TBSラジオ「dig」を聞く

 昨夜、TBSラジオのdigという番組を初めて聞いた。
 毎日何かひとつニューストピックスを取り上げ、それについて深く掘り下げるという番組だそうだ。dig=掘る、ってことですね。

 大森望さんが出て
「KAGEROU」及び文学賞について話すというので、ポッドキャスト探したりネット見たりしてたんだが、CBCでやってるとツイッターで教えられ、がっくりと膝をつく。だって知らなかったんだもんっ。

 展開としては、番組パーソナリティの大西さん(男性)が貶し役に回り、大森さんがそれを否定したり肯定したりしながら、小説の読み方や新人賞のあり方にはいろんな基準があるのだよ、という方向に持って行くという感じ。
 大森さんの
「KAGEROU」評はツイッターでしか見てなかったけど、それでも「叩く」というスタンスではないことは分かっていたので、安心して聞けた。

 「よし!」と思ったのは、番組パーソナリティの水野さん(女性)が「ポプラ社小説大賞ってどんな賞なんですか」と訊いてくれたとき。そうよそれが大事なのよ、と。あれで大森さんが賞の特性をちゃんと紹介できた。これは大きい。
 叩く側も、「読んだけど面白くなかった」という言い分ならそれは正直な感想としてアリだけど、「賞をとるのはおかしい」と言うからには、どういう賞なのか、どういう作品が過去に受賞してるのか、そういうところをちゃんと踏まえてからじゃないと言えないはずだもの。

 あと「ダジャレが寒い」という見当ハズレの批判についても、ちゃんと触れてくれたのは溜飲が下がった。別に著者のダジャレセンスが悪いんじゃなくて、「寒いダジャレを言うキャラクタ」として造形されてるんだよ、だから当然なんだよ。当然のことなのに、あれを見て著者のダジャレセンスを云々するって、よほど普段、小説というものを読み慣れてないんだろうなあ。読み慣れてないのに批判するってのもわからん。

 それにしても、「挫折を味わってるから」「奥さん難病で」「帰国子女で中学まで日本語が巧く使えなかった」みたいな著者の情報を前提に作品が読まれるってのは、有名人の場合は仕方ないとは言え、小説にとっては不幸な話だよな。
 世に出てるほとんどの小説は、なんらかの形で著者の来し方が現れてるものでしょう。でも読者はそんなことは知らないし興味もないので、そこに描かれた物語を自分に引き寄せて読むことができる。感情移入し、自分だったらと想像し、ドラマに入ることができる。

 でも
「KAGEROU」の場合、おそらく読み手は病気の少女アカネちゃんに絢香さんを重ねるだろう。
 機械に繋がれ、それを離れることは死を意味すると知りながらも、そのくびきを解こうとする主人公に、読み手は事務所を離れた著者自身を重ねるだろう。

 水嶋ヒロが好きで、彼に興味があって本書を手にした人にとっては、だから格好の題材とも言える。けれど小説としては、これはちょっともったいない読まれ方。そして「物語が好きな読者」にとっても、これは残念なことではないかしら。