筑道夫然り、山田風太郎然り、鮎川哲也然り。栗本薫も、ロバート・B・パーカーも、そして北森鴻も。

 時代を超えて残る作品を作り上げた人だけがなし得る、不老不死。

 そんな作家が「二度目の死」に見舞われるか否かは、ひとえに、読者にかかっているのだ。

北森さん、永井するみさん、お疲れさまでした。ステキな物語をたくさん、ありがとうございました。

2010年、まだ終わってないこと

年も終盤になって飛び込んできた、理論社倒産にまつわる一連のゴタゴタ。
複数の作家さんが理論社から作品を引き上げるという事態になってます。まだ片付いてないし、あたし自身は当事者ではないので、ただ心配することしかできないんだけど、作家さんやフリーの編集さんの仕事が少しでも報われるといいな、と願っております。

てか、フリーってのは立場が弱いのだなあ、とつくづく思うよ。自己防衛せねばならんなあ。

今週のワタクシ12/25

12月19日 日曜日
 正午及び深夜0時にパソコンの前にいられるときは「12時ドラゴンズ」という時報(?)をツイートすべく虎視眈々とスタンバッている。これはドラゴンズファンの間で有名なサイトオーナーヨウゾウさんが始めたもの。この崇高にして一分の隙もないダジャレ(反論却下)を先に思いつかれてしまったという事実に、あたしは今、ヨウゾウさんに激しく嫉妬している。鈍ったもんだな、あたしも。ふっ。

 ところが鈍ってるのはダジャレ脳だけではなかった。「12時丁度に12時ドラゴンズって書くんだ♪」と2分前までは覚えてたのに、その時刻丁度にはなぜか忘れてて、でもって2分後に「しまった忘れてた!」と我に返るという状況の繰り返しなのである。鈍ってるにもホドがある。この脳味噌の衰えはどうなんだと自問せずにいられない。それより46歳にもなってそんなことに懸命になっている状況を自問すべきではないのかという冷静な指摘をするような思いやりのない子はおばちゃん大嫌いです。
 
12月20日 月曜日
 
谷山浩子さんに「鳥籠姫」という歌があるという。

 今、「うーろん姫」と読んだひと、正直に手を挙げなさい。

12月21日 火曜日
 取り急ぎ必要な本が、講談社文庫O女史の尽力で届いた。封を切ると、本と一緒にクリスマスカードが出てきた。こういうのって嬉しいねえ。

12月22日 水曜日
 いよいよインソール作成開始。
 織田先生(仮名)もインソール作りは練習中で、あたしはその練習台。だからって作業中にマニュアル読まれるとちょっと不安なんですけど先生……。あと、テーピングしながら「めんどくせえなあ」って言うのはどうなの。ねえどうなの?

 今日は2時間で一旦終了。病院にiPodを忘れてしまい慌てていたら、織田先生が家まで届けてくれた。すみませんすみません。2時間裸足で冷たいリノリウムの床の上を何度も歩かされて、揉まれて巻かれて押されてひっくり返されて放り出されて、すっかり冷えちゃったことなんかもう恨んでませんええ恨んでませんとも!
 
12月22日 木曜日
 年賀状を書きながら
「十二支ドラゴンズ」というネタを思いつく。
 来年はウサギ年。野球界でウサギと言えばあそこだ。でもってその次が辰年なので、再来年の年賀状にはウサギを蹴り出す竜を描いて「十二支ドラゴンズ」という一言を入れることに決定。ふふふ。

 あ、その前にウサギは虎を蹴り出すのか。巧くできてるなあ。<何が。バファローズがセ・リーグにいれば、4球団繋がったのにな。
 
12月23日 金曜日
 冷蔵庫と食品庫の大掃除をしたら、空き瓶と空き缶が、ガンダムが作れそうなくらい出てきた。
 てか中国人ならホントに作りそうな気がする。

12月24日 土曜日
 この日の夜7時過ぎに仕事メールを出したら、ソッコーでリプライをくれた編集さんに幸あれ。

 そしてこのイブの最大の衝撃は、
良太と水田のトレード
 阪神ファンの皆さん、良太をよろしくお願いします。一生懸命な、いい子です。ホントに一生懸命なんです。一生懸命過ぎて空回りします。あと、ファーストを守らせると、ライトからの素晴らしいバックホームをわざわざカットし、しかも落球します。長所はバッティングです。飛びます。ただ飛ぶ方向が前とは限りません。足はあまり速い方ではありませんが、サヨナラゲームでの飛び出しは天下一品です。あと、ヤジが巧いです。それから、えっと、あ、そうだ、乱闘になったら屈強な外国人選手を押さえるのが仕事です。ホントにいい子なんです。あとは野球さえ巧ければ、言うことなしの子なんです。どうかよろしくお願いします。

12月25日 土曜日
 
昨日24日が土曜日だとばかり思い込んでいて、そこから遡って日記を書いたら途中から日付と曜日がひとつずつズレていたことに気付く。でも面倒くさいからこのまま行く。この日記の途中で時空が歪んでいることに気付いた人に、メリークリスマス!

 付記:友人からグリーティングメールが来た。「メリクリ! ことよろ!」と書いてあった。
    ……ことよろ? あと1週間ですが。

ファッションの別れ道

 メリクリっ!

 数年前、「あけおめ」という言葉が出たときには「何そのフザけた略し方は。日本語なめんな」などと憤慨していたものだが、今やすっかり平気。慣れるものだなあ。もちろん時と場合と相手を選ぶことは大事ですよお嬢さん。

 というわけでメリクリだし(←流行言葉を間違って使った例)、今日はダンナのリハビリ通院の送り迎えも、ちょっとオシャレして行きましょうかね、寒いしね、やっぱり今年流行のコレの出番でしょ。と、取り出したのは、ファーのベスト。ほら、こういうやつですよ。→
 あ、これは広告をそのまま引っ張って来た写真で、あたしじゃありません。わかってますかそうですか。

 今年流行ってるから買ったわけじゃないぞ。3年くらい前に、姑がよく利用しているブティックに付き合ったとき、姑とブティックのママの二重攻撃でなんか巧く丸め込まれて買ったやつだ。でもけっこう良い品なの。ウサギの毛皮なの。あ、動物愛護がどうとかは、話が小難しくなるのでここでは言わないように。ドラゴンズファンがウサギ着てどうするよ、というツッコミも無しでプリーズ。だって竜皮の服なんかないじゃん、ねえ?

 てなわけで、なかなか良いファーベストなのだが、なんとなくこれまでは着る機会がなかったのよね。でも今年、ようやくファッションがあたしに追いついたと言えましょう。買わされたときには、まさかこれが流行るとは思ってもなかったが、姑とブティックのママの先見の明かそれとも年の功(あわわ)か、こうして流行ってるんだもん。着ない手はない。

 着たよ。着てみたよ!

 
鏡の中に、マタギがいた。

 なななな、なんで? なんでなの?

 この広告のお姉ちゃんはかっこいい。こないだ道端ジェシカが着てるのを見たけど、あれもかっこよかった。なのになぜあたしが着るとマタギなの?! 何が違うの?!
 髪型か。いや、実はあたしの今の髪型は、この広告のお姉ちゃんとほぼ同じである。
 じゃあ顔か。顔はまあ、お姉ちゃんと同じとはさすがに言わないが、まあ、その、パーツの数とか機能とかにはさほど違いはないぞ。
 立ち方? そう思って広告のお姉ちゃんと同じ格好を鏡の前でしてみたが、
マタギが猟銃を肩に担ぐポーズにしか見えない……。

 この一件をツイッターで書くと「私もマタギになりました」というコメントが続々と。マタギ仲間が一気に集う。集いたくなかった……。いや集ってもいいが、その中に入りたくなかった……。
 おりしも今日はクリスマスイブ。
 皆の衆、トナカイ撃ちに行くだよ。鍋の支度して待っててけろや母ちゃん。

 【設問】同じファーベストを着て、マタギに見える場合と見えない場合の境界線は何なのか、50字以内でまとめなさい(10点)。提出はツイッターで @ohyeah1101 宛に。

年賀状の落とし穴

 わー、もう19日なのにまだ年賀状何もやってねええっ!
 と焦りまくっていたらダンナが「宛名のチェック、やるよ」と声をかけてくれた。ああ、それは助かる。

 ダンナの患っている失語症というのは、ただ単に言葉が不自由になるってだけじゃなくて、処理速度が遅くなったり、マルチタスクが苦手になったり、集中力が続かなくなったり、注意力が落ちたりという、複合的な障碍がついてくる。これを高次脳機能障碍と言います。
 ただ、気長なリハビリでかなりの分、回復する。パソコン使ったりってえのも脳への刺戟には良いので、時間かかってもいいからダンナに任せられれば、あたしも楽だしダンナのリハビリにもなるって寸法だ。てか、高次脳機能障碍のはずのダンナの方が五体満足のあたしよりパソコンには強いんですけどね。

 で、「このソフトを使えば、こうで、こうなって」と説明してくれるダンナ。昨年年賀状を出した一覧をリストにして我が家の共有フォルダに入れたから、削除や変更があったら指摘しろと言う。言われるがままに○×をつけてダンナに返す。

 永井するみさんの項を線で消すとき、ちょっと泣きそうになったりしつつ。

 で、ファイルを戻されたダンナがそれを宛名ソフトに取り込み、あーだこーだやって、「途中まで出来たよ」と言ってきた。おお、早い。あとは、今年の新規追加分を渡して、家族用と仕事用に分けて──枚数が出たらハガキ買ってこなくちゃね、と考えてたらダンナが言う。

 「大矢の親戚は、はずしたけど、大分(あたしの実家)は?」
 「え、何が? はずしたって、何で?」
 「喪中だから」
 「あれ? 喪中の家、あったっけ? でもあたしの実家は関係ないから出すよ?」
 「いや、だから、喪中だから」
 「大矢の親戚が喪中でも、あたしの実家は関係ないっしょ?」
 「だから、
喪中なんだってば! うちが!

 へ?

 
「今年、おばあちゃん、死んだじゃん!」

 
どっしぇえええええええええ!

 そそそそうだった、夏に父方のおばあちゃんが亡くなったんだったーーー! 忘れてた忘れてたよ、どうしよう。だってもう12月19日。今から喪中欠礼のハガキ出したって、受け取る方が困るだろう。いや、喪中の側が年賀状を出してはいけないってだけで、貰う分には構わないのだ。だからいいのだ。いいのだけれど、でも慣習として喪中欠礼のハガキを貰ったら、そこには出さないよねえ。年賀状書いちゃったあとで喪中ハガキが来るってのは、余計な混乱を引き起こすだけだろう。

 「どうしてもっと早く……せめて11月のうちに思い出してれば」
 「何度も言ったよ。でも、伝わってないなあ、って」

 嗚呼、これが失語症。そうか言ってたのか。伝えようとしてたのか。しくしく。
 そう言えば! 年賀状の話題になる度に、「もち、もち」と。餅は正月だ、てかアンタ嚥下障碍もあるんだから餅は危険だよやめとこうよと思ってたのだが、あれは喪中の意であったか! ごめんよわかってあげられなくて。あきらめずに、伝わるまで頑張って欲しかったよダーリン……。

 「まあ、仕事は、喪中とか、関係ないから、いいかって」

 ……そう、そうよね。うん。おばあちゃんは心の中に生きてることにしよう。

 このことをツイッターに書いたら、
太田忠司さんを「わあああ、たった今、大矢さん宛の年賀状の印刷をしてしまった。」と慌てさせてしまった。すみませんすみません。
 ということでおばあちゃんはまだ死んでないことにして、何食わぬ顔で年賀状書きますので、どうか皆様、お気になさらず。

今週のワタクシ12/18

12月12日 日曜日
 帳簿に打ち込んだあと机に置いていたはずの支払い調書が3通、消えた。
 5分後、麦茶のやかんを置いた鍋敷きの下から出て来た……。アリエッティめ!

12月13日 月曜日
 
病院に行き、インソールを作ってくださる織田先生(仮名)に昨日買った靴を見せたところ、「いいじゃないですか」とやたら褒められる。気を良くしてたら「靴だけで充分なんじゃないですか、インソールいらないんじゃないですか」──いまだに逃げようとしてんのかよ、おい。
 
12月14日 火曜日
 担当の先生が休みなのは分かっていたが、どうにも首が凝ってたまらんのでマッサージへ。初めての女性の先生にお願いしたところ、超攻撃的な揉みほぐし&鍼を施される。容赦なく揉まれ捻られ折り曲げられ伸ばされ畳まれ裏返され、そしてビンビン響くほどの鍼を矢継ぎ早に打たれ、息も絶え絶え。いつもの先生が、いかに遠慮しぃしぃ優しくやってくれていたかを痛感。
 けれど首と肩が、夜になっても嘘のように軽い。どうしよう、あたしもう、いつもの優しいだけの男(の先生)には満足できない体になってしまったのかも……。

12月15日 水曜日
 朝からワイドショーは「KAGEROU」の話題満載。東京では午前0時に売り出した店もあるという。
 ボジョレー・ヌーボーか。

12月16日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演、「KAGEROU」を紹介する。
 ディレクターさんから「それが例の靴ですね!」と言われた。読まれている……。

 放送終了後、話し損ねた
「KAGEROU」の誤植部分のシールををかべさんに見せる。この誤植、実に絶妙だ。仕掛けなんじゃないかと思い、出版社の人に尋ねてしまったくらい絶妙だ。話のオチの意味がわからない人がいたら、このシールをめくるといい。わかるから。

 夜は
黒田研二と近所の居酒屋で飲み。ふたりで芋焼酎のボトルを1本と1/3あける。
 
12月17日 金曜日
 ラジオのリスナーから「ホントのところはどうなんですか」というメールやツイートが相次ぐ(笑)。どういう答を期待してるんだろう。ちゃんとラジオで喋ったじゃないか。なのに「ホントはどうなの?」と訊いてくるってことは、あたしが嘘を言ったと思ってるわけか。失礼な。

 文庫解説を仕上げて送信。一息つこうとしたら別のところからゲラが来た。

12月18日 土曜日
 ダンナの障害年金の支給が決まり(申請から半年!)、年金機構から封書が2通来た。

 1通目;「国民年金保険料の支払いが申請月に遡って免除されます。」
 2通目:「今月の国民年金保険料が支払われてません。払ってください。」

 どうしろと。 

足の裏・衝撃のB

 盟友いつみと一緒に近郊のスポーツオーソリティへ。病院の理学療法士さんが教えてくれた、ニューバランスのフィッティングイベントに行くのだ。予約もとって、既に電話で足の状態と勧められた靴も伝えてあるのだ。

 イベント会場(というか売場)に行き、予約と名前をいうと既に電話取材の結果「このあたりかな」というのを準備してくれていた。が、もちろんちゃんと計測します見てもらいます。ミズノやアシックスでもらった計測データも見せます。そして今度こそはという期待もあっさり裏切られ「扁平ですね」とのご託宣。しくしく。わかったわよ認めるわよもう。

 「アーチが低い、というのもそうなんですが、そもそも足が薄いですよね」というシューフィッターのお兄ちゃん。「電話で伺ったお話では治療院で
ニューバランスのWW584を勧められたということですが……うーん、この足でインソール作るんだとむしろ……」とちょっと考えた後で、「これ、お電話でお話を聞いてご用意させて戴いたものなんですが、とりあえず履いてみてください」と一足出してきてくださった。タウンウォーキング用の、柔らかいベージュのシューズ。あ、これなら洋服も合わせ易い。そして履いてみると、あ、ピッタリ!

 でも「ピッタリです、すごくいいです」というあたしの言葉にお兄さんは納得しない。歩いてください、という。一回りしてみる。あれ?

 「これ、すごくいいんですけど、足が内側に倒れる症状は矯正されてないような」
 「やっぱり……。やっぱりこれじゃ柔らか過ぎるんだなあ。倒れてるもんなあ」

 そうなのだ、すごくいいんだが、足を痛めた最大の原因である「足が内側に傾く」というのがこの靴ではまったく治らず、履いて立っただけで上から見ると思い切り内重心になってるのがわかるのだ。履いた感じは良かったのに……。

 「病院の先生からは、踵のホールドや中敷以外で何か指定されましたか? 革靴にしろとはいわれてないんですね? だったら……実はお客様の足を拝見したとき、これをお勧めしたいという候補がひとつ浮かんだんですよ。それ持ってきますんで、ちょっと待っててください」

 そしてお兄ちゃんが持ってきた靴を見て、あたしはひっくり返った。いつみもひっくり返った。

    WR760

    
なんぼなんでも派手じゃね?!

 てか、ランニングシューズ? 運動靴? パンツスーツにも合わせ易い、こじゃれたブラウン系の革のタウンシューズという目論見はどこに? カジュアルなデニムやトレーニングウェアとしか合わせられなくね? てかスカート穿けなくね?

 とりあえずお兄ちゃんの言うがままに、これを履いてみる。お兄ちゃんが紐をきりきりしばりあげる。げ、なんか血ぃ止まりそうなんですけど。後ろでいつみが「それくらいきつく縛るもんなの!」とお兄ちゃんを支持する。「これで歩いてみてください」

 ……あ、何これ。柔らかいのにしっかりしてる。指が中で動くくらい余裕があるのにしっかりホールドされてる感じ。そして歩くと、ついぞ感じたことの無かった「足の指で地面を蹴ってる」という感覚がくっきりと!

 「うわ、なんかこれまでとぜんぜん違うんですけど。なんで?」

 お兄ちゃん、満足げににやりと微笑み、

 「サイズは長さと幅だけじゃなくて、甲の高さも大事なんです。お客様の場合、足の甲が低い──というより薄いので、他の靴だとどうしても隙間ができるんですよ。このWR760というシリーズは他に比べて甲の前の方が低く作られてまして、その割に指の部分はちゃんと反ってるので、お客様に合うんじゃないかと
一目見て思いました

 
プロフェッショナル!

 「でもちょっと問題があります。お客様の足の指──特に親指の爪はかなり上向きですよね」
 「ああ、これ、生まれつきなんです。手の指の爪も反り返ってますもんあたし。ほら」
 「ホントだ……。この靴、他はいいんですけど、ちょっと親指が当たってるんですよね」

 それは自分ではまったく気にならない程度。でもお兄ちゃんは靴の上から親指を押さえ「動かしてみてください」「上げてみてください」といろいろ試したあと「惜しいな……」と呟いた。

 「ちょっと待ってくださいね、他のを持ってきます」

 さあ、それからお兄ちゃんの熱意が炸裂だ。これはどうだ、踵のホールドが甘い。こっちはどうだ、内くるぶしが当たる。お兄ちゃんが頭をかきむしって叫ぶ。
「どれも合格点にちょっと足りない!」最早、あたしがどうこうより、お兄ちゃんのシューフィッターとしての矜持と職人魂が場を支配する。

 そして、迷ったときは原点に帰る。これはすべての基本だ。
 結局最初にお兄ちゃんが勧めてくれた、上の写真の靴。いろいろ履いた結果、あれを超えるものはなかった。お兄ちゃんも「インソールを作ってアーチができれば、指もちょっと押さえられるはずなので、これがベストだと思います」と納得(もしくは妥協)した様子。

 「このまま履いてくから」ということでタグを切ってもらいながら、ふとサイズを見てなかったことに気がついた。「これ、サイズいくつですか?」

 「23.5cmです」
 「え、24.0じゃないんだ。ぴったりだから24かと思ってた」
 「型番によって微妙に形が違うので、サイズは靴によって変わるんですよ」
 「へえ……で、幅は? やっぱり1Eですか?」

 
「いえ、です」

 B?! びびびびびびびびびびびいいいい〜? うしろでいつみも仰け反る。

 「Bって、え、えええ?」
 「1Eの下がD、その更に下がBです」
 「
それって最早、纏足なのでは……!
 「でも履いてみて、これが一番フィットしたでしょう?」
 「ええ。それは確かに」
 「幅も、靴によって微妙に違いますから。
  こっちの靴では2Eの人がこっちだとDなんてこともあります。
  実はうちでは1Eの靴ってあまり作ってないんですよ。
  その代わり、DやBはけっこうあるんです。
  お客様の場合は実寸だと1Eですが、幅より薄さの方が問題で、
  インソールを入れて土踏まずを上げてやると更に幅は小さくなります」
 「ひええええ、でも、でも、Bって! あたしずっと3E履いてたのに……」

 うしろからいつみが感に堪えたように一言。

 
「Cカップだと思ってたらAカップだったみたいなものよね」

 「違う」「違います」

 あたしとお兄ちゃん、ふたりしてソッコー否定。なんだその比喩は。長年のジム通い&フィットネスおたくのいつみには、的確なアドバイスを期待し付き添ってもらったというのに、そのキャリアに基づいて出た発言がそれか。それなのか。ジムで何を習ってるんだキミは。
 それでも「このシューズ、派手なのが嫌なんだったら紐を黒にしたら?」というかろうじて面目の立つアドバイスをもらい、且つ、紐遠しまでやってもらったので良しとしよう。

 さあ、明日はこの靴で病院に行き、織田先生(仮名)に見てもらうよ!
 実は買った直後に写メ撮って送ったんだけど、返事がないのよね。デート中だからなのか、やる気がないからなのか、そのあたりも明日じっくり問いつめる予定。
 

今週のワタクシ12/11

12月5日 日曜日
 先日買ったwii partyにダンナと挑戦。
 相性診断をしてみたら「そこそこ友達」レベルであることが判明。
 どっちが悪いのかで大げんかとなり、友達以下に成り下がる。

12月6日 月曜日
 名駅に出たら、ナナちゃんがどえりゃあキレイなお姉さんになっててひっくり返る。
 髪の毛って大事だなあ。 
 
12月7日 火曜日
 海老蔵の会見をつい見てしまった。
 クサナギ君のときにも思ったが、酒飲んで酔っぱらってハメはずして、海老蔵の場合は自分がケガをさせられた側なのにもかかわらず、どうしてここまで神妙に謝らねばならんのだろう。彼が謝るべきなのは、家族と、職場と、彼の舞台を楽しみにしていたファンに対してだけで充分だろうに。あたしゃ何も迷惑かけられてないから、あたしには謝らなくていいぞ。

12月8日 水曜日
 真珠湾攻撃の日にしてジョン・レノンの命日。
 30年前のあの日、松山千春のオールナイトニッポンを聞こうとしたら、特別追悼番組が始まって驚いたのを覚えている。最初はタチの悪い冗談だと思った。
 ネットもケータイもない時代。友人と「聞いた?」と話すには、翌朝学校に行くまで7時間も待たねばならなかった。

12月9日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」に出演の日なので、朝6時40分に家を出る。
 今年はややノンキに思えていた冬将軍だが、早朝はけっこう頑張ってることを実感。

 今日ラジオで紹介したのは、岡田好弘
「あたらしいみかんのむきかた」(小学館)でした。
 先週分(里見蘭
「さよなら、ベイビー」)に早速反響があったそうで嬉しい限り。
 ただ「どこで買えますか」には笑った。書店で買えます。
 
12月10日 金曜日
 関西のMBS(毎日放送)ラジオの「ありがとう浜村淳です」という番組で、拙著
『脳天気にもホドがある。』がラジオドラマになったらしい。今日が最終回だったらしい。聞けないのでわからない。

 ポプラ社の書評原稿を1本書いて送信。

12月11日 土曜日
 自転車チームVerdadの忘年会。
 チームメイト(本日欠席)が結婚を前提につきあってた彼女から「貯金が少ない」という理由でフラれたと聞き、その場の女性陣がいきり立つ。
 「ロクな女じゃねえぞそいつ!」
 「今度彼女が出来たら連れてこい、あたしらが見てやる!」
 ──どんないいお相手でも、この飲み会に連れてきた時点で壊れそうな気がする。

足の裏・vs織田編

 ダンナのリハビリ通院の日。
 インソールを作って下さる織田先生(仮名)に、昨日アシックスの店でとった足計測データを意気揚々と見せたら「わかりにくい」の一言で斬って捨てられた……。いつかこいつをひざまずかせてやると心に誓う。
 ただそんな織田先生も、アシックスの
WSX171の画像を見せると「お、かっこいいじゃないっすか」と身を乗り出す。初めて肯定的なコメントくれたよ! そこで意を強くして、昨日フィッターさんから聞いたアドバイスを告げる。

 「でも1Eなので、足底板を入れるには幅が狭いんじゃないかって」
 「狭きゃ削るんでどーにでもなります」
 「あと、中敷はずした下に、若干のカーブが」
 「まあ、それも削れば」

 そ、そんなテキト〜なことでいいの? ねえ、いいの?

 今のところこのアシックスが第一候補なのだが、明後日には最後の候補、ニューバランスのフィッティングイベントに行くことになっている。場所はスポーツオーソリティなので、ミズノにしろアシックスにしろ、ある程度は同じ店で扱っているはず。三社のデータが出そろったところで、明後日スポーツオーソリティで決めてしまおうと思っているのだが、そこでひらめいた。織田先生に一緒に行ってもらえばいいんじゃ? そこでプロの目でいい靴を選んでもらえばいいんじゃん。

 「先生、明後日、一緒にフィッティングに行ってもら」
 「あー、予定があります。残念だなあ。ホントに残念だ」

 ぜんぜん残念そうじゃない顔と口調で、こっちが尋ね終わる前に即拒否。
 い、いつか、いつか絶対こいつをひざまずかせてやるんだからねっ!
 

足の裏・アシックス編

 朝、CBCラジオの「朝PON」出演を終わらせ、朝マックしてカフェで仕事読書して、10時になると同時に栄のアシックス直営店に飛び込む。状況を話し、欲しい靴の条件を告げ、計測してもらうことに。

 いやー、ここの計測、これまでで一番細かい!
 そしてここの計測、これまでで一番扁平足!(しくしく)

 
ミズノでは平面的な長さと幅、そして荷重バランスしか測られなかったんだが、ここは足囲も出るし踵の幅やアーチの高さなど、やたらと細かく出る。そして感動したのは、踵を真後ろからみたとき、重心がどれだけ歪んでるかが出るのだ! 治療院で指摘された「足が内側に倒れ込んでる」というのが数値で出たよ感動したよ。左4.5度、右4.7度、あたしの足は内側に傾いてるらしい。

 足長はコンマ以下の差はあれど、今までと大きな違いは無し。そしてやはりサイズは24.0cmの1Eだと言う。しかしここでシューフィッターさんの顔が曇る。

 「24.0cmで1Eって、メーカーが殆ど作ってないんですよね」

 へ? なんですて?

 正確に測れば1Eだとか、それより更に小さいDサイズの女性が多いのに、自分では3Eくらいだと思い込んでる人が多い(あたしだ、あたし!)。実際は違うのに、そういう人が3Eを購入するため、1Eは需要が少なく商品も数が少ないという状況らしい。ああ、ミズノでも「24.0の1Eはない」と言われたが、そういうことであったか。

 もちろん、まったくないワケではない。ただ、あたしの条件(足底板を入れるので、中敷がとれること・その下が平板なことなど)を満たし、尚かつあたしの足と使用頻度に合うような靴は限られると言う。これも他のメーカーと同じだが、アシックスはそこで代替品ではなく、唯一の「24.0cm/1E」を出してきてくれた。おおおお、初めてだ! 初めて推奨サイズ丁度の靴が試着できるよ!

 これがそのWSX171という型番の靴。
 デザイン、悪くない! 運動靴っぽくなくて、これならたいていのパンツスーツに合いそうだ。スカートでもカジュアルなものとなら合わせられるかも。ただ見た目、かなり細いんですけど。ホントに入るの?

 
入った。

 しかもめちゃくちゃ歩き易い! 何これ。うわあ。ミズノでフィッティングしてもらったときも思ったが、ちゃんと測って、ちゃんと合ったやつを、ちゃんとした履き方で履けばこんなにフィットするものなのか! 感動で胸がおっぱいです。間違い。いっぱいです。

 ここでフィッターさんからしつこくらい注意されたことがある。靴紐は毎回結び直すこと。ついつい緩めに結んで、そのままほどかず脱ぎ履きする人がいるが、それではフィッティングした意味がまっっっっっったく無いと言う。毎回毎回、踵を地面につけ、爪先をあげ、踵を靴のヘリにちゃんと収めてきっちり縛るという行為が必須だと。
 うわーめんどくせえ……。なるほど、最近のウォーキングシューズに小さなファスナーがついてるのは、それか。きっちり結んだ紐はそのまま、ファスナーで脱ぎ履きできるようになってるんだ。なるほど。しかしこの
WSX171にファスナーはない。一段上の2Eならファスナつきがあるが、これにはない。つまり毎回紐を結び直す……。うーん。

 そしてもうひとつの問題。値段が、値段が、いちまんはっせんえん……(くらくら)。

 けれどフィッターさんは、売らんかなの人ではなかった。「足底板を入れるということなら、1Eより少しゆとりがあった方がいいかもしれない。療法士さんと相談してみてください」と言って下さったのだ。ありがたい。そうさせてもらうことにする。ありがとうございますありがとうございます。説明する声がでかいなーなんて思ってすみません。<そんなこと思ってたのか!

足の裏・ミズノ編

 靴選びの目安ができたので、さっそくミズノに行ってみることにする。

 東急ハンズ名古屋店4階にある
ミズノ・ウェルネスショップで改めて足の計測。ここは自動の機械計測だ。足長が左が23.7cm、右が24.0cm。あれ? 金曜に測ったときより大きくなってるよ? もしかして、あたしまだ成長期? いやそれは多分、東急ハンズの名古屋店と栄店を間違えて、ムダな距離を歩いたためむくんでるだけだと冷静なもう一人のあたしが突っ込む。しくしく。そして足幅は8.0センチで、やはりサイズは1Eだと言う。

 ところが24.0cmで1Eというサイズの靴はない、というではないか。そこで勧められたのは5KF052という型番の、23.5cmの2Eでどうかと言う。え、足長も幅も計測値と違うじゃん。何ソレ。

 どうやら幅を示すEというのは足長のサイズによって異なるらしい。
「足長に対しての比率」で決まる相対寸法であり、1Eが何センチというような絶対寸法ではないという。つまり23.5cmの2Eと24.0cmで1Eはほぼ同じ幅なのだそうだ。えー、なんだよそれ知らなかったよ。しかも、足長のサイズは1センチくらいの遊びを爪先に作ってあるので、24.0センチのあたしでも23.5cmの靴は入るのだとか。

 とまれ、勧められた型番にはそのサイズが店になかったので、他のシリーズでそのサイズを履かせてもらった。履くときに気をつけること(まず踵をしっかり靴のヒールカップにはめてから、きつめに紐を縛る)を教わりながら、シューフィッターさんが紐を結んでくれる。歩く。

 おおっ、なんだこれ、歩き易いぞ! カポカポしないぞ! その威力たるや、もともと履いていた靴に足を戻した瞬間「うわあ、頼りねえっ」と思ってしまったほどだ。「一度いい靴を履くと、安いものは履けなくなる」と言われたのはこのことか。

 では
5KF052を取り寄せるかというと、色が黒しか無いということと、一旦取り寄せたらサイズが違っても返品できない(またか!)と聞き、断念する。なんだろうこのシステム。しかも、ニューバランス同様、ベスト寸法がない上での代替品だしなー。一応、型番だけ控えを貰って帰った。次はアシックスだ。

足の裏・靴選び開始

 ダンナのリハビリついでに、理学療法士の織田先生(仮名)に金曜日に貰ったフットプリントを見せ、フットケアトレーナーからニューバランスのWW584を勧められたという話をした。商品紹介ページをパソコンで見せると

 「なんかおしゃれじゃないっすね」

 一言でバッサリ。ええーーーー、先生がそれを言うか!

 そりゃまあね、確かに洋服を選ぶよなあとは思っていた。レザーとは言え、いかにも運動靴だからさ。
 でも機能重視だし、おしゃれ靴とは違うんだからと自分に言い聞かせていたところに、インソールを作って下さる側からまさかそんな見た目の話が出るとは。普通は「見た目より機能ですよ」と諭すのがそっちの立場じゃないのか。

 「いくらですかそれ。いちまんごせんえんっ? たかっ!」

 だからどーしてそう患者のモチベーションを削ぐようなことを言うかなあ織田先生。

 ただ、実は他にも懸案があった。フットケアトレーナーさんからはWW584の24cm/2Eを勧められたものの、治療院に在庫がなく試着できなかったのである。しかも本当は1Eなのに、メーカーに1Eのものがないからという代替候補なのだ。それなのに一旦取り寄せると返品はできないという。試着してないのに取り寄せて合わなくてもキャンセルが効かないってのはどうなのよ、と。

 ここで話は土曜に遡る。忘年会のとき、太田忠司さんやいつみといったジム通いのベテランから運動靴メーカーについて、あそこがいい、あそこは縫製がイマイチ、あそこはモノはいいんだけど日本人の足には合わないなどといろいろ情報を頂戴し、そのとき「日本人の足に合って評判がいいのは、アシックス・ミズノ・ニューバランスの三社」という話を聞いていたのだ。そしてそのとき彼らからは
「靴に金はケチるな、一度いい靴を履くと安い靴は履けなくなるぞ」とまで言われたのさ。

 ニューバランスももちろんいいんだが、他にいろいろ試してみるのもありかもしれない。ミズノは名駅に、アシックスは栄に、足の計測をした上で靴を見繕ってくれるショップがあるらしい。そしてニューバランスは折よく次の週末に、スポーツオーソリティのとある店舗でシューフィッティングのイベントがあるという。だったらそれを回ってみるに如くはない。

 「じゃあいろいろ試してみますが、どんなことに気をつけて靴を探せばいいですか」
 「あー、履き易けりゃ
何でもいいっすよ別に

 ……先生、もしかしてやる気ゼロ? あたしがこんなに燃えているのに?

 「うーん、じゃあ、足底板を入れるんで、中敷をはずした下が平板なこととー、
  踵の後ろと土踏まずの内側が硬めでちゃんとホールドしてくれるってことっすかねー。
  あと、紐靴がいいっすよ。まあ、でも、基本は履き易い靴なら何でもいいっす」

 なんだかとっても投げやりなのが気になるんですけど、まあようやく条件が出そろった。
 いよいよ靴選びのスタートだ。

今週のワタクシ12/4

11月28日 日曜日
 ダンナの脳出血発症からまる2年。よく再発せず生き延びた。
 途中骨折して、3歩進んだリハビリが2歩下がったりもしたがな。

 ツイッターで、米澤穂信
『折れた竜骨』を「オレ竜」と略している人を発見。猛烈に感動する。

11月29日 月曜日
 
太田忠司さんが「12歳で読んだ本が人生を変える」てなことを言っていた。
 太田さんは12歳でクイーンの『神の灯火』を読んだという。なるほど。
 自分が12歳のときに読んだ本で印象に残っているものを思い出してみた。

 
『ベルサイユのばら』『スケバン刑事』だった。

 ……なるほど。
 
11月30日 火曜日
 週刊朝日に載りました。(→
日記

 「あたしのカンチェ」ことカンチェラーラの
チーム・ルクセンブルク移籍が正式発表
 オグレディさんも一緒。またレースを見ながら「オグレディが遅れでぃ!」
 とつっこめるかと思うと楽しみでしょうがない。
 それにしても旧サクソバンク勢8人て。稼働前の新チームなのにランキング1位って。

 ……と書いて通じる人だけわかってくれればいいです。説明はしない。しないってば。

12月1日 水曜日
 ダンナの誕生日。夕食後に
オーフェルクリンの小ぶりのガトーショコラでお祝い。

 自転車友人Yりちゃんがバースデイプレゼントにと
ミニフットバスを持ってきてくれた。
 麻痺足はどうしても血行が悪くなったりむくんだり、寒いときには硬直したりするので
 手軽に足だけ温めてマッサージまでできるフットバスというのはナイス選択。
 ありがとうYりちゃん、ありがとうありがとう。

 そしてあとで気付く。
 箱に
「サンダルの似合う足に!」「ペディキュアが映える!」とあるんだが……。
 ダンナの麻痺足に彼女は何を求めているんだろう。

12月2日 木曜日
 CBCラジオ
「多田しげおの気分爽快!朝からPON」にて、
 お薦めの新刊本を紹介する「私のポン棚」のコーナーが週イチでスタート。
 今日紹介したのは、里見蘭
「さよなら、ベイビー」(新潮社)でした。
 育児小説にして成長小説にして捻ったミステリ。年間ランキングで取りこぼした一冊。

12月3日 金曜日
 行きつけのマッサージ院でフットケアの専門家に足を診てもらう。(→
日記
 改めて、扁平足であるという託宣がくだる。

12月4日 土曜日
 半期に一度の名古屋オフ。激辛麻婆豆腐との死闘を繰り広げる。(→
日記

名古屋オフ忘年会(消耗編)

 名古屋オフは二次会に場を移す。
 普段ならビールだの焼酎だのを注文するメンバーなのだが、
一次会の〈死闘!激辛地獄〉のインパクトいまだ大きく、飲み屋なのに一斉にグレープフルーツジュースだのトマトジュースだのを注文。店にとってはやりがいのないことこの上ない。

 肴も同様で、普段なら酒に合うような味の濃いものだとかジャンクなものを頼むのに、舌も喉も食道も胃も疲弊しているため、「サラダが食べたい」「何かさっぱりするものを」「なめこおろしとか」──なめこおろしを肴にトマトジュースを飲む面々。しかも相次ぐトマトジュースのお代わりに、ついに店の在庫が尽きるという状況に。何の集まりだこれは。

 そこで起こったできごと。
 なめこおろしを二人前頼み、食べたい人でシェアしようということになったのだが、シェアするにはなめこおろしってえのはチト食べにくい。スプーンがあるといいよね、ということで、代表して水生大海さん(原書房より
「かいぶつのまち」が絶賛発売中)が店員さんにスプーンを貰えるよう声をかけた。

 「スプーンをもらうことはできますか」
 「何個ですか」
 「人数分もらうことはできますか」
 「他のお客様の分が足りなくなるので、人数分はちょっと」
 「では何個ならもらえますか」

 
あんたらはニューホライズンの英語の教科書か。

 〈風呂に入るのは簡単だが、それを文章で書くのは難しい〉と言ったのは芥川龍之介だったか。この会話の面白さを文章だけで表現するのは実に難しい。水生さんの、まるでアナウンサーのように語尾まで滑舌の行き届いた発声と、おもねるでもなく責めるでもない淡々とした物言いが、なんつーかもう、「英文を和訳して朗読してますっ!」って感じで、それが一次会の激辛地獄に疲弊したメンバーの笑いのツボを直撃したのよ。Can we have some spoons? How many spoons do you need? We need spoons for each person. Sorry, it's too many to provide. Then, how many spoons can we have?

 まだ深夜というような時間ではないし、トマトジュース祭りで酔っぱらってるわけでもない。なのになぜかこれを機に「英文和訳会話」がその場を席巻した。誰かが醤油をこぼせば「おしぼりはもらえますか!」「おしぼりは何枚もらえますか!」「おしぼりは2枚もらえます!」などとワケのわからない言葉が飛び交い、料理が出れば「これはお好み焼きですか」「いいえ違います」「これは何ですか」「これは卵焼きです」「これはイモ焼酎ですか。それともトマトジュースですか」という「見てわからんか」てな会話が交わされる。何だこのバカ会話は。昭和の英語教育の限界、ここにあり。

 あなたは三次会に行きますか。はい行きます。いいえ行きません。私は間もなく来るところの地下鉄で帰ります。半年後に行われるところの次の機会に再び会いましょう。というバカ会話のあと、解散。私はコーヒーが飲みたいです、コーヒーを飲めるところの店を知っていますか、いいえ知りません、というメンバー5人で夜の栄を延々歩き(下調べしとけよ!)、デニーズで一服して解散となったのであった。いやもうホントに本の話は殆どない忘年会であったことよ。半年後のオフは「あなたは何冊本を読みましたか。それは本格ミステリですか、それとも冒険小説ですか」からスタートさせてやるから覚悟しとけ。

名古屋オフ忘年会(煩悶編)

 さて、前回のレポでは「辛い辛い」としか書かなかったが、ちゃんと恒例の今年のベスト本発表や本の交換会も滞り無く行われたことを、ここに記しておかねばならない。

 ところで、あたしは毎回、メモも何もとらずに皆の挙げたベスト本を覚えて日記に書くというワザを披露してきたが、今回は脳味噌のいろんな箇所に山椒と唐辛子が挟まって、思い出そうとするとコメカミのあたりが辛くなるのだ。なのであきらめた。ただ、拙著
『脳天気にもホドがある。』を挙げてくださった方がいたことだけは覚えている。気遣いは大人のマナーですね。
 ちなみにあたしは初野晴
『空想オルガン』を挙げる予定だったが、あまりの辛さに脳が死に、激辛麻婆茄子が大事な小道具になっている日明恩『埋み火』に急遽変更。あたしが解説書いてますのでどぞよろしく。

 一方交換会はと言えば、道尾秀介『月と蟹』や海堂尊『アリアドネの弾丸』といったベストセラーあり、『ベルサイユのばらカルタ』という飛び道具あり、『マンガで読破・黒死館殺人事件』あり、「参加者は女性が多いので、稲見一良の文庫『男は旗』を持ってきたよ」という、どう考えても逆だろというセレクトあり。──ああ、これも思い出そうとすると脳から山椒の臭いが立ち上って思考が中断される……。あ、あたしは狙っていた『ベルばらカルタ』を奪われてしまったので、京極夏彦トリビュートのアンソロジーをゲットしましてよ。

 まあ、交換会が始まった初期のように「名古屋市政だより」だの「ディノス通販カタログ(期限まで残り1週間)」だの「宮部みゆきの『クロスファイア』上巻だけ」だの、どう考えても自宅の本棚の掃除目的だろうというようなラインナップに比べると、供出本には格段の向上が見られるということは確かだ。今にして思うが、なんで当時はみんなしてあんな嫌がらせのような交換会をしてたんだろうな。その次から「通販カタログと電話帳は禁止」というワケのわからない決まりができたほどだったぞ。

 それにしても今回のオフは1次会はもちろん二次会でも三次会でも本の話がほとんどなかった。これもまた珍しい。あたしは「これはミステリファンのオフである」ということを忘れさせないため、「電子書籍ってけっこう使い勝手いいよね」とか「あの作品の続編はどうですか」とか頑張って本の話を持ち出していたのだが、どれも3秒で終わってしまった。「それほどまでに議論を呼ぶような作品がなかったってことだよ」とは太田さんの弁。

 まあ、いわゆる「ミス研」出身者が集うようなオフじゃないからな。そもそも名古屋にはアクティブなミス研てえのは、(昔は)無かったと言うし。そう思えば、そんな土壌でよくこれだけのメンバーが集ったものだと思えなくもない。
 ただ、軽くショックだったのは、「今年のベスト本を発表するとき、『あんまり読めてないんですが』って言う人が何人かいたけど、だいたい何冊くらいだったら『読めてない』と思うの?」といういつみの質問に対し、複数の人が「1ヶ月に1冊しか読んでないと、読めてないかな」と答えたのだ。
 まがりなりにもミステリファンが集まってる筈のオフで、そ、それはあまりに少なくないか……。

 本、読もうよ。楽しいよ。
 
 あ、それを伝えるのがあたしの仕事なわけか。そうか。

名古屋オフ忘年会(死闘編)

 半期に一度の名古屋オフ。
 今回は人数少なめで、男性3人女性8人という〈ほぼ女子会〉のノリ。

 今回の会場はラシック8階の陳麻婆豆腐。売りは激辛麻婆豆腐だと言う。激辛ウェルカム、どっからでもかかってらっしゃいな気分で戦地に赴く。まずは前菜。蒸し鶏と胡瓜とナッツは、大蒜たっぷりのソースがたいへん美味。次に出て来た海老の塩炒めもたいへんに美味。桂花陳酒おいしーねー、いややっぱり紹興酒でしょ、ホットの紹興酒にザラメを入れて混ぜずに飲むと翌朝お肌ツルツルだよ〜、などといかにも女子会らしい会話に花が咲く。
 しかし、暢気に頬張っていたのは、ここまでだった。
 3品目、イカとパプリカの炒め物──か? この色は、何? なんか禍々しい茶色とそこから分離したラー油的オレンジが、なんつーか、こう……

 「これ、辛いですか?」
 「ゼンゼンカラクナイデスヨー」

 「辛くないって言ってるよ」「じゃあ辛そうなのは見た目だけかな」
 「では戴きましょう」「ぱく」「ぱく」「ぱく」
 「あ、大丈夫大丈夫。おいし──
ぐはぁげほげはっ、かかかかからっ

 時間差攻撃で食道から辛みが駆け上がる。

 「お姉さんぜんぜん辛くないって言ったのに!」「中国人はこれ平気なのか? これが辛くないのか?」「国際問題になるから伏せ字にするが××って××じゃねえのかっ!」

 場が騒然とするところに、次はチキンとナッツの炒め物。ああ、これなら大丈夫そうだ。おや、チキンとナッツはわかるが、この黒いのは何? キクラゲかな? お兄さん、これは何ですか?

 「ソレ、とうがらしデス」
 「唐辛子! 唐辛子の輪切り?! ……ってことは、これも辛いですか」
 「カラクナイデスヨー(にこにこ)」
 「さっきのイカと、どっちが辛いですか?」
 「……コッチカナー。デモ、カラクナイデスヨー(にこにこ)」

 さっきより辛いのかよ! チャレンジャーかおかおが、キクラゲにしか見えない唐辛子を一切口に入れる。一瞬の間。そして──

 「痛い痛い痛い
ベロが痛い!

 時をおかずして、テーブルのあちこちから同様の絶叫があがる。白飯をくれ白飯を。いや水を。これは何の罰ゲームか。しかもちゃんと美味いから不思議だ。美味いよ。でも辛いよ。アホかっちゅーくらい辛いよ。てか中国人(以下自粛)。

 そしていよいよメインである。麻婆豆腐である。既に心の準備はできている。念のため、店員さんに訊く。これ、辛いですか?

 「カライデスヨー(にこにこ)」

 ついにお墨付きを戴いた辛さ。ちゃんと白飯がついてくるあたりが、辛いよと宣言しているようなものだ。覚悟して食べた。そして辛さは覚悟をあっさり凌駕した。

 「ベロが痛い!」「食道が痛い!」「なんか体中の毛穴からヘンな汁が出るよ怖いよ怖いよ」「こ、この山椒の粒を噛んじゃダメなんだ、飲むんだ飲み込むんだ、麻婆豆腐は飲み物だ!」「日明恩の
「埋み火」に確かこんな辛い麻婆茄子を食べるシーンがあったなあ。読んだときは大げさだと思ったけど、今なら雄大たちに心の底から感情移入できるよ。ごめんよ日明さん!」「こんなに辛いのに、なんで美味いんだ」「辛みと旨味を感じる部位は別なのか」「美味いよー辛いよー」「白飯が足りん!」

 そして。闘い済んで日が暮れて。
 皆は「ごちそうさま」の代わりに「ナイスファイト……」と互いを讃えた……。
 食べた、というより、一試合終えた、という気持ち。

 デザートの杏仁豆腐がこんなに美味しかったのは生まれて初めてかもしれない。

 あ、ちゃんと忘年会恒例の今年のベスト本とか本の交換会もあったんですよ。でもそれはまた後日、別項で。こうしてあのメニューを文字にしてるだけで、なんか舌が痺れてきたよ……。

足の裏・計測編

 ダンナ担当の理学療法士・織田先生(仮名)にインソールを作ってもらうことになったのは、この日の日記に書いた通り。しかし基本ボランティアなので、ぜんぶ先生にお任せするのではなく、自分で出来ることはやろうという殊勝な心がけの大矢である。

 ってことで、今日は行きつけのマッサージ院でフットケアトレーナーによる、〈自分の足を知ろう:無料測定サービス〉というのを受けてみた。数値の他にフットプリントも戴けるというので、それを持って織田先生のところに行けば先生の手間も省けるのではないか、と。

 トレーナーさんは若くてキレイな女性。
「実はこれこれこういう症状がありまして、知り合いの理学療法士さんがインソールを作ってくださるので、その前に自分でも自分の足を知っておきたいなと」と説明する。

「その療法士さん、あたしの足を見て扁平足だなんて言うんですよ。
 ちゃんと土踏まずあるのに。ちょっと見て戴けますか?」
「扁平足って、本来はレントゲンをとって骨の状態を見ないと、
 見た目だけからはなかなか判断できないものなんですけど……」

 ほらぁ、一目見ただけで「扁平足」と断じた織田先生(仮名)に、このトレーナーさんの慎重な姿勢を見せてやりたいぞ! と思いながら靴下を脱ぎ、足を出す。と、間、髪を容れず。

 
「完璧な扁平足です(ズバッ)」

 えーーーーーっ。いや、見た目だけでは判断できないってアンタたった今言ったじゃん!

 「いえ、これはわかります。扁平足です。扁平足です。」

 繰り返さなくていいです。

 そしてトレーナーさんは問診票を見ながらあたしの足をつまんだり回したり折ったり伸ばしたり裏返したり畳んだりして、「関節がルーズですねえ……」と言った。本来足首が曲がるべき正面方向には固いのに、左右にぐらぐらしてると言う。「捻挫しやすいでしょ」「歩いてて何もないところで捻るでしょ」ええ確かに。わかるもんなのだなあ。

 次に台の上に立って計測しつつフットプリントを取る。サイズは右が23.8、左が23.6。そして足の幅は靴のサイズで言えば1Eだと言われて驚いた。あたしずっと今まで自分の足、幅広だと思ってたよ。3E履いてたよ!

 「足の骨が歪んでいるので、1Eだと擦れる部分が出るというだけのことです。
  サイズから言えば、1Eです。幅広の靴を履いてると中で足が動いて、捻り易くなります。」

 そしてそのあと、歩く様子をビデオ撮影。その映像と、さっき撮ったフットプリントを見ながらトレーナーさんが解説してくれた。

 プリントで見ると確かに土踏まずがあるように見えるけど、本来アーチになってなければならない箇所が潰れている。加えて、歩くときに外側から着地し、内側で蹴り出してるので不自然な荷重の移動が起きている。その結果、内側に力が滑ってしまってくるぶし部分の骨が出てきてしまった、と。その逆側が内にくびれてしまって、足全体の形が左右で >< ←こうなってるそうだ。

 もうこの骨自体は治らないので(行く先々でこう言われる……)、歩くときに足が外側や内側によれたりしないよう、踵と両脇をしっかりホールドする靴を選んでください、とのこと。
 それで勧められたのが、
ニューバランスのWW584という銘柄だった。いちまんごせんえん……しかし、今は足の上で荷重が横滑りしているため、膝の動きもブレているし、それは腰にも負担であるらしい。まあ、向こうも商売だから話半分としても、先々の医療費を考えれば決して1万5千円の靴ってえのは、高くはない、と思うのだが。

 このままこの治療院でインソールを作るのならこの靴でもいいんだろうが、そこは織田先生(仮名)に相談せねばなるまい。靴を買うかどうかは保留にさせてもらって(丁度のサイズの在庫がなかったので試着できなかったのだ)、とりあえず結果を持ち帰った。(続く)

今週のワタクシ11/27

11月21日 日曜日
 
三婆会。プチ忘年会で大河ドラマの話になり、四十女の脳の衰退が浮き彫りになる。
 「信長の役を舘ひろしがやったのって、何だっけ」
 「えー、利家とまつ?」
 「いやその信長はまつのダンナでしょ」(わかるね?)
 「あ、ほら、あれだ、ほら、パッチワークのやつ!」
 「そうだそうだ、武田鉄矢と前田吟が家来のやつ!」
 「淀が永作博美だったやつ!」
 「馬買うのにへそくり出すやつ!」
 そこまで出てるのになぜ「功名が辻」というタイトルが出ないのか。
 隣の席の人はさぞイライラしていたことであろう。

11月22日 月曜日
 ダンナの雑誌を書店に取りに行き、四十女の脳の衰退が浮き彫りになる。
 「雑誌で電話の取り置きをお願いした大矢ですが」
 通じたんだから良し。
 
11月23日 火曜日
 昨日とってきたダンナの雑誌が先月号だったことが判明。
 書店員さんの脳の衰退が浮き彫りに……って、いや、単なるミスだろこれ。
 交換に行ったが、ショッピングモールの駐車場が異様に混んでいることを不思議に思う。
 今日は祝日だ、と気付いたのは夜になってからだった。

11月24日 水曜日
 「いきものがかりって、名前は知ってるけど歌はひとつも知らない」と思っていたが、
 半年間毎朝見てた「ゲゲゲの女房」のテーマがいきものがかりだったことが判明。
 四十女の脳の衰退が最も顕著なのは芸能問題だという事実が浮き彫りになる。

11月25日 木曜日
 来月から始まるラジオのコーナーの打ち合わせで、CBCへ。
 今日でCBCを訪れるのは3度目なのに、いまだに入り口がわからないどころか
 いつも使ってるフロアが何階なのかも覚えていなかったことが判明。
 
をかべさんが迎えに来てくれなかったら、ツイッターで「CBC内で迷子なう」と書くとこだった。

11月26日 金曜日
 5ヶ月前に申請していたダンナの障害年金の通知が来た。
 手続き確認のために年金機構に電話した──つもりだったが何を押し間違えたか、
 10回以上のコールのあとでフェリー会社に繋がる。
 「たいへんお待たせしてホントに申し訳ありません」と謝られてしまったので
 間違えましたとは言えず、使う予定もない年末年始の運行予定を確認してしまった。
 12月29日以降大晦日まで、神戸→大分便の個室は満席だそうです。

11月27日 土曜日
 そんなふうに四十女の脳の衰退が浮き彫りになりまくった一週間だったが、
 いろんな部分でボケまくっているのは自分だけじゃないことが判明してちょっと安心する。

 「カレンダーに印刷ミス タイガースの11月に31日」(
asahi.com

 ステキ過ぎるぞ阪神。

足の裏・理学療法編

 ダンナは毎週2回、リハビリのためにかかりつけのK病院に通っている。右麻痺の機能回復訓練のための理学療法(PT)と、失語症の回復のための言語療法(ST)の2種類。
 PTの担当はT先生、STの担当はN先生で、いずれも入院時からずっと担当して下さってるんだが、
拙著をお読みの方には、織田先生(仮名)・羽柴先生(仮名)と書いた方が通りがいいかもね。

 でもってこのリハビリはあたしが送り迎えをしているわけだが、ものはついでとPTの織田先生(仮名)に先だってからの
足の裏問題(1)(2)を相談してみたと思いねえ。最初は何の気なしに「足底腱鞘炎ってPTの範疇ですかあ?」と尋ねてみただけだった。

 「まあ、範疇っちゃ範疇ですけど」

 露骨に「それがどうしたオレにはカンケーねえしもう昼飯の時間だし」と顔に書いてある。でも負けないの。そんな織田先生(仮名)のぶっきらぼうな風情の下は、実は意外とキュートだって知ってるから。その場で足を見せながら、いえね先生、実はこうでこうで、この病院の整形外科で見てもらったらこう言われて、マッサージ院で見てもらったらこう言われて、という説明を一通りしたところ、横から織田先生(仮名)の上司にあたるK先生が話に入ってきた。

 「ああ、その内くるぶしの出っ張りは、外脛骨(がいけいこつ)だね。
  骨自体はもう治らないから、歩き方の矯正と、インソール(靴の中敷き)だなあ。
  丁度いい、
織田君、今、インソールの勉強中だよね。作ってあげなよ
 「えっ。ホントに?!」
 「ええ〜〜〜〜〜? 何言ってんすか!」

 露骨に嫌がる織田先生(仮名)。

 「あ、織田先生がやってくれるなら嬉しいですぅ。でもインソールって高いでしょ?
  治療院で聞いたら、1万数千円から2万円するって言われて迷ってるんですよう」
 
「練習だし勉強だし、材料費だけでいいよ、なあ織田君」

 
「ええええ〜〜〜〜〜?!」

 心の底から不満そうな織田先生(仮名)を「練習練習、はっはっは」と笑い飛ばすK先生。このチャンス逃してなるものかと「ホント? ホントに? いいの? ホントにいいのなら御礼するよ何でもするよ芸術のためなら脱ぐよ!」とすがりつく。

 「……時間のあるときなら。練習台ですよ。練習台。あと、脱がないでいいです」

 瓢箪から駒とはこのことだ。もちろん御礼はするよしますとも。
 基本ボランティアでやってくださるとなれば、時間だ何だと無理は言えない。ただせっかくそういう話になったんだから、とりあえず今日は実際に足だけでも見てもらおう。その場で「外脛骨って、これですよね」と靴下を脱ぐ。と。
 いつもクールな織田先生(仮名)が珍しく大声を出した。

 
「うわああ、すげえ扁平足!」

 ……え? ええええ? 扁平足? あたしが? 嘘っ、土踏まずあるもん!
 46年生きて来て、扁平足だなんて思ったことも言われたこともないもん!

 「どこがですか。一目見ただけで扁平足ですよ。写メ撮って送りましょうか」

 この瞬間から、あたしと織田先生(仮名)の静かな闘いが始まったのであった。(続く)

 付記:このやりとりの間、もくもくとリハビリ(床に座る練習)を続けていたダンナがぼそっと「オレはずっと、それ扁平足だって思ってた」と呟いた気がしたが、失語症なので何かを言い間違えたのだろう。そうに決まってる。

女子力について考える

 世間では今、女子会なるものが流行っているという。
 お嬢さん方が男性抜きで集まって、美味しいものを食べながらガールズトークに花を咲かせるのだという。

 つまり
昨日の茶話会&忘年会もまごうかたなき女子会であったわけで。
 たとえ平均年齢が(ごにょごにょ)であっても、それでも女子会に変わりはない。ガールズトークである。たとえ話題が肩凝りだの「イマドキの若者」への愚痴だの老親や姑や子どもへの愚痴だのであっても、断固ガールズトークである。世のガールズトークが「おしゃれと恋」ばっかりだと思ったら大間違いだ。

 そう言えば、ネットや雑誌などで「女子力アップ!」みたいな特集があると、たいてい中身はおしゃれと恋の話なのでウンザリしてしまう。ときどき資格だの稽古事だのがちょこっと混じる程度である。

 声を大にして──いや、フォントをゴシックにして言いたい。

 
真の女子力が試されるのは更年期近くなってからだ。

 仕事の責任・子どもの成長・親の加齢・自分の体の変化──そういったものがほぼ同時に押し寄せるこの年代こそが女子力が要求されるんだぞ。ガチだぞ。
 覚悟しておけ小娘ども。そして、自分のことだけ考えていればいい年代のうちに、いろんなものを吸収して、女子力を蓄えておくがいい。20年後30年後のために、な。

 いや、それでもまだ足りないかも。
 今の七十代の女子力、ハンパねえ……ということを日々実感する嫁の日々。
 女子力に磨きがかかるのは、もしかしたら還暦過ぎてからなのかもしれない。

月例茶話会&プチ忘年会

 今日は月に一度の、仲良しの三婆……げふんげふん、三人娘が集まって優雅な茶話会が開かれる日。レギュラーメンバーのこいんが所用につき欠席ということで、いつみ・かおかお・あたしの3人だけになり平均年齢が……げふんげふん、いや、つまりは、いつにもまして大人の女の茶話会である。

 もともとは「ダンナさんが倒れて大矢さんもいろいろたいへんだろう、何かお手伝いできることはないか」という、ありがたくて涙がでるような理由で始まったこの月例茶話会。その主旨通り、当初はあたしの苦手な裁縫を手伝ってくれたり、あたしの苦手な事務仕事を手伝ってくれたり、ダンナの回復を見て喜んでくれたりしていた。確かにしていた。そのための集まりだった。

 いつからだろう。
 ただ集まって、wii fit plus に興じてお菓子食べて帰るだけになったのは……(遠い目)。
 
 ということで今回は初心に戻ろうと、「あと1ヶ月半で今年も終わりだから、年明けに税理士さんが来るまえに、ここまでの領収書を整理しておきたいんだ、手伝ってよ」と意気揚々と持ちかけた。
 「今回はこいんがいないから、
彼女を仲間はずれにしては可哀想だ」というワケのわからない理由で、領収書整理は却下された……。
 この集まりが始まった当初は「ありがたくて涙が出る」と書いたが、なんか今は別の涙が出るんですけど。しくしく。

 それでも気の合う&話の合う友人と集まって遊ぶのは楽しい。肩凝りや筋肉痛を心配しながら興じるwii fit plus はそれぞれの一挙手一投足に大笑い。むしろ足腰より腹筋が鍛えられる始末。このwii はダンナの自転車友人がリハビリのためにとプレゼントしてくださったもので、理学療法士のT先生からも「自宅でwiiのスキージャンプやってください。あれはバランスと膝を柔らかくする練習になるから」と指示されるくらいだというのに、それを独占して「ペンギンが!」「ニワトリが!」「パンダが!」と大騒ぎの三婆。
 自転車友人やT先生に、この様子は見せられない。

 夜はそのまま近所の居酒屋に移動してプチ忘年会。ダンナには介護保険の配食サービスを頼み、自分は友人と飲みに出かける妻である。それでいいのだ。たまのことなんだし、息抜きは必要さっ。まあ、もう抜く余地はないってくらい抜いてる気もするが。

 その居酒屋は、前からくろけんと一緒に行ったり、〈ひとり飲み〉に行ったりしてて、すっかり馴染み。お刺身や肴をちょこっと注文して白飯と汁物なんていう注文ができるので、ご飯を食べる気分で飲みに行ける店なのだ。
 でもって先日試しに注文してみた牡蠣のバター焼きがそりゃもう旨くて、牡蠣の風味とバターの風味の混ざり具合が絶妙で、一口で惚れたのだが一皿6個は多い。味が濃いだけに、ひとりじゃきつい。ということで、今日は3人だから丁度いい、何はなくともその牡蠣バターを注文。 
 「こないだ牡蠣に当たった……」といういつみの目のまえで、かおかおと3個ずつたいらげる。うまうま。涙目でひとりアサリを注文するいつみ。だからさあ、食べられないんだからせめて目と鼻だけでも楽しませてやろうという友情じゃないか、なあ? うひひ。
 その他、真鯛の兜煮がでらうま。骨まで吸い尽くす。チーズだし巻きもうまうま。ジャガイモのバリバリサラダもうまうま。刺身の盛り合わせに入っていたウニが、とろとろの甘々ででらうま。そして安い。
 もう、すべての忘年会がこの店でいい。近いうちに、〈ひとり忘年会〉しにこよっと。

今週のワタクシ11/20

11月14日 日曜日
 毎年のことだが、野球が終わると2週間くらい、夜の過ごし方がわからなくなる。
 大河をチラ見するも、寺田屋事件以降、野球優先で録画を見てないので途中がわからないんじゃ
 ……と思ったのだが、問題なくわかったから驚いた。後藤象二郎、太った?

11月15日 月曜日
 食器棚を整理していて、ヤマザキ春のパン祭りで貰った白い皿たちの多さに驚く。
 丈夫にもホドがある。がんがん普段使いしてるのに、まったく割れない。
 そうツイッターに書くと「ヤマザキの皿の割れにくさは異常」というレスが続々と。

 夕方、iPod Touch を軽くぶつけたらあっさりガラスカバーにひび割れが走る。
 買って2週間で交換修理、13,800円。その場に倒れ込む。
 ヤマザキはAppleに技術提供すべきだと、心の底から思う。
 
11月16日 火曜日
 週刊朝日の取材を受ける。
 取材場所として、前回の中日新聞取材に引き続き近所のコメダ珈琲を指定。
 「名古屋ではメジャーな喫茶店です」と告げると
 「
名古屋で有名というと、アンコをのっけたスパゲティを出す喫茶店を記憶しています
 他県人にとっては、コメダも
マウンテンも同じらしい。

11月17日 水曜日
 コメダで仕事してたら、店の人から「作家さんですか」と訊かれ、対応に困る。
 続けざまにコメダで取材を受けたので、その様子を見ていたらしい。
 そうだと言えば嘘になるし、違うと言うとじゃあ何だとなって説明が面倒くさい。
 「そういうわけじゃないんですけど、本関係の仕事なので」

 学生時代、新聞配達をやってた同級生が「マスコミ関係のバイトしてる」と言ってたのを思い出した。

11月18日 木曜日
 明日〆切の原稿を泣きながら書いてるところに、
「オールスイリ」が届く。
 思わず読んでしまう。
 乾くるみ「嫉妬事件」に体じゅうの力が抜け、仕事を続ける気力がなくなる。
 〆切に遅れたらクレームは乾さんにお願いします。

11月19日 金曜日
 どうにか原稿を仕上げて送る。
 7枚のところ10枚になってしまい、雑談だのダジャレだのギャグだのを削ることにする。
 削ったら5枚になった。どういうことだ。

 午後は別件の打ち合わせのために栄へ。来年の
ドラゴンズカレンダーで、
 ついに浅尾が一人一枚になっていることを知り、欣喜雀躍。
 その分、いば(以下自粛)
 
11月20日 土曜日
 
「オール読物」が送られてきた。
 
「オールスイリ」を作った文春のI編集者が「なんとなく、ついでに」送ってくれたと言う。
 丸谷才一、東海林さだおという大御所の滋味とユーモア溢れるエッセイをゆっくり味わう。
 その他のエッセイや読切りもいちいち面白くて驚いた。
 自分が「オール読物」を楽しめる年齢になったのだと思うと感慨深い。
 乾ルカの短編「ついてなくもない」が印象的。
 おや、
「オール読物」「オールスイリ」も、印象に残ったのはどっちも乾か。

 グランパス優勝。さあ、優勝セールアゲイン!

足の裏・東洋医学編

 一昨日痛めた足はまだ痛い。当初ほどではないけど、主として朝イチが痛い。
 今日はぽっかり時間が出来たので、外には出ずデスクワークの日にして足を休めようと思ったのだが、「そうだ、マッサージに行こう」と思いついた。肩凝り首凝り持ちのあたしにマッサージは必要不可欠な施術にして、リフレッシュの場でもあるのだ。そこで足のことも相談してみよう。
 思いついたら即行動。行きつけの治療院に電話すると担当の先生の予約がとれた。

 このH瀬先生ってのがアンタ、まだ若くて可愛い男の子(と言いつつ最近の若い人のトシは見た目じゃわからんのだが、たぶん二十代だと思う)で、もうこのキュートな子に揉まれてると思うとそれだけでヘロヘロに癒されてしまうのよおばちゃんは。
 この治療院では靴のインソールを作ったりとかテーピングとかスポーツ外来とかがあって、必要ならそういう施術も受けられるのだが、とりあえず、いつもの肩揉み首揉みの流れでH瀬先生に診て戴く。

 実は一昨日こうなって、痛みはこんな感じで、病院では足底腱鞘炎だかケンマク炎だかって言われて湿布もらって、という一連の状況を報告する。でもって靴下を脱ぎ、先生の前に左足をでんと出す。

 「あ。内側のくるぶしの下に、もうひとつ骨の出っ張りありますね」
 「整形外科でも言われましたよそれ。珍しいんですか?」

 実はうちではあたしもダンナも、両足の内くるぶしの下にもうひとつ、くるぶし状の出っ張りがあるのだ。小さなくるぶしで「小くるちゃん」と我が家では呼んでいる部位である。大矢家では〈小くる率〉100%なので気にもしてなかったが、実は日本人の15〜20%にしか見られない骨だと言う。へえ。

 「大矢さん、学生時代とかけっこうマジでスポーツしてました?」
 「してましてしてました。そりゃもうアタックNo.1な青春で」
 「この骨の出っ張り、いつ頃からあります?」
 「さあ……覚えてない。靴がたいていその部分から切れるんですよ」
 「そうでしょうねえ」

 そしてH瀬先生は、おもむろにあたしの足を曲げたり伸ばしたり畳んだり裏返したりし始めた。一昨日の整形外科では足の裏の腱をぐりぐりされて痛みにのたうち回っただけだったが、H瀬先生は足首を持って踵をくるくる回して見たり、内くるぶし&小くるの周辺を確認したり、更に上のふくらはぎの方まで押さえ始める。それがアンタ

 「せせせ、せんせーふくらはぎ痛い痛い! なんでっ」
 「足の裏から内くるぶしの下からふくらはぎって、ずっと1本の筋なんですよ」
 「いやだからって! これまで
気付かなかった場所の痛みを発見しなくていいからっ!

 そしてやっぱり足の裏はぐりぐりされると痛い(が、一昨日ほどではない)。ふくらはぎも揉まれると痛かったが歩く分には問題ない。問題は、歩くと痛い内くるぶし周辺だ。そしてH瀬先生が診断を下す。

 
「これ、思春期のスポーツ選手によく出る症状です」

 
大矢博子、昭和39年生まれ。辰年。46歳。思春期

 「先生……客観的に判断して、あたしって思春期にもスポーツ選手にも見えないと思うんですが」
 「まあそうなんですけど」

 多分、若い頃の継続的なスポーツによって内くるぶしの下の骨が歪んだんだろうと。足の荷重がまっすぐじゃなくて内側に落ち込んじゃってるらしい。「X脚ってこと?」と尋ねると違うと言う。X脚とは膝が内を向いてる症状だが、大矢さんの場合は足首から上はまっすぐで、ホントに足(脚じゃなくて)の部分だけが内側に傾いてるんです、と。

 「もうこの骨の出っ張り自体は治りませんから、この状態でできるだけ
  歪んだ部分を補正していくしかないですねえ。
  今の痛みはマッサージで筋をほぐしてやれば楽になると思いますが、
  この骨の歪みのままだとまた何かのはずみですぐ再発しますよ」
 「ああ、それは整形外科の先生にも(結論だけ)同じことを言われた……」

 先生によれば、一番良い対処方法は靴の中敷き、いわゆるインソールを作ることだそうだ。あたしの足に合わせたインソールを使うことで体のバランスを調整するという。でもね、オーダーメイドだしね、靴も一足だけじゃないしね……ということで、まずは手軽な方法としてサポータを見繕っていただくことにした。思春期の若造にはインソールなんて贅沢さ、若造にはサポータあたりがお似合いさっ(ヤケ)。
 次回予約は来週水曜。その前に、ダンナのリハビリの付き添いで病院に行くので、理学療法士の先生に相談してみよう。あ、
「脳天気にもホドがある。」に出てきた織田先生(仮名)のことです。<なんか読者の間で密かにファンが出来たらしい。

 それにしても思春期のスポーツ選手とは。
 そういえば10年ほど前に左上腕を痛めて整形外科に行ったら
「野球肩だね」と言われたことがあったっけ。やってないし、しかも利き腕でもないのに。「原因は変化球の多投」って、投げてない投げてない。「今中や川崎もこれだったんだよね」って、いやだから違うって絶対に!

 あのときは野球が好き過ぎて、想像妊娠ならぬ想像野球肩になったんじゃないかとまで思ったが、事ここに至っては、どうやらあたしの体は身に覚えのない部分でものすごくスポーツをしてるとしか思えない。しかも思春期だし。あたしの中にいる15歳くらいでスポーツマンのビリー・ミリガン出て来い。

足の裏・西洋医学編

 大御所推理作家の小説がドラマ化されるとき、その著者の名前が冠として使われることがある。
 よく見るところでは「西村京太郎サスペンス」「山村美紗サスペンス」などがそうで、別のパターンとして「松本清張の『黒革の手帳』」「東野圭吾の『白夜行』」なんてえのもある。
 ところで、同じようにドラマに名前を冠される大御所作家に夏樹静子さんがいる。でもって、彼女のとある短編がドラマ化されたときも、ご多分に漏れず「夏樹静子の」という枕詞がついたわけだが──。

 その短編タイトルが「足の裏」だったのは、不幸な巡り合わせというしかない。

 新聞のラテ欄にばばんと載った
「夏樹静子の足の裏」。何をやるんだ2時間も使って。見ていいのか。っていうか見たいのか。そもそも誰か局内で止める人はいなかったのか。この話はミステリファンの間では有名なものなんだが、おかげで夏樹静子さんと言えば足の裏、足の裏と言えば夏樹静子さんという、非常に間違った印象をずっと持ち続けるハメになった。いや、「足の裏」は名作短編ですよ「夏樹静子のゴールデン12」で読めますよ。<何をとってつけたように。

 てな話はさておき(さておくのか)、今朝、朝食を食べ終わって立ち上がり、数歩歩いたとき、いきなり左足の内側がズキっと痛んだ。歩く度に、内側のくるぶしの前後が痛くて、まともに歩けない。ぶつけたわけでもないのに、何だこれは。
 じっとしてれば痛みはないのだが、歩くといきなり痛い。底が厚いクッション仕様のスリッパを履くとだいぶ楽。これでは生活に困るので、整形外科に行ってみた(靴を履くとだいぶ楽になった)。

 この病院はダンナがリハビリでお世話になってるところで(
拙著に出て来たK病院です)、医療事務員さんも看護士さんも顔見知り。診察室に入って、左足の内側のラインから内くるぶしにかけてが歩くと痛いんです、ときどき足の甲や足首の方にも痛みが広がるんです、と訴える。
 すると先生はあたしの足の裏を見始めたではないか。先生に向けて足の裏を突き出した状態で、「ほう、内側のくるぶしの下んとこの骨が出てるねえ」「あ、それは昔からです」などと言いながら親指をぐっと反らし、足裏の筋を伸ばした状態であちこち抑え始める。
 いえ先生、足の裏ではなくて、土踏まずの脇のあ──
いでぇぇぇーーーーーーー!

「いだいいだいいだいいいいい!」
「うん、やっぱりここか。これね、ソクテイ──足の底って書くんだけど、足底の腱の炎症」
「えーでも歩く時は足の裏なんて痛くもなんともないですよ」
「でもこうすると痛いでしょ(ぐりぐり)」
「いだいいだいいだああああああ!」
「ね、ここの腱が炎症起こしてるんだよ。だからここと繋がってる上の方まで痛くなる」
「だって一番痛いのは内くるぶしのあたりなんですよう」
「でもこうすると痛いでしょ(ぐりぐり)」
「いだぁぁぁぁあああごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
 っていうか
痛いのわかってんなら押さないでもいいでしょ先生!

 楽しんでるとしか思えない。

「最近、いっぱい歩いたとかスポーツしたとかぶつけたとかの心当たりは?」
「いえまったく。むしろ運動不足気味なほど」
「まあ、これは原因不明でいきなりなるからね」
「不明なんだ……。骨とか腫瘍とかの怖い病気ってことは」
「ないない。湿布出しとくから足の裏に貼っといて」
「はあ……怖い病気じゃなきゃ、まあ、いいんですけど」
「でもこれね、一度なるとクセになるよ。何度も再発するよ〜」
「げ」
「つま先に体重かけると痛いから、踵で歩くようになるよ〜」
「げ」
「そうすると今度は腰に来るんだよね、あははははは」

 
絶対楽しんでるだろジジィっ!

 つまるところ、足底腱鞘炎(だったか筋膜炎だったか)ってことで、湿布出されておしまい。でもエラいもんで、痛い内くるぶしではなく足の裏(押されて死ぬほど痛かったところ)に湿布貼ってたら、ちょっと痛みは和らいできたよ。足の裏、侮りがたし。

 ところで診察後、事務員さんから「大矢さん! 
昨日の中日新聞見ましたよ!」と声をかけられた。まえの会社では合コン部員さんだったという美人事務員さんで、ダンナのリハビリ予約の調整にいつもお世話になっている人だ。

「あ、ご覧になりました? あれ写真載ってたから恥ずかしいんですよね」
「大矢さん、
メガネはずしてお化粧したらキレイなんじゃないですかー!

 なんかはっきりとケンカ売られてる気がするんですが。ほぼ2年間、毎週のように会ってますよねずっと顔見てましたよねお姉さん? で、今更のセリフがそれ? それなの?
 〈一度決着をつけねばならない人リスト〉のトップに名前を刻み込み、足を引きずりつつ病院を後にしたのであった。

鳥飼否宇さん来名

 『官能的〜4つの狂気』(鳥飼否宇・原書房)という本格ミステリがある。
 架空の都市・綾鹿市を舞台に起こる殺人事件とその謎解きが詰まった連作短編集で、バカミスすれすれに見えて実はけっこう緻密に練られたトリックや、シモネタすれすれに見えて実はすれすれどころか力一杯シモネタの、なんつーかその、薦める相手を非常に選ぶ、著者の名物シリーズのひとつだ。
 シモネタというだけで、苦手、と感じる人もいるだろう。ただ、たとえあなたがシモネタ嫌いであっても、あるいは本格ミステリというジャンル自体に興味がなかったとしても。

 
中日ファンなら、『官能的』は読んでおくべき本である。

 言っておくが野球小説ではない。野球のヤの字も出てこないし、ドラゴンズのドの字も出て来ない。それでも中日ファンが読めば、「ああ、これはドラゴンズ小説だ!」と納得していただけると思う。ちなみに本書を読んだときの、あたしの感想は
こちら

 さて、そんな小説を書かれた鳥飼否宇さんはもちろん中日ファンである。現在、奄美にお住まいなのにも関わらず、なんと6日の日本シリーズ第6戦を見るべく来名されたのだ。となればもちろん、歓迎の宴を開くべきであろう。
 本来なら名古屋城の天守閣を借り切って酒池肉林の盛大なパーティを催すべきところだが、鳥飼さんと会えるのが7日の夕方というのがネックになった。連絡をとり合った時点ではまだ7日に試合があるのかどうか分からなかったからだ。試合がないのなら大パーティも可能だが、あるとすればそれは最終戦、つまり勝った方が日本一という試合になるはずで、だったら飲んでる場合じゃあるまい?(もちろんこの時点では7日の試合があんなことになろうとは予想もしていない)

 結局、7日の試合がどうなるかは6日が終わらなくちゃわからないため、名古屋城は断念。「野球が無ければナンボでも飲むが、あるなら早めに帰る」という臨機応変な対応が可能の、在名の同業者にして中日ファン限定の迎撃となった。参加者は
太田忠司さん、水生大海さん、そして鳥飼さんとあたし。

 夕方4時過ぎに鳥飼さんお泊まりのホテルに集合。鳥飼さんとは全員初対面ではあるが、互いの著作を通じて知っていたということもあり、何はなくとも「何ですか昨日の6時間試合は!」という共通の話題であっという間に打ち解ける。
 予約していたダイニングカフェに場を移し(ここがまあ訳の分からない
真っ暗な店であった)、中日の勝利を祈って乾杯。今、完敗という嫌がらせのような誤変換をしやがったことえりに10分悪態をついたところだが、まぁそれはそれとして、仕事の話、本の話、野球の話、そして「なんで奄美なんですか」「虫が好きだから」ってな話、「こないだマダガスカルに行かれたそうですね」「虫が好きだから」ってな話、「会社をやめて専業作家になろうと思われたのは何がきっかけですか」「虫が好きだから」ってな話、てか、どんだけ好きなんだ虫。たぶんあたしと虫が溺れていたら、鳥飼さんは間違いなく虫を助けるだろう。

 あたしが大学時代を過ごした町と鳥飼さんの故郷が同じで、しかもかなり近所だったことに驚き、「旦過市場のとこに出る屋台って、おはぎがありましたよね」だの「守恒のニチイの坂を降りたところにあったスーパー、何て名前でしたっけ」「アピロス」というローカルにもホドがあるような話題(分かる人だけ分かってください)で局地的に盛り上がったり。

 そうこうしてる間にプレイボールの時刻となる。勝てば明日があるし負ければ終わりってことで、「プレイボールから見なくちゃ!」という切羽詰まった気持ちはないとはいえ、6時を過ぎると4人が4人ともまるで打ち合わせたかのようにモゾモゾし始める。「わ、ワンセグ入らないっ」「吉見対俊介だよね、たぶん」「とりあえずネットの速報を」「ナゴヤドームの俊介なら打てない事はないと思うんだけど」……「あ、先制されてる」「ええっ!」「あ、でも裏にすぐ取り返してる」「おお!」

 ……まあ、その顛末はどうであったかは、「勝ってるねー」「リードしてるねー」「安心だねー」と言い合ってそれぞれ帰途についた4人が、帰り着くなり声を揃えて
「どゆこと?!」とツイッターで叫んだ、とだけ書いておきましょう。しくしく。

 とまれ、たいへん楽しゅうございました。次回は野球の時間に縛られることなく、もっとゆっくりじっくり飲みましょう鳥飼さん……って、野球見に名古屋に来るんだからそれはハナから無理な相談か。では来年は、56年ぶりの完全制覇及び昌の日シリ初勝利の美酒をご一緒できることを願っております。

誕生日

 何度目の? なんてことを訊く思いやりのない子は、おばちゃん大嫌いです。

 てか本人もそろそろわからなくなってきた。隠すとか若く見せるとかじゃなくて、ホントにわかんなくなるのよトシとってくると。「こないだ、何かの書類に45歳って書いたよな」という記憶はあっても、それが去年のことか今年のことか思い出せないので、何の参考にもならない。現在、少なくとも45歳未満ではないということがわかるだけだ。

 とまれ、今年が2010年でー、生まれたのが1964年だからー、0から4は引けないからー、10借りてきてー、みたいな計算をしないと自分のトシがわからないという状態。「そんなアホな」と思う若い嬢ちゃん坊ちゃんも、40過ぎたらわかるよ。
 たとえば10円玉をばらまいたとして、それが10枚そこそこならぱっと見、何枚あるかわかるでしょ。でも40枚以上になると、一目見ただけじゃ何枚あるかなんてわからないじゃん。なんか比喩が激しく違う気がするが、まあいいか。46歳から何かが解禁されるってわけでもないしさー。

 ところで、うちの母は10年以上にわたって「38歳」と言いはっていた時期があって、ある日、さすがにもう無理だと気付いたのか、急に「52歳」に変わったことがある。空白の14年間。
『スキップ』か。それからやはり10年くらい52歳であり続けた。
 それももうさすがに無理だろうが、今はいくつと答えてるんだろう。っていうか、本当はいくつなんだ母ちゃん。実の娘もわかんなくなってるぞ。

 それで以前、伯母(母の姉)に尋ねてみたことがある。少なくとも伯母よりは母の方が若干年下のはずだ。だから伯母の歳がわかれば、母の歳もおおよその見当はつく筈。ところが。
 「伯母ちゃん、歳いくつ?」とあたしが尋ねたとき、伯母は「歳? あたしの歳? あははは、あーはっはっは、ほーっほっほっほ」と笑いながら、どこかへ行ってしまった……。

 いえ、別にいいんですけどね。
 本人たちも誤摩化しすぎて、自分でもわかんなくなってると見た。

 そして誕生日が来る度に思い出す、07年のドラゴンズの日本一。
 山井→岩瀬の、あの継投完全試合はあたしの誕生日の出来事だったんだぞーふっふっふ。
 あたしの誕生日はもはや自分だけのものではない、全ドラゴンズファンの記念日になっているのだ。この日に生んでくれてありがとうお母さん。なんという先見の明であろう。

自転車チーム飲み会

 夜は雨の中、自転車チームVerdadの飲み会。
 チームジャージ配布会(破れたりサイズが合わなくなったりするので、年に一度、チームジャージの補充を行うのだ)と
拙著の出版記念会を兼ねた飲み会で、場所はチーム御用達のいつものお店だ。

 なんせダンナの発症後はいろんな面でお世話になったチームメイトたちなので、全員に献本せねばならないところなのだが、こっちの実入りがなくなってしまうので涙をのんで拙著への出演者だけに献呈。
 けれど他のメンバーも自腹で買ってくれてて(ありがとうございますありがとうございます)プチサイン会も開催。いろいろ助けてくれた上に足しげく見舞いに来てくれたS芝さんの名前を間違えたことは今日最大の痛恨事だ。もう一生、人名はひらがなで書こうと心に誓う。

 今日は、この先ダンナがひとりで外出できるよう「タクシーを使う」練習も兼ねていた。身障者用タクシーチケットとタクシー会社のカードを出せば、現金を出すことなく精算(しかも割引付き)できるので、片麻痺のダンナでも難なく利用できるシステムなのだ。
 ところが、往路に乗ったタクシーの運転手さんには「わあ、
このカード、出されるの初めてだもんでやり方わからん。現金で貰っていい?」と言われた……。大丈夫かTタクシー。

 とまれ、そんな事情なので、今日は酒も飲めるのだ。あ、いや、決して自分が飲みたいためにタクシーを使ったんじゃありませんよダンナの練習のためですよホントですよ! ただ、せっかくだから飲んでるだけですよええホントに。

 敢えてダンナからは離れて座り、気心の知れた店の人に(どれくらい気心が知れてるかというと、混んでるときに注文すると「あとで」と言われるくらい)「料理は一口大に切ってください」とお願いしてあとは放置。
 いつもうちで使ってる、滑り止め付きの箸や食べこぼしチェックの鏡や皿をずらさないためのマットなど、お助け用具一切無しでの外食。まあ困ったことがあったら同じテーブルのチームメイトが助けてくれるさと、もう徹底して完全放置。他に手があるときは任せて休むのだ。ふっふっふ。

 店内では中日がバカ勝ちしてる日本シリーズ第2戦が流れ、7点目あたりから「昨日打てー!」の大合唱。あたしはチーム監督夫人のK子さんと楽しいガールズトークに花を咲かせたのさ。ま、
更年期と肩こりと整体の話をガールズトークと呼んでいいのかは、要検討ではあるが。たいへん楽しゅうございました。

スポーツオーソリティと日本シリーズ

 今日は友人いつみとショッピング。
 守山区のイオンに入っている
スポーツオーソリティのセールに、ロングパンツを買いにいくのだ。

 ナイキやアディダスなどのブランドものもあるが、あたしの狙いはスポーツオーソリティのオリジナルブランド。ストレッチタイプのロングパンツがもう、もともとエアロビクスなどのワークアウト用なので超動き易くて楽で、洗濯機でがんがん洗えて、でもシルエットがめっちゃキレイで、トップス次第では普通のお出かけにだって使えるという優れもの。しかも3500円程度。
 デニムってきついし動きにくいしカジュアル過ぎるしとお悩みの中高年マダムの皆さん、ワークアウト用のスポーツウェア、使い勝手がよろしゅうございましてよ。縦ラインの無いデザインなら、ちょっと見、フォーマルっぽい着回しも出来ましてよ。

 ところが今お気に入りのものと同じタイプがない。店員さんに「これと同じのが欲しいんですが」と自分の足を指差すと、若い男性の店員さんは「品番がタグに書いてあるんですが……」とモジモジ。え、とウエストの裏側あたりを見ると、「いえ、もうちょっと下の方に……」と更にモジモジ。
 なるほど、左サイド骨盤あたりの裏側にタグがある。平気でそこまでめくって見せる。四十過ぎるとこういうのが平気になります。昔は「金をもらっても見せたくない」だったものが
「金を払ってでも見せたい」と思うように……いや、虚しいからやめよう。

 嫌がらせのように店員さんにタグを見せた結果、すでに廃版だという。しょうがないので、同じシリーズの新版を購入。ちょっとデザインが変わってるが、問題無し。
 せっかくだから他のブランドものの同じタイプのものも試さねば損だ。あたしが試着室に入って1本穿いてる間に、いつみが見繕った別の商品がどんどんドアの下から差し込まれてくる。連れのいるショッピングの何と楽なことか。

 本来の狙いだったスポーツオーソリティオリジナルブランドとは別に、NIKEやGfitなどいろいろ試した結果、ルコック・スポルティフのロングパンツを購入。もうひとつ、やや厚手の生地のボトムも探したが(
こういうやつね)、こちらは気に入ったものが見つからず断念。次のセールに賭けることにする。でも良い買い物したー。

 夜は日本シリーズ──のための練習試合がナゴヤドームで行われた模様。
 うちの吉見や平井のために、ロッテの皆さんが投球練習に付き合ってくださったらしい。ここに投げたら打たれる、というのを教えてくださったようだ。
 バッター陣のためには、なんとロッテのエース成瀬が、打撃投手を買って出てくださった。でももうちょっと打ち易い球を投げてくれないと練習にならないよ成瀬──って、これも虚しいからやめよう……。しくしく。

 なお、諸般の事情でダンナの実家近所のコメダ珈琲で、ワンセグで試合を見てたんだが、いつもは呼んでも来ない店員さんが、頼みもしないのに水のお代わりや灰皿の交換にやって来る。負けてる、と教えてやる。厨房に衝撃が走っていた模様。

 深夜、ロッテファンの友人から
「中日はロッテより弱い」という呵々大笑のメールが来た。
 そ、それは昔、巨人が三連敗から四連勝したときの魔法の呪文……! いいのか?

「で」

 日本語の「で」という助詞には、手段と目的(あるいは理由)の意味がある。まあ、それより場所を示すのが第一義なんだが、それはちょっと置いといて。
 わかりやすいのは「私は○○で●●に行った」という文章。

 手段を表す「で」
  私は新幹線
東京に行った。
  彼は徒歩
公園に行った。
  中日ナインは飛行機
札幌に行った。

 目的(理由)を表す「で」
  私は仕事
東京に行った。
  彼はデート
公園に行った。
  中日ナインは交流戦
札幌に行った。

 その「で」が何を表しているのかは、文脈でわかる。
 ここで気をつけたいのは目的を表す場合は言葉が省略されているという点だ。「仕事で」「デートで」「交流戦で」というのは、「仕事(デート/試合)をするための場所として」と言うのが正確な日本語である。つまり
「で」というのは「〜をするための場所として」を簡単に言い換えているに過ぎない。つまり、冒頭に書いた第一義の方だ。

 そう考えると、日本語というのは「前後の脈絡」に頼っている部分が大きいことに気付くだろう。

 (1)中日ナインは交流戦で札幌に行った。
 (2)中日ファンの友人は交流戦で札幌に行った。

 1の場合は「出場するために」であり、2の場合は「観戦するために」である。出場と観戦ではまったく違うが、そこは主語や前後の文脈から、聞き手(読み手)にはちゃんと伝わるようになっている。主語が「記者は」だったら交流戦の取材(仕事)で行ったんだろうし、主語が「テロリスト」だったら何か犯罪をもくろんでると思うし。そしてもちろん、「交流戦」の部分が飛行機だの車だのとなっていれば、「目的ではなく移動手段を示している」ということを聞き手は説明されずとも即座に理解する。
 これはコミュニケーションとしてはけっこう高度な事だと思う。言葉ってすごい。

 ところで。
 こないだの日曜、仲良しの三婆……ごほごほっ、三人娘と書店巡り&ディナーで(この「で」は目的を表す)名駅に出たという話を
日記に書いた。三人娘というのは、いつみ、かおかお、そして敢えて名を秘す●いん嬢の三人である。
 この、敢えて名を秘すこ●ん嬢の趣味は乗馬である。彼女は馬に乗るために、あちこちの乗馬クラブや乗馬イベントに参加している。そしてイタメシ屋さんで歓談中、こい●嬢はこんなことを言った。

 「あたし、馬大分に行ってきました〜」

 いくら「文脈」というものがあろうとも、その瞬間、聞いていた三人の脳裏に、名古屋から大分まで
高速道路を疾走する馬が浮かんだのは、決して責められないと思う。

 カードと車載機を鞍に設置し、ETCレーンを突っ切る馬。
 サービスエリアで、バイクと並んで駐輪場に立つ馬。
 関門橋を渡る馬。

 いやそれ以前に、馬は軽車両扱いだから高速道路は通れないんじゃなかったか。じゃあ下道か。信号待ちをする馬。マクドナルドのドライブスルーで順番待ちをする馬。ガソリンスタンドで飼い葉を食む馬。

 たとえ日本語がコミュニケーションツールとして高度であろうと、それはなんぼなんでも無茶だよこいん。
 

ツンデレ名古屋

 ちょっと前の話。
 さとなおさんが講演で来名され、
22日付けのさなメモで、こんなことを書いてらっしゃる。

 
クライマックス・シリーズで中日が連勝中の名古屋。(中略)
 でも阪神が同じ状況であるときの大阪と比べると大人しい。ちょっと意外。
 もっとドラゴンズだらけかと思った。


 まあ、
阪神ファンと比べられたら大抵のファンは大人しいと思うが、それはそれとして。
 これを読んで、あたしはツイッターでこう書いた。

 連勝中でも名古屋の街がおとなしいのは、ドラゴンズを含む地元のものに対して
 なぜかツンデレな名古屋気質のせいかと。
 これくらい当然なんだから、べ、別に、嬉しくなんかないんだからね!

 この発言がね、けっこう「そうそう!」「わかる!」という反響を戴いてしまいまして。
 そうなのよ、生粋の名古屋人の人は自覚してないかもしれんけど、名古屋人って「いかにも名古屋らしいもの」に対して、けっこうツンデレなのだ。

 あたしは大分で生まれ育って福岡の大学に行き東京に就職して大阪に転勤して名古屋に嫁ぐという、ひとり4大ドームツアー(札幌ドームが出来る前の話)な人間。でもってそれぞれの土地柄・人柄というのに接して感じたんだけど、東京は全国の寄り合いみたいなものなので別として、九州と大阪は、地元愛がはっきりしてるのだ。
 「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」と言いきる大分。
 山笠があるけん博多たい! でも母ちゃん怖かとよ、な福岡。
 そして日本全国世界各国どこへ行っても大阪弁で押し通す大阪。
 こういう地域に比べると、名古屋ってのは──地元に対してちょっとニヒルに見てるところがある。

 地元を出ると、名古屋弁を使わない。いや、地元に居ても、話し相手が地元の人じゃなかったら名古屋弁を使わなかったりする。「味噌カツ? うん、でも、ソースも美味しいよね」「味噌煮込みよりさぬきうどんの方が好きだな」「コメダっておしゃれじゃないもん、スタバが増えて欲しいな」なんて普通に言う。
 嫁いで来た当初は、名古屋の人って地元が好きじゃないのかな、と思った。

 ところが、である。

 そんなこと言ってる人の家の
冷蔵庫には「つけて味噌、かけて味噌」が当然のように入っており、味噌煮込みの卵をつぶすタイミングにこだわりがあり、「東京の喫茶店はコーヒー頼んだらコーヒーしか出ない」と怒ったりするのが名古屋なのだ。
 野球には特に興味がないと公言していた名古屋出身の作家さんが、エッセイの中でさりげなく「中日の投手陣は駒が揃っている」なんて書いてたりする。
 決してスポーツ好きではないはずのあたしの友人は、「負けるところは見たくないから、中日が勝ってる試合に限り7回から見る」と言う。
 
 
好きなんじゃん。(ずばっ)

 面倒くさいことこの上ない。
 でもこういうところが、なんか良くも悪くも名古屋だよなあ、と思うのよ。14年も住んでると、そのへんの呼吸というのがだんだん掴めてきた。そしてそれが、
押し付けがましくなくて心地いい

 だから名古屋の人に向かって「あ、この人って地元へのこだわりってあまりなさそうだな」と思っても、ドラゴンズ、グランパス、信長・秀吉・家康、そして味噌の悪口は言わない方が身のためです。 
 

中日新聞にコメント載った。が。

 今日の中日新聞の文化面が、「桐島、部活やめるってよ」「チア男子!」が話題の朝井リョウさんを取り上げている。でもって青春スポーツ小説の隆盛ということについて、あたしがちょこっとコメント寄せてます。

 お気づきでしょうか、名前の次にカッコ付きで、名古屋在住と記されていることに。そして碧野圭さんの
『銀盤のトレース』には〈愛知県が舞台の〉という説明付き。記事本編を読めば、朝井リョウさんも岐阜県出身と明記されている。

 午後、中日新聞のこの欄の担当さん(同い年の女性なのだ)と会ったときに、「名古屋在住とか岐阜県出身とか、要るんですか?」と尋ねてみた。答は「要るんですよ〜」

 彼女自身は「要らなくね? いい本や面白い情報を紹介するのに、どこに住んでる人かって関係なくね?」と思わないでもないようなんだが、地元密着新聞としてそこははずせないという伝統になっているらしい。
 なんか、愛三岐の東海三県って、身内っていう感覚が強いらしい。だから新聞に載せるにも、どこの人だか分からないより、「うちの子」の話の方が読者の興味を引く、と。

 言われてみれば、心当たりがある。
 地元出身の芸能人がテレビに出てきたとき、普通なら「あ、この人好き〜」「可愛いよねー」「あのドラマが良かったね」という話になると思うのだが、あたしの出会った名古屋人の場合。

 「あ、舘ひろしだ」「舘ひろしって、千種高校だよな。頭いいよな〜」
 「浅田真央ちゃん、頑張れ!」「大須のスケートリンクでときどき見かけた」
 「加藤晴彦が出てる〜」「うちの弟が同じ学校でさー」

  “憧れの有名人”ではなく、すっかり
近所の兄ちゃん姉ちゃん。何この身内感覚。
 よく、大阪で芸能人が街を歩くと、通りすがりのおばちゃんがまるで知り合いのように声をかけてくるという話を聞くが、名古屋の場合、ホントに知り合いだとかよく見かけたとかというケースが多くて驚く。
 他にも、東山線であみんの岡村孝子をよく見かけたとか。バイトしてたガソリンスタンドに彦野(元中日)が来てたとか。誰もがなんかひとつはその手のエピソードを持っている。ホントに持ってる。それが名古屋。

 ちなみにうちがときどき利用する介護用品のショップは、八神純子の実家が経営してます。いや、それだけなんですけど。だから何ってんじゃないですけど。

 ところで、中日新聞に名前が載った今日、市内の家族友人から「新聞見たよ!」という連絡が押し寄せて驚いている。あたしはこれまで他のいろんな新聞に何度も書評を書いたりコメント載せたりしてきたが、何も言われたことなかったのに。中日新聞に載って一人前なのか。そうなのか。

 

♪金曜日に家具屋へ出かけ

 エルゴヒューマン買ってきた。トゥリャトゥリャ……♪

 というわけで買ったよ買っちまいましたよ
エルゴヒューマン(このサイトのトップページでカーソル動かすと、椅子がついてくるのが超カワイイ)のOAチェア

ergo-02

 支配されちゃいました。てへ。

 ちょいと小粋な家具屋が徒歩圏内にあり、そこでエルゴヒューマンを扱っていると知ったのは1ヶ月前。
 アーロンチェアに惚れるも高くて手が出なかったところ、エルゴヒューマンもいいよという噂を聞き、試座させてもらいに行ったらば、一発で惚れた。
 もうほとんど買う気だったのだが、工業デザインにはチト詳しいダンナの意見も聞こうと。いろいろ都合もあって、ちょっと長めのリハビリ散歩も兼ねて二人でその家具屋さんに出向いたのが今日だったのだ。

 店に入るなり、ダンナの足が悪いと見てとった店員さんが、「どうぞ椅子を使って下さい」と言う。そこは家具屋だ、椅子なら売るほどある。どれでも好きに座って良いと言う。
 しかし、座面の低いふかふかソファには片麻痺患者は座れない。座ったが最後、永遠に立てなくなってしまうから。こじゃれたデザイナーズチェアも、座面が狭かったり足が動かしにくかったり。結局、売り物ではなく客の相談テーブルにあるごく普通のダイニングチェアに座らせてもらう。売るほどあるのに!

 える子(エルゴヒューマンに命名)をダンナの前まで運び、「いっつ・びゅりほ!」とばかりにプレゼン。なんかあたしにはわからないネジだのワイヤだの接続部だのを見ていたダンナからOKが出たので、「それで、幾らにして戴けます? 展示品ですよね、これ」と折衝。
 定価は12万円弱だけど、ネットではだいたい8万円くらいで出回ってるタイプ。ただのちのちの保証やケアを考えると、近くの家具屋の方が良さそうなので、若干高くても買う気でいたんだが、思いのほか安くしてくださった。おまけに配送料無しで即日届けてくださるとのこと。展示品だったのでもう組み上がってるし、余計な梱包もないってことで、かえってラッキーだったかも。

 というわけであたしのワークスペースには現在える子が鎮座ましましってて、これがもう快適この上ない。もうこれまでの椅子には戻れない。腰を支えるランバーサポート、頭を支えるヘッドレスト、体に合わせて調節できる各部位、そしてパソコン使うときに肘置きがあることがこれほど快適だとは。

 ただ問題は、
黒くてシャープで最先端っぽいこのチェアが、あたしの白木&籐とキャンパス布で統一されたカントリー調デスクスペースにまっったく合わないってことなんだが、この座り心地の前には、そんな瑣末は気にしないのだ。
 

書評アップとメールのお返事滞ってます

 文句を言いながら朝ドラはきっちり観てたり、夜は夜でセ・リーグの優勝ラインを睨みながら「巨人と阪神、どっちが勝てば中日有利なんだ?」と悩んだりしているときに、こんなことを書くのは心苦しいんだが。

 えーっと、仕事が、〆切が、どえらいことになってまして。
 通常の書評だの解説だのの原稿仕事がただでさえ「この仕事受けたとき、あたし何考えてたんだろう」と首を傾げるようなスケジュールになってまして、そこに年間ベストの未読潰しが加わるこの季節。
 おまけに何でか知らんが、そういうときに限って、私生活の方でもちょこちょこ用事が入るから不思議。水は低きに流れるというが、この水を「予定」と言い換えるなら、あたしはマリアナ海溝並みに低いところにいるらしい。

 そんな事情なので、頂戴したメール(サイト再開以来、ホントにたくさんメール頂戴してます! ありがとうございます!)への返事が思い切り滞ってます。鬼のように未読潰しをしてるんだけど、なかなかなまもの書評を書く時間がとれません。
 しばらくお待ち戴けると嬉しいですう。

 あ、メールの返事は無理でも、ツイッターで話しかけてくだされば反応できる可能性が大きいと思います。ただ見落としはあるだろうから、そこはお含み置きくださいな。

朝ドラのヒロイン像

 特に朝ドラマニアというわけではないが、放送がちょうど朝食の時間と合うし、他局のワイドショーや情報番組に興味がないので、なんとなくずーーーーっと朝ドラを観ている。
 でもってゲゲゲに変わって、今日から「てっぱん」。番組が始まってすぐの、ヒロインの紹介ナレーションで「来たか……」と思った。

 〈思い込んだら一直線〉

 うわあ、またこのパターンかよヒロイン。
 昔からなんだが、どうして朝ドラのヒロインには「自分が常に正しくて押し付けがましい一直線キャラ」が多いんだろうなあ。「てっぱん」は今日から始まったばかりだからまだ断定はできないけれど、それでも、見知らぬ老婦人がトランペットを海に捨てるのを目撃したヒロインが海に飛び込み「トランペットが可哀想」「音楽の神様のばちがあたる」とタメ口で怒るシーンには、正直げんなりした。
 普通、知らない人──しかも年輩のご婦人がそんなことをしてたら、何か事情があるんだろうとは思わんか? それは赤の他人(まあ、実は赤の他人じゃなかったわけだが)が自分の価値観だけを基準に邪魔をして、他人の心よりも楽器の無事を重視して、自分の4倍もの年齢の人相手に初対面でタメ口で文句を言うことではないと思わんか?

 これまでの朝ドラヒロインにはそういうのが多くて、自分が納得できないことがあったり、身近な誰かが困ってる悩んでるみたいなときには「私、黙ってられない!」とばかりに東奔西走する。そういうのを元気で親切と捉えるのかもしれないけど、正直言って実在されると、すべての行動のベースが自分の思い込みに寄って立ってるので、かなり押し付けがましい。その最たるものが「まんてん」だったんだが、まあそれは当時にいろいろ書いたので割愛。

 ゲゲゲはそういう部分のない、「自分のしたいこと」じゃなくて「すべきこと」の中で日々頑張るキャラで、そこがとても良かったのに。あと、「てるてる家族」の冬ちゃんとか、「私の青空」のなずなとか。このあたりは押し付けがましさがなくて、自分のすべき世界ですべきことをやっている・守るべきものを守っている・他人に自分の価値観を押し付けないというあたりが、とても好きだったんだが。
 もしも自分の同僚や部下が彼女たちだったら──と考えたら、いくらバイタリティとやる気があっても、従来の朝ドラヒロインキャラよりは、ゲゲゲや冬ちゃんやなずなみたいなタイプの方が信頼できるよな、と思う。後者なら、少なくとも遅刻や無責任な仕事はしないと思うから。前者は、何かあったら仕事は二の次にしそうな気がする。実際、作中でそういう場面は何度もあった。

 本好き少女たちが小学校時代に通過儀礼のように読む三大作品が「赤毛のアン」「若草物語」「あしながおじさん」なのだが、あたしは「赤毛のアン」だけは好きになれなかった。「若草物語」「あしながおじさん」は今に至るまで何度も何度も再読してるほど好きだというのに、「赤毛のアン」は苦手だった。こういうやつとは友達になりたくないし、自分自身もこうはなりたくないと思ってた。
 今にして思う。赤毛のアンって、まんま朝ドラのヒロインキャラなんだよな。そりゃ嫌だわ。

 まあ、最初は「うわあ、また〈自分の気持ちが第一〉キャラかよ」と思っていた「ちゅらさん」が途中からぐんぐん変わってどんどん面白くなっていった、という例もあるので、そうなることを楽しみに「てっぱん」を観ることとしましょう。

男手が必要なこと

 ダンナが入院していた半年の間、一番困ったのはどんな時かと問われたら、こう即答する。

 
蛍光灯が切れたとき。

 電球ならまだなんとかなる。しかし蛍光灯、しかもシーリングライトなんつーものが切れた日にゃあ目も当てられない。取り替え方がわからない以前に、天井にかっちりくっついているカサのはずし方からわからない。カサがはずせないということは、必要な蛍光灯のサイズもわからないということだ。畢竟、暗い部屋の中で膝をかかえてドナドナを歌うしか無い。

 ダンナが入院していたときは、まだツイッターをやってなかったので、「蛍光灯が切れた」とmixiに書いた。するとそれを読んだ自転車チームの友人とかご近所さんが「しょーがねえなあ」と助けに来てくれた。ありがたやありがたや。

 そして今はダンナも退院して家にいて、しかも片手で小器用にいろんなことをこなしてくれるわけだが、さすがにシーリングライトの交換となると、脚立か椅子に乗らんと無理だし、片手片足ではチト難しいよなあと思っていた。そしてついに、恐れていた時がきた。

 シーリングライトの蛍光灯が、たぶん、切れた。

 なぜ多分かというと「すごく暗い」ということはわかるものの、カサに覆われているため内部がどうなってるかわからないから。
 どうしようかと思っていたところ、昨日、いきなり関西の自転車友人N川クンから電話。

 「明日、H川クンと一緒に遊びに行きま〜す」

 なんというナイスタイミング!
 ふたりの到着を心待ちにし、夕方6時に玄関をあけてふたりが入って来るなり

 「いらっしゃ〜い、疲れたでしょ♥
  ビールにする? お風呂にする? それとも蛍光灯替える?」

 遠路はるばる名古屋まで来て、まずは蛍光灯を替えさせられる自転車友人。明るい! 明るいよママン!

 ただ、あとになって思ったことだが、誰かに替えてもらうたびにあたしはぼーーーっと見てるだけなんだけど、そのときにカサのはずし方とか蛍光灯の取り替え方を教えてもらえば済む話なんじゃないのか。今回もぼーっと見てるだけだったので、いや、見てもおらず阪神戦を見ていたので、結局取り替え方はわからないままである。
 次回はちゃんと教わろう。そのときに覚えていれば、だが。

ゲゲゲに騙されてはいけない

 『ゲゲゲの女房』も放送最終週に入り、何かにつけてホロリとさせられているわけだが。でもって全国の視聴者も、今日の「夫が妻に感謝の花束を渡し、姑も娘たちもにっこり」てな場面で感動したことと思うが。
 騙されてはいけない。
 何年も、何十年も、毎日毎日頑張って来て、それに対して何十年も経った後に一度だけ労われ御礼を言われる、というんじゃ、割に合わないこと甚だしい。

 前に、何かのインタビューで道行く中年・壮年男性に「奥さんに感謝の気持ちを伝えたことはありますか?」と尋ねるというものがあった。驚いたことに、多くの男性が「照れるから、恥ずかしいから、あらためて感謝の気持ちを伝えるなんてことは、していない」「口にしなくても、わかってくれてると思う」と答えたのだ。

 なーに言ってんだ。

 あんたらは子供のとき、「親切にしてもらったり、助けてもらったりしたら、ありがとうと言いましょう」と習わなかったのか? 「おはよう、ありがとう、しつれいします、すみません」のオアシス運動を小学校でやらなかったのか? お店で買い物したときに店員さんが「言わなくてもわかってるだろう」と「ありがとうございました」と言うのを一斉にやめて無言で商品を差し出したとしたら、そりゃずいぶん感じの悪い店になるとは思わんか?

 以前読んだ本に、こんなのがあった。
 我の強いお姑さんに仕えるヒロインの話。嫁としてどんなに頑張っても褒められたことがなく、あら探しをされては嫌味を言われる。良いことはやってもらって当然、悪いことだけをあげつらわれ、文句を言われる。そのお姑さんが年を取って、身の回りの世話をヒロインがするようになっても、その傾向はかわらない。むしろお姑さんのわがままはどんどんひどくなる。
 ほとほと疲れたヒロインが自分を責め、もう投げ出したいと思ったとき、「未来が見える」という人物が、お姑さんは内心ではあなたにとても感謝していて、亡くなる直前にあなたに「ありがとう」って言うよ、と伝えるのだ。「それであなたの長年の苦労は報われるよ」と。それを、さも「いい話」のように書いてあった。

 アホか。

 たとえ十年後に報われたとしても、それまで悩み苦しんだ十年間は帰ってこないじゃないか。辛い十年のあとで幸せな一瞬がくるより、十年ずっと幸せな方が良いに決まってるじゃないか。報われる十年先が来るまえに、逃げ出したり、ブチ切れて刃傷沙汰に及んだり、自殺したりしたらどうすんだ。「十年後にありがとうって言うつもりだったんです」てのは何の救いにもならんだろう。
 心の中でどんなに感謝していても、言葉や態度に表さなければ、それは感謝してないのと同じなんだから。「ありがとう」と「ごめんなさい」は人間関係の基本。その都度ちゃんと言えよ。

 『ゲゲゲの女房』を見た男性陣が、「妻には何年かに一度、優しくしてやればいいんだな」などと思わないことを祈るばかりだ。それはもちろん、女性側も同じ。家族のために頑張ってくれてる夫や親に対して、妻や子供はそれを当たり前と思ってはいかんのよ。
  

1日経ってもまだ続く

 朝から雷鳴に起こされた。 

 さて、しつこくて熱心で思い込みの激しい一部の読者はいまだに隠し日記を探しているらしく、いくら「そんなものはない」と言っても「いやいや、みなまで言うな、ちゃんとわかってるからさ(にやり)」と。だーかーらー、
そんなものはないと言うとるのに。
 まあ、先の事はわからんけど、少なくとも今はないから。ホントにないから。

 で、日記公開をとにもかくにも受け入れた読者諸兄が次に反応したのが

 「白い」

 うちの読者の感想って、見たまんまか。内容とか技術とかに踏み込んだ感想はないのか。ああ白いさ。そりゃ白いさ。確かに白いさ。間違っちゃいないさ。でも、なんていうか、なあ?

 他にも、ヘッダの右端に最初はカップケーキを二つ並べたイラストがあったんだけど、明度を上げすぎたため「ぼんやりした丸っこい何かが二つ」という程度しかわからず、「これは何?」という質問が相次ぐ。
 「この謎の物体が日記の入り口?」というあたりの反応はまだ想定内だったが、

 
「ところで右上の白いものは巨乳を表しているんでしょうか?」

 という衝撃のツイートを頂戴したのをきっかけに、

 「巨乳だ!」
 「そうか巨乳だ!」
 「ということは、時々この白いものの間に本が挟まれ、喜びの猫じゃ猫じゃが!」
 「きっとそのとき隠し日記への扉が開かれるに違いない!」

 ちょっと君たち落ち着け。頼むから落ち着け。てか、どれだけ過去日記を読み込んでるんだ君たちは。光栄です。ええ光栄ですとも。だはぁ。ぐったりしながらイラストを差し替える。ジル・チャーチルのペーパーバックだ。まあ巨乳に挟んだことがなかった、とは言わんが。
 それでも中にはちゃんと書評復活を喜んでくれる人もいて、読者も様々である。どっちのタイプの読者も大好きよ。

 ちなみに「ところで右上の白いものは巨乳を表しているんでしょうか?」という、その後の大混乱の最初の一滴となるツイートをした人については本人の名誉のために敢て名を伏せますが、
『かいぶつのまち』が原書房より絶賛発売中です。
 

サイトリニューアルの反響

 いや、だからさ。
 普通、巡回してたサイトがお色直しをしたら、しかもサイト開設から14年目にしての大改装だとしたら、もうちょっとなんか反応のしようがあるってもんじゃないか? 「わー、かわいー」とか「おしゃれー」とか「読みやすーい」とかさ。実際にそう思ってるかどうかは別としても、とりあえず褒めてみるってもんだろ。その上で「ここ、うちの環境ではレイアウトが崩れてみえるよ」みたいな技術的な感想だとか、「もっとこうしたらどうか」という提案などが来る……てえのが大人の社交だとは思わんか?

 なのに。それなのに。
 昨夜から今朝にかけて、ツイッターやメールで頂戴した感想と言えば

 「日記が隠されてない!」
 
「日記がOPENに!」
 「トップページにいきなり日記のリンクがあってビビりましたよw」
 「日記公開とみせかけて、実はどこかに裏日記への扉があるんですねわかります」
 「暗号はどこですか。クイズはどこですか。それを探すところからスタートですか」
 「なまもの読者歴12年の意地にかけても、日記の入り口を探してみせます!」
 「個人的には、ヘッダーの口紅あたりがなんだか怪しいのではと」

 
そんなものはないっ!

 てか、うちのサイトのアイデンティティはそこか。そこだったのか。書評が充実してるとか、日記が面白いとか、サイトオーナーが美人巨乳主婦だとか、そういうことで読者を獲得していたのだとばかり思っていたが、実は「隠し日記の謎を解く」というただそれだけで成り立っていたのか「なまもの!」は。

 14年目にして判明したこの事実に、膝から崩れる。

 気を取り直して。
 いろんな感想、ありがとうございました。もちろん上記のようなものばかりではなく、真っ当な感想やお祝いやご意見も頂戴しました。まあ「隠し日記は」という反応の量を10とするなら、真っ当な感想メール・感想ツイートは2程度だったけどな……ふっ。いいの、その2割の人のために、あたしは今日も日記を書くの。

 それにしても、「よし、アップロード終わり! さあツイッターで告知するぞ!」というまさにそのタイミングで、昨夜のツイッターの汚染(?)に巻き込まれたのには往生した。おかげで極めてなし崩しのリニューアル告知になってしまったことよ。これもまた「なまもの!」らしい。

 なお、まだ試運転の箇所も多く、オープンして初めて気付く設定エラーもあります。ダンナが逐一潰してくれてますが、何かお気づきの点がありましたらご連絡ください。もしくは気にせず流してください。どっちかってえと後者希望。

リニューアル

 さて、「なまもの!」リニューアルオープンですよ奥さん!

 レンタルブログを使えば簡単なんだけど、著作権てあたりにちょっと不安もあり、どうせならダンナに作ってもらおうかな、と思っていた。脳出血の後遺症で失語症を患うとパソコンの使い方を忘れているケースが多いそうで、リハビリを兼ねてMovable Typeあたりいじってみちゃくれないかと。
 だがしかし、あたしが「こんなサイトにしたい」といくつかの先例を見せながら希望を言うと、やっぱり高度なもの・煩雑なものには対応できないという。「これくらい、前なら出来たのに」と本人は悔しそう。

 それでも数あるサイト構築ソフトを比較検討してRapidWeaverを選び、円高のうちにと日本からじゃなく海外(どこ?)から買い、出来合いの設定をいろいろカスタマイズしてアレンジしてくれて、こんなサイトになりましたのよ。充分だと思わん?
 むしろ、プログラミングについては「前はできたのに今はできない、レベルががた落ち」と言っている現時点のダンナのやってることが、あたしにはサッパリわからないんですけど。

 夫「どういうテーマ(ウェブデザインの意)がいいの」
 妻「なんかね、もうちょっとススっとして、ほげっとした感じっつーか」

 どっちが失語症なんだか。

 まあまだテスト期間中で、これからじわじわあちこち充実していくと思います。旧サイトも残してる(っていうか14年分をこっちに移植するパワーはないから、あっちはあのまま)ので、書評なら書評ページから、日記は日記ページからバックナンバーに飛べますからね。
 あ、トップからも飛べるようになってます。
抜粋なまもの日記企画ページもぜんぶあります。「2000年の雪国」「新選組はこれを読め!」も、ちゃんとあるからご安心ください。

 ところでプログラミング云々は忘れたと言ってるのに、海外から通販でモノを買う方法(電話番号の入力は市外局番の0を抜くとか)はしっかり覚えてるのが解せん。そういうところは別に忘れてくれててもいいんですけど。特に鉄道模型関係は。