ツンデレ名古屋

 ちょっと前の話。
 さとなおさんが講演で来名され、
22日付けのさなメモで、こんなことを書いてらっしゃる。

 
クライマックス・シリーズで中日が連勝中の名古屋。(中略)
 でも阪神が同じ状況であるときの大阪と比べると大人しい。ちょっと意外。
 もっとドラゴンズだらけかと思った。


 まあ、
阪神ファンと比べられたら大抵のファンは大人しいと思うが、それはそれとして。
 これを読んで、あたしはツイッターでこう書いた。

 連勝中でも名古屋の街がおとなしいのは、ドラゴンズを含む地元のものに対して
 なぜかツンデレな名古屋気質のせいかと。
 これくらい当然なんだから、べ、別に、嬉しくなんかないんだからね!

 この発言がね、けっこう「そうそう!」「わかる!」という反響を戴いてしまいまして。
 そうなのよ、生粋の名古屋人の人は自覚してないかもしれんけど、名古屋人って「いかにも名古屋らしいもの」に対して、けっこうツンデレなのだ。

 あたしは大分で生まれ育って福岡の大学に行き東京に就職して大阪に転勤して名古屋に嫁ぐという、ひとり4大ドームツアー(札幌ドームが出来る前の話)な人間。でもってそれぞれの土地柄・人柄というのに接して感じたんだけど、東京は全国の寄り合いみたいなものなので別として、九州と大阪は、地元愛がはっきりしてるのだ。
 「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」と言いきる大分。
 山笠があるけん博多たい! でも母ちゃん怖かとよ、な福岡。
 そして日本全国世界各国どこへ行っても大阪弁で押し通す大阪。
 こういう地域に比べると、名古屋ってのは──地元に対してちょっとニヒルに見てるところがある。

 地元を出ると、名古屋弁を使わない。いや、地元に居ても、話し相手が地元の人じゃなかったら名古屋弁を使わなかったりする。「味噌カツ? うん、でも、ソースも美味しいよね」「味噌煮込みよりさぬきうどんの方が好きだな」「コメダっておしゃれじゃないもん、スタバが増えて欲しいな」なんて普通に言う。
 嫁いで来た当初は、名古屋の人って地元が好きじゃないのかな、と思った。

 ところが、である。

 そんなこと言ってる人の家の
冷蔵庫には「つけて味噌、かけて味噌」が当然のように入っており、味噌煮込みの卵をつぶすタイミングにこだわりがあり、「東京の喫茶店はコーヒー頼んだらコーヒーしか出ない」と怒ったりするのが名古屋なのだ。
 野球には特に興味がないと公言していた名古屋出身の作家さんが、エッセイの中でさりげなく「中日の投手陣は駒が揃っている」なんて書いてたりする。
 決してスポーツ好きではないはずのあたしの友人は、「負けるところは見たくないから、中日が勝ってる試合に限り7回から見る」と言う。
 
 
好きなんじゃん。(ずばっ)

 面倒くさいことこの上ない。
 でもこういうところが、なんか良くも悪くも名古屋だよなあ、と思うのよ。14年も住んでると、そのへんの呼吸というのがだんだん掴めてきた。そしてそれが、
押し付けがましくなくて心地いい

 だから名古屋の人に向かって「あ、この人って地元へのこだわりってあまりなさそうだな」と思っても、ドラゴンズ、グランパス、信長・秀吉・家康、そして味噌の悪口は言わない方が身のためです。