2010年のまとめ

2010年のお仕事

今年もたくさんの本を紹介させてもらえて光栄でしたが、中でも嬉しかったのは、仁木悦子
「猫は知っていた」(ポプラ文庫ピュアフル)の文庫解説を書けたこと。あたしは中学時代にこれを読んでミステリにはまった──つまるところ、その後の人生を決定づけた1冊と言って良いほどのものなので、まさか長じて自分がその本の解説を(特に若い世代に向けて)書けるなんてえのはアンタ、冥利ですよ冥利。

もうひとつ、近藤史恵「サクリファイス」(新潮文庫)も単行本が出たとき(てか出るまえにゲラで読んだとき)から大好きで大好きで身悶えするほど好きな作品だったので、ご指名戴いたときはホントに嬉しかったなあ。この本については、もし他の人が解説を担当してたら嫉妬で身を焦がしていたであろう。こう言っちゃなんだが、書評業界で自転車について、特にカンチェラーラへの愛について語らせたらあたしの右に出る人はいないよっ。<語る範囲が狭過ぎ。<おまけに「サクリファイス」に関係なし。

初めて鮎川哲也賞のパーティに出席し、これまでメールや電話だけで失礼していた編集さんや作家さんにご挨拶できたのも、仕事がらみでは今年を代表する出来事だったと言えましょう。
飯田橋は時空が歪んでいるってことも体感できたしな。

2010年の事件

それはもう、ダンナの骨折&2ヶ月の入院に尽きる。
08年に脳出血で障碍が残り、でもリハビリ頑張って杖を使えば歩けるようになって、杖無しでもちょっとずつ歩き始めて、あたしの実家の両親にその姿を一目見せようと大分に旅行し、実家に帰る前に一泊した温泉で転んで骨折って、何その良く出来たネタみたいな展開。
あのときお世話になった友人各位&編集さん、ありがとうございました。
おかげさまであたしも1ヶ月間別府に滞在し、温泉三昧の暮らしをさせてもらったおかげでお肌つるつるです。その様子は
『本の雑誌』20108月号9月号に掲載した『ほげほげ温泉読書日記』でどうぞ。<とにかく何でも仕事にする。転んでもタダでは起きない。

そうそう、
『脳天気にもホドがある。』を出版したのも事件と言えば事件ですね(仕事のカテゴリには入らないよなあ)。お買い求めくださった皆さん、感想メールや感想ツイートをくださった皆さん、どうもありがとうございました。

2010年、印象に残った本

国内ミステリ:初野晴
『空想オルガン』(角川書店)
        これ単体で、ではなく、シリーズ3作まとめてという意味で。
海外ミステリ:マーガレット・デュマス
『上手に人を殺すには』(創元推理文庫)
        新刊を楽しみに待つシリーズがまたひとつ増えた。

その一方で、今年はコリン・ホルト・ソーヤー、エレイン・ヴィエッツ、ルイーズ・ペニーといったあたりの新刊が出なかったのは残念。来年に期待。

2010年、嬉しかったこと

そりゃもうドラゴンズのリーグ優勝に決まっとるがや!

2010年、悲しかったこと

大好きな作家さんの訃報が相次いだ。
作家さんが亡くなる度に同じことを思うんだが、北森鴻さんの訃報を聞いたときに書いたなまもの日記(
10年1月25日)を再掲します。

 作家さんの訃報に触れるたびに思う。読者にできる最大の供養は作品を読み続けることだし、業界の人間ができる最大の供養は作品を伝え続けることだ。司馬遼太郎を見よ。94年に訃報を聞いたときは驚き、あの背筋が伸びるエッセイや新作小説がもう読めないことを悲しんだが、ことあるごとに司馬作品はメディアで取り上げられ、新しい若き読者が生まれ、作品は脈々と読み継がれている。今や、司馬遼太郎が存命か否かなど関係ない。作品が読まれ続ける限り、司馬遼太郎は生きている。横溝正史然り、都筑道夫然り、山田風太郎然り、鮎川哲也然り。栗本薫も、ロバート・B・パーカーも、そして北森鴻も。

 時代を超えて残る作品を作り上げた人だけがなし得る、不老不死。

 そんな作家が「二度目の死」に見舞われるか否かは、ひとえに、読者にかかっているのだ。

北森さん、永井するみさん、お疲れさまでした。ステキな物語をたくさん、ありがとうございました。

2010年、まだ終わってないこと

年も終盤になって飛び込んできた、理論社倒産にまつわる一連のゴタゴタ。
複数の作家さんが理論社から作品を引き上げるという事態になってます。まだ片付いてないし、あたし自身は当事者ではないので、ただ心配することしかできないんだけど、作家さんやフリーの編集さんの仕事が少しでも報われるといいな、と願っております。

てか、フリーってのは立場が弱いのだなあ、とつくづく思うよ。自己防衛せねばならんなあ。