名古屋オフ忘年会(煩悶編)

 さて、前回のレポでは「辛い辛い」としか書かなかったが、ちゃんと恒例の今年のベスト本発表や本の交換会も滞り無く行われたことを、ここに記しておかねばならない。

 ところで、あたしは毎回、メモも何もとらずに皆の挙げたベスト本を覚えて日記に書くというワザを披露してきたが、今回は脳味噌のいろんな箇所に山椒と唐辛子が挟まって、思い出そうとするとコメカミのあたりが辛くなるのだ。なのであきらめた。ただ、拙著
『脳天気にもホドがある。』を挙げてくださった方がいたことだけは覚えている。気遣いは大人のマナーですね。
 ちなみにあたしは初野晴
『空想オルガン』を挙げる予定だったが、あまりの辛さに脳が死に、激辛麻婆茄子が大事な小道具になっている日明恩『埋み火』に急遽変更。あたしが解説書いてますのでどぞよろしく。

 一方交換会はと言えば、道尾秀介『月と蟹』や海堂尊『アリアドネの弾丸』といったベストセラーあり、『ベルサイユのばらカルタ』という飛び道具あり、『マンガで読破・黒死館殺人事件』あり、「参加者は女性が多いので、稲見一良の文庫『男は旗』を持ってきたよ」という、どう考えても逆だろというセレクトあり。──ああ、これも思い出そうとすると脳から山椒の臭いが立ち上って思考が中断される……。あ、あたしは狙っていた『ベルばらカルタ』を奪われてしまったので、京極夏彦トリビュートのアンソロジーをゲットしましてよ。

 まあ、交換会が始まった初期のように「名古屋市政だより」だの「ディノス通販カタログ(期限まで残り1週間)」だの「宮部みゆきの『クロスファイア』上巻だけ」だの、どう考えても自宅の本棚の掃除目的だろうというようなラインナップに比べると、供出本には格段の向上が見られるということは確かだ。今にして思うが、なんで当時はみんなしてあんな嫌がらせのような交換会をしてたんだろうな。その次から「通販カタログと電話帳は禁止」というワケのわからない決まりができたほどだったぞ。

 それにしても今回のオフは1次会はもちろん二次会でも三次会でも本の話がほとんどなかった。これもまた珍しい。あたしは「これはミステリファンのオフである」ということを忘れさせないため、「電子書籍ってけっこう使い勝手いいよね」とか「あの作品の続編はどうですか」とか頑張って本の話を持ち出していたのだが、どれも3秒で終わってしまった。「それほどまでに議論を呼ぶような作品がなかったってことだよ」とは太田さんの弁。

 まあ、いわゆる「ミス研」出身者が集うようなオフじゃないからな。そもそも名古屋にはアクティブなミス研てえのは、(昔は)無かったと言うし。そう思えば、そんな土壌でよくこれだけのメンバーが集ったものだと思えなくもない。
 ただ、軽くショックだったのは、「今年のベスト本を発表するとき、『あんまり読めてないんですが』って言う人が何人かいたけど、だいたい何冊くらいだったら『読めてない』と思うの?」といういつみの質問に対し、複数の人が「1ヶ月に1冊しか読んでないと、読めてないかな」と答えたのだ。
 まがりなりにもミステリファンが集まってる筈のオフで、そ、それはあまりに少なくないか……。

 本、読もうよ。楽しいよ。
 
 あ、それを伝えるのがあたしの仕事なわけか。そうか。