足の裏・東洋医学編

 一昨日痛めた足はまだ痛い。当初ほどではないけど、主として朝イチが痛い。
 今日はぽっかり時間が出来たので、外には出ずデスクワークの日にして足を休めようと思ったのだが、「そうだ、マッサージに行こう」と思いついた。肩凝り首凝り持ちのあたしにマッサージは必要不可欠な施術にして、リフレッシュの場でもあるのだ。そこで足のことも相談してみよう。
 思いついたら即行動。行きつけの治療院に電話すると担当の先生の予約がとれた。

 このH瀬先生ってのがアンタ、まだ若くて可愛い男の子(と言いつつ最近の若い人のトシは見た目じゃわからんのだが、たぶん二十代だと思う)で、もうこのキュートな子に揉まれてると思うとそれだけでヘロヘロに癒されてしまうのよおばちゃんは。
 この治療院では靴のインソールを作ったりとかテーピングとかスポーツ外来とかがあって、必要ならそういう施術も受けられるのだが、とりあえず、いつもの肩揉み首揉みの流れでH瀬先生に診て戴く。

 実は一昨日こうなって、痛みはこんな感じで、病院では足底腱鞘炎だかケンマク炎だかって言われて湿布もらって、という一連の状況を報告する。でもって靴下を脱ぎ、先生の前に左足をでんと出す。

 「あ。内側のくるぶしの下に、もうひとつ骨の出っ張りありますね」
 「整形外科でも言われましたよそれ。珍しいんですか?」

 実はうちではあたしもダンナも、両足の内くるぶしの下にもうひとつ、くるぶし状の出っ張りがあるのだ。小さなくるぶしで「小くるちゃん」と我が家では呼んでいる部位である。大矢家では〈小くる率〉100%なので気にもしてなかったが、実は日本人の15〜20%にしか見られない骨だと言う。へえ。

 「大矢さん、学生時代とかけっこうマジでスポーツしてました?」
 「してましてしてました。そりゃもうアタックNo.1な青春で」
 「この骨の出っ張り、いつ頃からあります?」
 「さあ……覚えてない。靴がたいていその部分から切れるんですよ」
 「そうでしょうねえ」

 そしてH瀬先生は、おもむろにあたしの足を曲げたり伸ばしたり畳んだり裏返したりし始めた。一昨日の整形外科では足の裏の腱をぐりぐりされて痛みにのたうち回っただけだったが、H瀬先生は足首を持って踵をくるくる回して見たり、内くるぶし&小くるの周辺を確認したり、更に上のふくらはぎの方まで押さえ始める。それがアンタ

 「せせせ、せんせーふくらはぎ痛い痛い! なんでっ」
 「足の裏から内くるぶしの下からふくらはぎって、ずっと1本の筋なんですよ」
 「いやだからって! これまで
気付かなかった場所の痛みを発見しなくていいからっ!

 そしてやっぱり足の裏はぐりぐりされると痛い(が、一昨日ほどではない)。ふくらはぎも揉まれると痛かったが歩く分には問題ない。問題は、歩くと痛い内くるぶし周辺だ。そしてH瀬先生が診断を下す。

 
「これ、思春期のスポーツ選手によく出る症状です」

 
大矢博子、昭和39年生まれ。辰年。46歳。思春期

 「先生……客観的に判断して、あたしって思春期にもスポーツ選手にも見えないと思うんですが」
 「まあそうなんですけど」

 多分、若い頃の継続的なスポーツによって内くるぶしの下の骨が歪んだんだろうと。足の荷重がまっすぐじゃなくて内側に落ち込んじゃってるらしい。「X脚ってこと?」と尋ねると違うと言う。X脚とは膝が内を向いてる症状だが、大矢さんの場合は足首から上はまっすぐで、ホントに足(脚じゃなくて)の部分だけが内側に傾いてるんです、と。

 「もうこの骨の出っ張り自体は治りませんから、この状態でできるだけ
  歪んだ部分を補正していくしかないですねえ。
  今の痛みはマッサージで筋をほぐしてやれば楽になると思いますが、
  この骨の歪みのままだとまた何かのはずみですぐ再発しますよ」
 「ああ、それは整形外科の先生にも(結論だけ)同じことを言われた……」

 先生によれば、一番良い対処方法は靴の中敷き、いわゆるインソールを作ることだそうだ。あたしの足に合わせたインソールを使うことで体のバランスを調整するという。でもね、オーダーメイドだしね、靴も一足だけじゃないしね……ということで、まずは手軽な方法としてサポータを見繕っていただくことにした。思春期の若造にはインソールなんて贅沢さ、若造にはサポータあたりがお似合いさっ(ヤケ)。
 次回予約は来週水曜。その前に、ダンナのリハビリの付き添いで病院に行くので、理学療法士の先生に相談してみよう。あ、
「脳天気にもホドがある。」に出てきた織田先生(仮名)のことです。<なんか読者の間で密かにファンが出来たらしい。

 それにしても思春期のスポーツ選手とは。
 そういえば10年ほど前に左上腕を痛めて整形外科に行ったら
「野球肩だね」と言われたことがあったっけ。やってないし、しかも利き腕でもないのに。「原因は変化球の多投」って、投げてない投げてない。「今中や川崎もこれだったんだよね」って、いやだから違うって絶対に!

 あのときは野球が好き過ぎて、想像妊娠ならぬ想像野球肩になったんじゃないかとまで思ったが、事ここに至っては、どうやらあたしの体は身に覚えのない部分でものすごくスポーツをしてるとしか思えない。しかも思春期だし。あたしの中にいる15歳くらいでスポーツマンのビリー・ミリガン出て来い。